第百四十六姉「一週間だ。お前たちの忠義を示せ。」
某サイトを見てあねおれを読んでツイッターでつぶやいてくださった方がいることを知り驚愕!
まぁ私ツイッターやったことないんですけどね。
不定期連載といいつつ頑張って定期的に投稿していきます。頑張ります!
いきなり観客たちからツッコミが入りびびる俺。
え、なんでつっこまれたんだ今?
「フッ。もういいだろうか。観客たちに多数決でどっちが素晴らしい魔法だったかを決めてもらおう!さぁ、自分の本能の赴くままに動くがいい!」
自分とさきねぇの間に木の棒で線を引く風の人。
観客たちはゾロゾロと移動を開始する。
その結果。
「フッ。僕の勝ちのようだな!」
「くっ、私の素晴らしい生足の前には竜巻程度では勝てないわ・・・」
大多数の観客(ほとんどの男性と極少数の女性)は風の人の陣地に移動してしまった。
さきねぇ側に残るのは反対に少数の男性と過半数の女性たち。
こちらに残った男性はその多くが彼女・妻子持ちかさきねぇファンクラブの熱狂的な信者だ。他にはスレイのように純粋に『あの魔法すごかった!』と思った小学生のような思考の持ち主か、『こっちに残ったほうがかっこいいし、女性受けも悪くないだろう』というクレバーな思考の持ち主たち。
その証拠に、風の人の陣地でニコニコしている男性陣に『最低だなあいつら。死ねばいいのに』といった絶対零度の視線を向ける女性陣。
だからお前らはモテねぇんだよ・・・
「風対決は、悔しいけどシナチク四天王・風の人の勝ちー!」
「フッ。シナサス四天王の風のバルバーだがな。」
ワァァァァァァ!パチパチパチパチ!
観客たちから拍手が贈られる。
俺もやる気なさそうに拍手を贈りつつ、近くにいたMFCの人間に声をかける。
「ソルト、ちょうどよかった。」
「はっ。なんでしょうか会長。」
ソルトはMFCの会員番号『22』、いわゆるゾロ目組と呼ばれる幹部の一人である。
アルゼンでも有数の商人であるレイク商会の次男坊で冒険者ではないが、情報収集に長けているため重宝している。
「今あいつの陣地にいる会員たち、全員降格な。」
「はっ。」
「それと、後でアイツらを呼んでくれ。」
「はっ。」
そう返事すると素早くその場を離れる熱心なソルト。
「風が・・・吹いているな・・・」
俺の呟きがそっと空に舞ったのだった。
「よくやったバルバー!どこかのヘタレとは違うな!」
「フッ。任せてくれ。次は君だが・・・大丈夫か?」
「大丈夫か大丈夫じゃないか、じゃねぇ!アタシたちは勝つ!そして、本当の四天王を作り上げる!もう『四天王なのに三人なのかよ』とは言わせない!」
「その意気だリューネ!」
盛り上がるシナチク四天王(三人)をよそに、さきねぇと話す俺。
「さきねぇ、どうすんのさ。一勝一敗じゃん。シナチク四天王なんか嫌だよ俺。」
「やれやれだぜ・・・ヒロ、次が誰かわかっていってんの?」
チラッと横を見ると、腕を組んで微動だにしないノエ、クリムゾンムーン。
あ、さりげなくピースした。外見はゴツいのにかわいい。
「では、最後の対決!炎と断罪と謎の魔法美少幼女プリンセスにしてアルゼン四天王『憤土』!クリムゾンムーン対~・・・シナチク四天王の土の人ー!」
「だからシナサス四天王だっていってんだろうが!あとアタシはリューネだ!」
憤慨してる土の人。どんまい。
「さて、対決方法だけど。ここはゴーレムを創造して戦わせるっていうのはどうだい?あんたも土魔法使いならゴーレムくらい作れるよなぁ?」
「・・・・・・」
コクッと頷くクリムゾンムーン。死者が出ないことを願うばかりだ。
「じゃあアタシからいくぞ!ハァァァァァァ!」
土の人の魔力が膨れ上がり、地面に流れ込む。
すると、地面がボコボコと盛り上がり、人型を作る。
「いでよ!スーパーゴーレム!リューネ13号ぉぉぉ!」
そこには、俺の身長を優に超える無骨な土人形が姿を現した。
ミニゴレ○スといえばわかりやすいか。
「どう思いますか解説のムラサキさん。」
「そうですね、まずネーミングが普通ですね。なんか攻めてる感じが感じられません。あれは自分に対する自信の無さの表れでしょう。口調や外見は勇猛な感じですが、実際は部屋にぬいぐるみが飾ってあるタイプですね。」
「冷静に解説するな!つーかアタシじゃなくてゴーレムの解説しろよ!?」
顔を真っ赤にしている土の人。
図星か。そういうキャラならビキニアーマーなんて着なければいいのに。
ビキニアーマーなんて着て、痴女かと思ったらキャラ作りだったのか。大変だな。
「あーもういい!アルゼンの土!早くゴーレムを作れ!」
「・・・・・・」
無言で地面に手をつくクリムゾンムーン。
すると。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
突然地響きが起こる。
あ、あわわわわわわ・・・天変地異や!これから恐ろしいことが起こるでぇ!
