第百二十一姉「「「語呂わるっ!!」」」
読者さんから何件もブクマや感想、評価をいただきました。ありがとうございます。
クリスくんも「さすがボクのお師匠様です!跪け愚民ども!」とかいってました。
ヒロくんあんま、っていうかほぼ関係ないよね。
やはり読者さんから何かしらの反応があるとニヨニヨしちゃいますね(笑
頑張ります。
すげー闇堕ちっぷりだなおい!誰か助けて!
その時。
突然ユニコーンが駆け出した!
俺に向かって。
「・・・え?」
はっ!? 忘れてた!ユニコーンは歴史上最古参の処女独占厨!そこに男が現れたら・・・!
「ヒイロさん!!」
「・・・あ、≪水鋭刃≫!」
マリーシアさんの悲鳴で我に返り、使い慣れたチャクラムを放つ!
「ブルッ!」 カキン!
「ええぇ!?」
角で弾かれた!?魔法防御高すぎぃぃぃ!
俺は咄嗟に頭を下げると同時に腕を×印に構え、衝撃に備える。
南無三!
・・・・・・・・・・・・
来るべき衝撃が来ない。なんで?
俺はそーっと顔を上げる。
すると。
「やだー、超イケメンなんですけどー!どっからきたんですかー!?一緒にコリーンニンギン食べませんかー!?」
顔をべろべろ舐められつつ、ナンパされたのだった。
「で、お前はなんなんだよ駄馬。」
「うるさいわねブス二号。消えろ。こっちくんな。そこのブス一号とすみっこで遊んでなさいよ。」
「はい死刑けってーい。裁判官はわたしー。」「同意でーす。弁護士はあたしでーす。」
「落ち着いて!お願いだから全員落ち着いて!」
俺をべろべろしていたユニコーンをさきねぇがムラサキ流奥義≪竜神烈火脚≫で蹴り飛ばした後、そのままユニコーンと死闘に突入し。
その間に舐められた顔を綺麗にしていた俺は、さきねぇの魔力が切れる前になんとか戦いを中断させ、今に至る。
「えっと、ユニコーンさん、でいいんですよね?」
「そうよ、みんな大好きユニコーンさんよ?」
「・・・あの高名な霊獣の、ユニコーンさんでいいんですよね?」
「ええ、高名な霊獣の、ユニコーンさんよ?」
ヒヒン!と嬉しそうな声を出す、自称ユニコーンさん。
「・・・でも、なんで男性と話してるんですか?清らかな乙女にしか懐かないんじゃ?」
「・・・・・・」プイッ
「このクソ馬ぁ・・・!」
完全に無視され、ぶち切れるマリーシアさん。
「えっと、なんで俺と話してくれるんですか?清らかな乙女にしか懐かないんじゃ?」
「えーだってあなたイケメンじゃなーい!普通話すっしょー!お持ち帰りっしょー!」
「お前の魂を地獄にお持ち帰りしてやんよ駄馬ぁ!」
肉食系女子(?)なユニコーンにぶち切れるさきねぇ。
今現在、この場には草食系男子一名・ぶち切れ系女子二名・肉食系白馬一頭とすごい状況になっております。
「えっと、ユニコーンさんはみなさんこんな感じなんですか?」
「いいえ、違うわよ。私が特別なの。体は雄なんだけど、心は雌っていうか。新時代のユニコーン、名乗るなら、そう、『ニュニコーン』かしらね!」
「「「語呂わるっ!!」」」
しかし、オネエのユニコーン・・・。
なんか、この世界にきてから俺の頭の中にあった『剣と魔法のファンタジー世界』のイメージがガラガラと崩れ去ってる。
いや、まぁ理想と現実が違うことなんて常ですからね?別にいんですけどね?これはこれで味があって俺は好きだし。
「で、お兄さんはなんて名前なのかしら?」
「あ、これは失礼。冒険者をやっておりますヒイロ・ウイヅキと申します。宜しくお願いします。名刺は持っていないもので申し訳ありません。」
ぺこりと頭を下げて挨拶をする。
俺の予想が正しければ・・・!
「これはこれはご丁寧にどーも♪冒険者とかむさいおっさんとかブスな無礼者ばっかだと思ってたけど、お兄さんみたいな人もいるのね~!好感度さらにアップ♪人間もお兄さんみたいな人ばっかりならよかったのにね・・・」
「ありがとうございます。」
やはり。思ったとおり、こいつもタイプ・おばちゃんか。
「でも、どうしてこんなところに?っていっても、大体想像はつくけど。」
「はい。実は命の恩人であり、師匠でもあり、親代わりでもある女性が病に倒れまして。どうかユニ、ニュニコーンさんの角をひとかけらでもいただ」
言い終わる前にニュニコーンさんはすくっと立ち上がり、歩き出す。
ありゃ、怒っちゃったか。好感触すぎてアプローチが早すぎたな。
参ったな、どうするか・・・
俺がそんなことを考えていると。
「フンッ!」 ボキッ!
