第百四十三姉「光あるところ影があり、姉あるところ弟あり!とぅっ!」
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多くの方が色々な感想を書いてくださったおかげでここまでこれたといっても過言ではありません。
また、評価や評価の付け直しをしてくださった方もいらっしゃったようで。
皆様、ありがとうございます。
これからもあねおれをよろしくお願いいたします。
その後、ギルドで多くの男性冒険者が床に手をつき、真っ白に燃え尽きた状態で発見された。
その冒険者たちは一様に『男をナンパしてしまった・・・』と口にしていたそうだ。
その中には俺のかわいい後輩であるスレイの姿もあったとかなかったとか。
「そういえば、お父さんから冒険者になる許可はでたの?」
「父様は『クリフレッド家の人間として、目標はS級冒険者以外ありえん!修練に励むべし!』と。」
「へー、もっとわからず屋の頑固親父かと思ってたわ。」
「父様はそんな器の小さな方ではない!あ、それとお師匠様を屋敷に連れてこいとも言ってました。父として全力で歓迎する、と。」
「「・・・・・・」」
嫌な予感MAX!
絶対にクリフレッド家にいかないと心に決めた。
そんな感じでダラダラとアルゼンを案内するが、クリスもやはり貴族のボンボンらしく庶民の生活に興味津々のようだ。
そして屋台でホーンラビット焼き串を食べていると。
「そこの三人組!待ってもらおうか!」
そう声をかけられて振り向くと、奇妙な格好の三人組がいた。
一人は真っ赤な軽鎧をを着た赤い男性、一人はビキニアーマーに黄色のマントを羽織った黄色い痴女、一人は緑色のスーツを着た緑の男性。
いかにも怪しさ大爆発だ。
「・・・あのー、どちら様でしょうか?人違いじゃありません?」
「俺たちの名を聞きたいのならば教えてやろう!俺は『火』のルビン!」
「フッ、僕は『風』のバルバー!」
「アタシは『土』のリューネ!」
「「「三人揃って、シナサス四天王!」」」
「「「・・・・・・」」」
よくわからないポーズを決めるシナサス四天王さんたち。
確かシナサスって、『田舎の中では最先端の都会』アルゼンのライバル的な街だったはず。
名称はかっこいいけど、実際は『初心者の町二号の中の四天王』ってことだよね?ダサくない?井の中の蛙すぎない?
しかも・・・
「あのー、えっと、うん、そのー・・・三人、ですよね。ん?アレ?俺がおかしいのかな?もう1人は風邪でお休みかな?」
「フッ、愚かな。言っただろう?」
「「「三人揃って、シナサス四天王!」」」
「あーわかりましたもういいです。」
なんかこの世界きてから変人ばっかだな。
もっと俺みたいに品行方正な常識人はいないもんかね。
「んで?そのシナチク四天王が何の用なのかしら?」
「シナチク?よくわからんが、まぁいい。実は噂を聞いてな。」
「噂?」
アルゼン以外の街にいったことないからよくわからんな。
「そう、冒険者になってたった数ヶ月でD級になった、黒目黒髪の成り上がり水魔法使いがアルゼンにいると!」
「・・・へー、そんな人がいるんですねー。初めて聞きま「そう!その素晴らしい水魔法使いが、ここにいるヒイロ・ウイヅキ殿だ!ボクのお師匠様だ!」クリース!」
「なんでしょうお師匠様!」
『褒めて!ボクを褒めて!』といった感じの笑顔を見せるクリス。
えぇい、めんどくさいことを・・・!
「やはり、君が噂の水魔法使いか。」
「そうらしいっすね。何か用っすか?もしかして後輩いじめってやつっすか?」
俺のその言葉に、周囲で話を聞いていた冒険者たちがぞろぞろと集まってくる。
『ウチの専属魔法使いになんか用かよ!?』といった顔だ。頼もしい。
敵本拠地に殴りこみにくるとはいい度胸だ。
歓迎してやんよ!