砂埃が晴れると、クリムゾンムーンが作ったであろうゴーレムが立っていた。
だが・・・
「ぷっ!あはははははは!そ、それがゴーレム?お人形じゃないか!」
「・・・・・・」
そこには背の低い、誰かに似ている感じの土人形がいた。
女の子を精巧に模しており、高度な魔法技術で作られているのだろうが・・・
とりあえず『のえるちゃん1号』と名づけるか。
「それでいいんならいいよ!じゃあやろうか!・・・いけ!リューネ13号!」
ゆっくり一歩を踏み出すミニゴレ○ス。
しかし、高く上がったその一歩目が地面に到達することはなかった。
その代わり、ミニゴレ○スの首がドゴォン!と激しい音を立てて地面に落ちた。
「・・・え?」
何が起こったかわかっていない土の人。
まぁそりゃそうだろうね。
これは俺の将来がかかった、ある意味聖戦なのだ。
その聖戦の中でノエ、クリムゾンムーンが作ったゴーレムが弱いはずがない。
そう考えてる間にも高速機動するのえるちゃん1号の手にかかり、ミニゴレ○スはどんどん解体されていく。
残ったのは、呆然としている土の人と、一歩を踏み出す前に全身バラバラにされたミニゴレ○スと、いつのまにか土の人の目の前に立つのえるちゃん1号。
表情に一切の変化が無いのが恐ろしい。ゴーレムなので当然だが。
のえるちゃん1号が土の人に一歩近づく。
「ヒッ!?」
ガタガタ震えだす土の人。
まぁ怖いよね~そりゃ。どう見ても殺人人形だもんな。
「土の人ー。早く降参したほうがいいよー?でないと、あなたも・・・そのゴーレムみたいに・・・全身が・・・」
「キャァァァァァ!降参!降参するから!殺さないでぇぇぇ!」
顔を覆い、しくしく泣き出す土の人。
同時にクリムゾンムーンの鉄仮面がカタカタと動く。
・・・きっとニヤニヤ笑ってるんだろうな。怖いお人やでぇ。
「えー、この勝負、アルゼン四天王・クリムゾンムーンの勝ちー!」ワァァァァァ!
戦いが終わると、今度は大道芸人が芸を披露したり、のど自慢大会が始まる。
結局最後はお祭りになるんだよな。
楽しいからいいけど。
俺たちはシナチク四天王たちと対面する。
「俺たちの負けだよ。強いな。」
「次回は万全の状態で戦りあおうじゃないか!」
「フッ。次は負けないよ。」
「何回きても返り討ちよ!」
「グスッ・・・水魔法使いほしかった・・・」
「いや、四天王興味ないんで無理っす。」
最後に熱い握手をかわし、アルゼンとシナサスとの間に暖かい交流が築かれたのだった。
こうして、アルゼン四天王とシナサス四天王との激闘はここに幕を閉じた。
・・・かに見えた。
「会長。俺らをお呼びで?」
「ああ、久しいな紫影旅団遊撃部隊『フィンガーファイブ』。いや、今はMFC・裏の実行部隊『緋影』だったな。」
「俺らを呼ぶってことは、親分になんかした野郎がいるってことですよね?」
「・・・ああ。不埒にもさきねぇのスカートをめくろうとしたやつがいる。」
「な!?」
「どうするべきだと思う?」
「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」
「・・・だが、さきねぇ自身がそのオイタを許している。さきねぇの意思を無視して殺すなど、そんなことは許されん。」
「・・・では会長。どうするんです?」
「体に傷はつけんよ。体には、な。ごにょごにょ・・・」
「・・・なるほど。お任せください。期間はどれくらいで?」
「一週間だ。お前たちの忠義を示せ。」
「では、三日でやります。それでは。」
姿を消す『緋影』たち。
「・・・すまんな風の人。が、けじめはつけなきゃあいかんぜよ。」
その後、シナサス中に『風のバルバーはわざわざアルゼンまで行って公衆の面前で女性のスカートをまくった変態ヤローで、女性の敵である。女性はやつの姿を見かけたらスカートを抑えるべし。』という噂が流れ、女性人気が急降下したそうな。
めでたしめでたし。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
これにて三人の四天王編の終わりです。
風の人への仕返しをどこまでやるかでかなり悩みましたが、あんな感じで許してあげました。事実だしね!
のえるちゃん一号はゴーレムというよりマリオネットに近いので、超劣化版ノエルさん(魔法なし)って感じです。材質が普通の土なのでかなり弱いですが、それでもD級冒険者程度ならフルボッコです。材質が鉄とかミスリルならもっと強くなります。




