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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第一章 池に落ちたら異世界に?編
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第十四姉 番外編『その時のノエル・エルメリアさん』

お気に入り登録数がついに2桁になりました。

読んでくださる皆様、ありがとうございます。

これからもこのお話を読んで楽しんでくださる方がいれば幸いです。


今話はいちゃいちゃ・アホ会話共にありません。

ノエルさん回で、『なぜ初月姉弟にあんなにも親切なのか』というお話。

 私の名はノエル・エルメリア。

 花も恥じらう168歳のエルフだ。

 私は今、とても楽しい。

 こんなにも楽しい気分は何十年ぶりだろうか。

 理由は、面白い姉弟に出会ったからだ。

 姉弟の姉の名はムラサキ・ウイヅキ。

 最初こそ喧嘩腰で突っ掛かってきたが、私のことや私の力を知っても、親しげに話しかけてくる。

 それだけではなく、からかってきたり、いたずらをしたりする。

 まったく、困ったやつだ。

 弟の名前はヒイロ・ウイヅキ。

 彼は人間族にしては珍しく(というより初めて出会ったが)、最初から礼儀正しく、誠実だった。

 私のことを知ってからはそれに加え、敬意のようなものまで感じられる。

 少し照れくさい。


 彼らを見ていると、かつての戦友たちを思い出す。




 私は生まれ故郷である大森林のエルフの集落では忌み嫌われていた。

 エルフという種族は他種族に比べ、圧倒的に個体数が少ない。

 その代わり長寿であり、全てのエルフに土か風の魔法適正がある。

 私は土と、なぜか火の適正を持って生まれた。

 エルフで火の適正を持ったものなど初めてだったらしく、不吉の象徴とされた。


 しかし、私もエルフが嫌いだった。

 世間では『森と共に生き、森と共に死ぬ、高潔な種族』だといわれてる。

 バカか。

 あいつらは、ただ単に外に出るのがめんどくさいだけだ。

 ひどいやつは『起きて、食事をして、用を足して、寝る。』

 これを繰り返しているだけのやつもいた。

 それに、上昇志向もない。

 両親に『なぜ森の外にいってみたいと思わないのですか?』と聞いたことがある。

 答えは『なぜ森の外にいく必要があるんだ?家も食べ物もあるのに。』だった。

 今が良ければそれでいいのだ。

 私はそんなエルフという種族が嫌いだった。

 幸いにして、私には魔法の才能があり、自分で言うのもなんだが天才と呼ばれるものだった。

 ただひたすらに本を読み、魔法の訓練をし、森の外の情報を漁った。

 そして70歳の時、森を出た。


 しかし、そこでも私は嫌われた。

 私の実力を知らないやつから外見のみで見下され、バカにされた。

 そして私はバカにしたやつらを例外なく叩きのめした。

 ついたあだ名が『誰にでも牙をむく、狂ったエルフ』だ。

 色々旅をしたが、会う者はくだらないやつばかりだった。


 ある時、魔物に襲われた砦街への援軍の依頼を受けた。

 かなりの数の冒険者がそれに参加し、なんとか防衛に成功した。

 そこでも私を見る目は恐怖だったり、侮蔑だったり、嘲りだったりした。

 私はナニカに絶望し、砦街から避難する市民や負傷した冒険者たちと一緒に後方へ戻ることにした。

 しかし、安全だったはずの帰り道で、数百からなるハイ・スケルトンの大群に襲われた。

 皆絶望し、戦うことをあきらめていたが、私はあきらめなかった。

 あきらめられなかったのだ。

 独りのまま生きて、独りのまま死んでいくなんて嫌だった。

 私は大魔法を使い敵を攻撃したが、それでも敵は少なくとも百体以上残っていた。

 魔力はほとんどなかったが、落ちていた折れた剣を拾い、残った魔力を注ぎ込み、敵軍へ突っ込んだ。

 しかし、10匹倒した時点で囲まれてしまった。私はもともと近接戦闘型ではないのだ。

『こんなところで、独りきりで終わるのか』

 そう思った時だ。

 突然、生きることをあきらめていた冒険者たちが雄たけびを上げて突っ込んできたのだ。

 ほとんどが怪我人だ。

 それに、私の魔法で数が減ったとはいえ、まだまだ敵は多い。

 正直、勝ち目はかなり薄い。

 にも関わらず、なぜ今頃になって?と思った。

 その時、叫び声が聞こえた。


「彼女に続けぇぇぇぇぇぇぇ!彼女を、死なせるなぁぁぁぁぁぁ!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」」


 初めは、何を言っているのか理解できなかった。

 そして冒険者たちは私目掛けて敵を蹴散らしながら突撃してきて、円陣を組んだ。

『無事か!?怪我はないか!?』

『嬢ちゃんにばっかりいい格好はさせないぜ!』

『さっきの魔法、すごかったな!あとであれ、また見せてくれよ!』

『この戦いが終わったら、町で宴会でも開きましょうか!私がおごってあげるわ!』

 口々にそんなことを言っていた。


「あの女の子を死なせるなぁぁぁぁぁ!」


 その円陣の向こうには、先ほどまで全てをあきらめて座り込んでいた市民たちの姿もあった。

 その手には錆びた剣やぼろぼろの弓矢、木の棒や大ぶりな石が握られていた。

 彼らは『私』を助けにきてくれたのだ。

 その事実を理解した時、私は戦場のど真ん中で泣いてしまった。


 多くの死傷者を出しながらも帰還した私たちは会話をするようになり、友と呼べる存在になった。

 私はこの大陸にはくだらないものも多いが、それ以上に素晴らしいものもあることを知った。




 しかし、それから時が流れ、友人たちは一人、また一人とこの世を去っていった。

『生魔大戦を生き抜き、勝利に導いた英雄の一人』という肩書きを与えられて数十年、私に気軽に声をかけてくる者は誰もいなくなった。

 私は昔の思い出を胸に隠居しようと思い、森の中に別荘を建て、一人静かに暮らし始めた。


 それから数日経ち、餌をつけない釣竿を泉に浮かべ、ボーっとしていた。

 すると、泉から突然、人間族の男が出現した。

 少しすると、今度は人間族の女が出現した。

 そして二人で抱き合い、いちゃいちゃしだした。


(なんなんだ、こいつらは?)


 駆け寄り、じっと見ているが、一向にこちらに気づく気配がない。

 仕方ない、少し悪い気もするが、声をかけてみるか。


「あー、そろそろ話しかけても大丈夫だろうか?」


 そして私の人生エルフライフは、再び動き出した。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


初月姉弟と話しているうちに、今は亡き昔の戦友たちを思い出してしまいます。

同時に、家族に縁がなかったため、仲の良い姉弟を見て一種の尊敬やあこがれを抱いてしまいます。

その結果、初月姉弟を存在しないはずの自分の妹・弟のように感じてしまうノエルさんでした。

そしてノエルさん、昔はヤンキーでした。


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