ニュニコーンさんが全力で木に角をたたき付けると、真ん中ぐらいからぽっきりと角が折れる。
そのまま、折れた角をくわえて俺の元に持ってきてポトリと落とす。
「はい、ドーゾ♪」
「「「・・・・・・・・・」」」
・・・俺はとんでもないことをお願いしてしまったのではないか。
ブルブル震える手で角を拾い上げる。
「あああああ、あの、その、だ、大丈夫なんですか?せっかくの立派な角が・・・」
「ああ、これ?平気平気♪半年くらいでまた元に戻るから♪」
「「「意外に再生早い!?」」」
子供の乳歯じゃないんだから・・・
「・・・そんな簡単に生えるなら、なんでユニコーンの角って希少品なの?」
「そうですよねぇ?いっぱい取れてもおかしくないかと・・・」
さきねぇの疑問ももっともだ。
しかし、ニュニコーンさんは女性二人を完全シカトなので俺が代わりに聞く。
「なんでですか?」
「ユニコーンの角はそれだけじゃ意味ないのよ。ユニコーンが角を『自分の意思で相手に譲る』必要があるの。そうすると角に癒しの魔力が残るのよ。逆にユニコーンを殺したり角を無理やり折ったりすると魔力がなくなるから、そのへんの動物の角と変わらなくなるわ。」
「「「へぇ~。」」」
初めて聞いた。そんなの魔物図鑑の巻末付録『マル秘!霊獣情報!』にも書いてなかったな。
じゃあ強引に乱獲はできないわけだ。
「ちなみに、角は粉になるまで砕いてから飲んだほうがいいわよ。朝昼夜の各食後に一回の一日三回。用法用量を守って使ってね♪ちなみに病気には効くけど怪我には効かないから注意よ?」
薬か。ユニコーン薬局か。
「ありがとうございます!これで義祖母ちゃんも治ります!・・・それで、お代なんですけど・・・」
「別にいらないわよ?私がお兄さんを気に入ったから上げただけだし♪」
「でも、それじゃあこっちの気が収まらないですよ。ん~・・・じゃあ、ブラッシングとかどうですか?」
「ブラッシング!?いいの!?法律にひっかからない!?」
「え、どんなブラッシングさせるつもりなんですか。いやらしいやつじゃなくて普通のですよ。」
「OKOK!お願いするわ~♪」
「ごじゅうはちじゅう喜んで~。」
「保険屋か。」
さきねぇのツッコミを華麗にスルーし、ブラッシングを始める。
こんなこともあろうかと、事前に【スーパーマルチ動物ブラシ・ハードタイプ】を買って魔法袋に入れておいた俺の準備周到さの勝利といえよう。
「あああああああああああああああ、効く~・・・」
「かゆいとこないっすかー。」
「もうちょっと横・・・そうそこ!そこらへん重点的にグッと!」
「はいな~。」
そんな感じで一時間ほどかけて丁寧にブラッシングする。
その間、さきねぇとマリーシアさんはポーカー勝負で暇を潰していた。
「よし、こんなもんでどうかな?」
「チョー気持ちよかった!ほらちょっと見てみなさいよブス一号二号!毛並みツヤッツヤ!やばくない!?」
「マリすけーそこらへんからいい感じの石持ってきてくんなーい?握りやすそうで大きめのやつー。」
「これなんてどうです?いい音しそうですよ?」
「おー、マリすけにしてはグッドチョイスじゃない。」
マリーシアさんが持ってきたのは子供の頭ほどありそうな、大きめの石というより小さめの岩だった。
「ど、動物愛護!虐待禁止!」
「ヒロさっきからその駄馬の味方しすぎじゃない!?」「ヒイロさんさっきからそのクソ馬の味方しすぎじゃないですか!?」
背後に不動明王を背負うさきねぇと愛染明王を背負うマリーシアさん。
怖いよー。助けてノエルさーん!
「だ、だって僕に『恩には恩を、罪には罰を、背中には人生を』って教えたのはお姉ちゃんだよぅ!」
「む・・・」
さすがにノエルさんのためにユニコーンの角を探しに来たことは忘れていなかったようだ。
『わたし、ちょうふまんです!』って顔をしながらも引き下がった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
というわけで、ユニコーンさんはアーッな馬ではなく、オネエでした。
そしてヒロくんは子供とおばちゃんと動物にはかなり好かれる設定です。




