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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第十四章 初月探検隊、北へ!秘境の奥地に幻の霊獣は実在した!?編
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第百十九姉「鉄の城かよ。」

 まさか、人目のない山に連れて行って、背後から・・・

 さささささささすがのさきねぇでも、それは、ねぇ?

 ・・・ないよね?



「ひそひそ(さきねぇ、法に触れるようなこと考えてないよね?具体的には刑法199条的な。)」

「ひそひそ(ヒロが何を言ってるのかよくわからないけど、大丈夫よ。我に秘策あり!)」

「ひそひそ(その台詞今日二度目なんだけど、一度目は完全に失敗してたよね)」

「ひそひそ(まぁまぁ、詳しいことは後で話すわ。)というわけで、明日の朝出発よ!マリすけ荷物持ちね!」


 さきねぇの言葉にキラキラした顔を見せるマリーシアさん。

 希望に満ちた顔だ。これがあとで絶望に染まらなければいいが・・・


「はい!・・・え?あの、ヒイロさんって、魔法袋持ってませんでしたっけ?」

「持ってるけど?」

「えっと、そこに荷物も入れればいいんじゃないかなーって・・・」

「ちょっとヒロ聞いたー?なんて悪魔のような女なのかしらー?彼氏でも弟でもない男に荷物持たせようとしてるわー?」

「わかりました!持ちます!なんでも持ちます!へへへへ、なんでもいってくださいよー?」


 もみ手をしながらニコニコしているマリーシアさん。

 な、なんという卑屈さ・・・かわいそうに。

 ユニコーンクエスト中くらいは普段より優しくしてあげよう。


「では、また明日!」

「はい!また明日!支部長ー!聞きましたかー!明日、有休で!有休でクエストいってきまーす!」


 ちゃっかりしてやがる。




 そして次の日。


「さぁいきましょう!」

「うぃ。」「はい!ユニコーン狩りに出発ですね!」


 昨日一日で山装備を整え、早朝にアルゼンを出発する。

 ノエルさんはアメリアさんに任せてある。

 待っててくださいノエルさん!ユニコーンの角を叩き折ってやりますよ!

 セレナーデの森と違い、徒歩だとけっこうな距離があるため馬車を使う。

 ここは初心者の町アルゼン、お金さえ払えば近くまで馬車を出してくれるお店もあるのだ。

 帰りはどのくらいになるかわからないので片道だけだけどね。


 ゴトゴトゴトゴト。


 馬車に揺られること数時間、シースー山のふもとへ到着する。


「じゃあ、あっしらはこれで。ご武運を、なんて鈍器姉弟には必要ないか!あっはっは!」

「ありがとうございました~。」


 のんきに笑いながら去っていく業者さん。

 ここはセレナーデの森よりもD級魔物の発生率が高いため、アルゼン卒業間近のそこそこの腕を持つ冒険者しか立ち寄らない。

 気を引き締めていこう!


「魔物がでてきたら任せてください!これでも元D級冒険者ですからね!足手まといにはなりませんよ!」


 ホッ!ハァッ!とか言いながら剣を振り回すマリーシアさん。

 うさんくせぇ。


「マリーシアさんの武器は剣ですか?」

「正確にはサーベルですね。突きが主体ですけど斬ることもできますよ!一撃は軽いですけど、そこは手数でカバーです!」

「なるほどねー。あ、魔物きた。さぁいけマリすけ!」

「お任せくださ、い・・・?」


 そこにいたのはサンドマン。

 子供くらいの大きさの魔物で、名前の通り、全身砂でできた魔物だ。


「ほら、魔物よ。がんばれがんばれまーりすけ!」

「えっと、こいつ、サーベルでやるんですか・・・?」

「かまわん、やれ。」


 マリーシアさんが困っているのにもわけがある。

 こいつはその全身が砂という特性故、短剣や小剣など突き主体ではダメージが通りづらいのだ。

 もちろんマリーシアさんが先ほど言っていた通り、サーベルも突きメインの武器。

 最悪の相性といわざるを得ない。


「ほら、早く。ハリーハリーハリーハリー!」

「・・・・・・ちくしょー!もっと弱いやつでてこいよー!」


『ウバァァァァァ!』といった感じで特攻するマリーシアさん。

 援護してあげますか。


「≪水散弾アクアショット≫!」


 その掛け声と共に水の塊がサンドマンに向かっていく。

 そして、ぶつかる手前でパァン!と弾けた。


「ォォォォォォ・・・!」


 苦悶の声をあげるサンドマン。

 ギルドの魔物図鑑に書いてあった通り、水を喰らうと動きが鈍くなり砂が剥げていく。

 そして。


「魔石見っけ!そりゃ!」

「ォォォ・・・」


 驚くべきことに。

 まことに驚くべきことにそれなりの速度でそれなりの突きを放つマリーシアさん。

 サーベルが砂の中に隠れていた魔石を貫くと、サンドマンはさらさらと崩れて消えていった。


「ありがとうございますヒイロさん!どこぞのいじわる女とは違いますね!」

「何いってんのよ。マリすけがどこまで戦えるか見定めようとする親心よ?」

「はぁ・・・とりあえずチーム組んでんだから効率よくいくよ。」

「「はぁ~い!」」


 返事だけはいいんだから。まったくまったくもう!