「ち、違う!そうじゃない!俺たちは君をスカウトしにきたんだ!シナサス四天王、最後の1人として!」
「お断りします。」「ぶわーっはっはっはっはっは!」
もうさーやめてよそういうの。俺まで色物扱いされんじゃん。
「なぜだ!」「フッ、何を言い出すかと思えば。」「おかしいわ!」「いいじゃん、なっちゃえば!?ぷぷぷぷ!」
「おい、最後の1人。ぶっ飛ばすぞ。」
笑いをこらえられない薄情な姉を睨む。
人事だと思いやがって。
「ほら、お前のお姉さんもそういってることだし!早速シナサスへいこう!」
「・・・は?」
先ほどまでニヤニヤしていたさきねぇの表情が一転、無表情になる。
「何言ってんの?いまんとこアルゼンから離れるつもりはないけど。」
「フッ、美しいあなたはここにいてもらって構いませんよ。弟さんだけで十分です。」
「・・・へぇ。」
今度は邪悪な笑みを浮かべるさきねぇ。
そして怯える俺とクリス。
「・・・よし、わかったわ。私の大事な弟を連れて行きたいというのなら、アルゼン四天王に勝ってからにしてもらいましょうか!?」
「「「「「アルゼン四天王!?」」」」」
シナチク四天王だけでなく、俺とクリスまで驚いてしまった。
まーた始まったよ・・・
「お、お師匠様。アルゼン四天王なんて存在するんですか?」
「ん?んー、んー、んー?んー。」
言葉を濁す俺。
「ア、アルゼンにも四天王がいるなんて聞いたことがないぞ!」
「それも当然よ。秘中の秘として隠され続けてきたのだから!」
「な、なら今ここにつれてこい!そのアルゼン四天王を!」
ですよねー。そういう展開ですよねー。
「ふふ、あんたらの目は節穴のようね!ここにいる男か女かわかんない美少年女がアルゼン四天王の一人!『爆炎』のクリス・ウル・クリフなんちゃらよ!」
「・・・ボク!?ふ、ふざけるな!ボクをそんな意味のわからないものに巻き込むな!それとクリフなんちゃらとか省略するな!」
顔を赤くしてぷんぷんしてるクリス。
つーかクリフなんちゃらって、相変わらず適当だな。
しょうがない、クリスにもこの茶番に付き合ってもらうか。
「よし、クリス。今日からお前はアルゼン四天王の一人、『爆炎』のクリスだ!」
「我こそはアルゼン四天王の一人!『爆炎』のクリス!控えろ愚民ども!」
先ほどとは打って変わって、ポーズを取るクリス。
ノリノリじゃないですか。なんなのこいつちょうかわいい。
でも僕ホモじゃないです。姉一筋です。
「そして!・・・ヒロ、ちょっと場を繋いでて。すぐ戻るから。」
「え!?あ、ちょ、おい!」
言うな否や、近くのお店の中にダッシュするさきねぇ。
そして周囲の視線が俺に集まる。
「え、えーっと・・・では、ちょっとした小話を。あるところに~」
~5分経過~
「そしたら男は次にこう言ったのさ。『今度はお茶が怖い!』ってね。これにて終わりでございます。ありがとうございましたー。」パチパチパチパチ!
聞き入っていた人たちも『なかなか面白かったな!』『ヒイロさんってこういう才能もあるのね!』『お師匠様すごいです!』とそれなりに好評のようだ。良かった良かった。
そして、俺はしゃべっている最中にすぐ近くのお店の屋根の上にドレス姿のよく見知った女性がチラチラしていた。
どうやら俺の話が終わるまで待っていたようなので、大きな声を上げて指差す。
「アァー!アレハダレダァー!」
俺の演技くさい声に釣られて、みんながそこに注目する。
そこには。
「光あるところ影があり、姉あるところ弟あり!とぅっ!」
舞踏仮面をつけ、ドレスを着込んだ女性がお店の屋根からジャンプして飛び降りてきた。
そして、ビシッ!とポーズを決める。
「愛と!正義と!謎のドレス美少女魔法戦士プリンセスにして、アルゼン四天王『疾風』のパープルムーン、ただいま推参!」
「「「・・・・・・」」」「「「「「おぉーーー!!!」」」」」
シナチク四天王とアルゼン住民との温度差が沖縄と北海道並みに半端ない。
気持ちは痛いほどわかるが。
「ひそひそ(お、お師匠様。あれはお師匠様の姉君では?)」
「ひそひそ(とりあえず別人ということにしておいてくれ。)」
「ひそひそ(は、はぁ。わかりました。)」
わかってもらえたようでよかった。
「そして!ここにいる高身長高学歴高収入の3Kイケメン魔法使いが、アルゼン四天王『流水』のヒイロ・ウイヅキよ!」
「え、なにその紹介ハードルたけぇ!?しかも俺だけフルネーム暴露!なんの罰ゲーム!?」
「ほら、皆さんにご挨拶しないと!」
めっちゃ見られてる。恥ずかしい!頭が沸騰しちゃうよぅ!
「あ、あの・・・りゅ、『流水』のヒイロです。よろしくお願いします・・・」
生暖かい視線とともに『もっとはっちゃけろー!』『ヒイロさんファイトでーす!』『ガンバレー!』という色んな声援が飛んでくる。
誰か俺を殺してくれ!
クリスをいけにえにしようとしたら、とんでもないところから誘爆したよ。
「もう一人には明日会えるわ!明日のお昼過ぎ、西門を出てまっすぐいったところにある岩場にて決闘よ!」
「おう!」「フッ、いいとも。」「負けないわよ!」
勝手に話をすすめるさきねぇと話を受けるシナチク四天王。
『ムラサキさん決闘だってよ!』『やべぇ超面白そう!』『おい、他のやつらにも教えてやれよ!』と外野が騒ぎ出し駆け出していった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
クリスだったりパープルムーンだったり、再登場キャラが多い章になりました(笑