 そんな感じで進んでいくこと一時間くらい?

 分かれ道に差し掛かった。

 しかも、ご丁寧に『左・山の奥へ』『右・泉へ』と看板まで立っている。


「・・・どうする?」

「意地の悪い冒険者のいたずらって可能性もありますからね・・・」

「私のお姉ちゃんセンサーが右っていってるから大丈夫でしょ。」

「なら大丈夫だね。」

「なんなんですかその無駄な自信と信頼・・・」


 まぁこればっかりは俺たち姉弟にしかわかるまい。

 姉センサーは最大ロック数・ロック速度・索敵範囲・索敵速度全てがSクラスの壊れ性能なのだ。

 しかもネット接続されていないので性能調整されることもない素敵武装。ずるい。


 そのまま右に進んでいくこと十数分。

 お目当ての泉に到着した。


「さて、到着したけど、どうやって見つけようか。」

「財団の地下の隠し格納庫に眠ってるんじゃない?」

「それ違うユニコーンだから。」

「じゃあ腕時計に向かって来い!ユニコーン!って言ったらどう?」

「うん、そもそも腕時計がないね。」

「もぅ、わがままね~。じゃあもう泉が真っ二つに割れて中からユニコーンがでてくるでいいんじゃない?」

「鉄の城かよ。」

「???」


 さきねぇと俺のボケの応酬についていけてないマリーシアさん。

 ごめんね。


「あ、こんなのどうですか!?清らかな乙女が泉で泳いでたらユニコーンがきませんかね!?なんて「それでいこう。」「それでいきましょう。」え!?ほんとに!?」

「いいだしっぺだからマリすけやってね。」

「頑張ってくださいマリーシアさん。」

「え?え?」


 あれよあれよというまにさきねぇに服を脱がされ下着姿にされるマリーシアさん。


「よっこいしょっと!わっせわっせ!」

「ちょ!まだ心の準備が!待って!待って!」


 そしてさきねぇに担がれ泉まで連行される。

 俺は敬礼でもってそれを見送ることしかできなかった。ビシッ!


「そ~れいっとぉ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」ザブーン!


人間ロケットのように泉に投げられるマリーシアさん。

 顔からいったな。アレ痛いんだよね。


「じゃああそこの茂みで隠れてるからユニコーン来たら呼んでね!」

「・・・・・・わかりました。」


 ずぶ濡れのまま、どよーんとした顔で返事をするマリーシアさん。

 幸薄そうな顔してんなー。

 さきねぇが小走りでこっちに向かってきて、俺のすぐ横に座る。


「とりあえずこれで様子見ね。多分だめだけど。」

「うん、多分だめだけど、やることに意義があるからね。」



 ~30分後~



「フッ!フッ!ハッ!」

「甘い!これで!終わりだ!っしゃー!私の勝ちー!」

「くっそ、惜しかったなー。もうちょっとだったのに。」

「・・・・・・・・・何してるんですか。」

「「え?」」


 ずぶ濡れのマリーシアさんがそこにいた。


「私が孤独と寒さに耐えて泉で待機してるときに、何してるんですか!?」

「「スピード。」」

「プレイしてるカードゲームの種類を聞いてるんじゃないです!さ、さぶ、さぶ・・・」

「とりあえずこっちに来て火に当たってください。お疲れ様でした。」

「どう?ユニコーン釣れた?」

「ユニコーンが近くに来てたとしても、白熱したカードゲームの掛け声で逃げ出してると思いますよ!」

「「あっはっは!こいつは一本取られたな!」」

「笑い事じゃないです!」


 お昼になったので、マリーシアさんを乾かしがてら昼食にする。


「まったくもう、なんなんですかこの姉弟。人でなしにもほどがあるんですけど。」

「まぁまぁ。さっきのマリーシアさんかっこよかったですよ。頑張ってて。」

「!? そ、そんなのでごまかされませんからね!」

「じゃあいいや。」

「もうちょっっっとひっぱって褒めてくれてもいいんじゃありませんかね!」


 やっぱ面白いなこの人。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


まりさん、安定の捨て駒感。

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