第百十二姉「あぁ!私のイモザエモンが!?」
一月一日からなんか体調よろしくないなーと思ってたら一月二日に39.4℃という人生最高体温を更新してしまいました。
ずっと執筆が停止していたので書き溜めがやばい!
「「これぞまさしく、味覚神経を痺れさせる黒き稲妻やー!」」
「・・・お前達、けっこうグルメだな。なんなのそのノリ。」
行儀が悪いとは思ったが、マジでうまかったため食事中はずっとそんな感じだった。
そのままむしゃむしゃとしゃぶしゃぶを貪る。
いやーうまいわ。ノエルさんの料理も美味しいけど、たまにはこういうのもいいね!
あと『むしゃむしゃとしゃぶしゃぶ』ってなんか語呂がいい感じ。
「食べたー!ごちそうさまでした。美味しかった!」
「我は満足じゃ!満腹満腹ぅ!」
「ごちそうさまでした。やはりブラックサンダーは美味しいな。」
俺達が食べ終わると、ウェイターや周りのお客さんがほっとしていた。
どうも俺達のアホなコメントがお笑いの沸点が低い異世界人に受けたらしくウェイターさんは常に口角をヒクヒクさせて笑いをこらえていたし、他の客も俯いて肩をプルプル震わせていた。
ひどい客はワインを口から吹き出してテーブルが阿鼻叫喚の地獄絵図になっている席もあったようだ。
この程度で爆笑とは・・・日本にきたら笑い死にしちゃうぜ?
食べ終わった後、店長から今後は静かに食べるように、そして俺達のアホなコメントを宣伝に使わせてほしいという依頼があったので了承した。
逆に客こなくなるんじゃないか?まぁいいか。
このお店をお気に入りに追加、と。
「お会計は6300パルになります。」
「「・・・!?」」
なん、だと・・・?一瞬よくわかんなかったけど、三人合計で63000円とは。
ブラックサンダー肉ちょうたけぇ!
「では、これで。」
「はい、ただいまお釣りをお持ちしますので、少々お待ちください・・・ではこちらです。お確かめください。」
「うむ。」
「またのご来店をお待ちしております。」
レストランを後にする俺達。
「あのー、ノエルさん。俺らもお代払いますよ。」
「「別にいいよ。」」
「待て、お前が発言するのはおかしい!」
「はははは!お祝いだといったろう?子供がそんなことを気にするんじゃない。」
「ほら、エルエルのいい女っぷりを引き立てる為にも、ここは素直にゴチになればいいのよ?」
「・・・わかりました。ありがとうございます。もし今度来るときはノエルさんの誕生日パーティーできましょう。その時は俺達が払いますね。」
「そ、そうか・・・ありがとぅ・・・」
涙ぐむノエルさん。
そしてノエルさんの肩をぽんぽんと叩くさきねぇ。
今日も仲良し家族な俺達だった。
それから数日経ち、ついに芋掘りクエストの当日になった。
集まった農場は予想以上にでかかった。北海道か。
一応ユリシロで買った汚れてもいい作業着に着替え済みで、準備は整っている。
さきねぇはそれに加え、熱中症防止の麦わら帽子にタオルを首に巻いている。完全に農作業モードだ。
・・・アイドルに農作業やらせて『アイドルと一緒に農作業できる券』とか売り出したらけっこう売れるんじゃないか?テレビを通して色んな人に農業に興味を持ってもらえるし、一石二鳥ではなかろうか。
「はーい、では一人一列が最低ノルマでーす!数をこなした分だけ追加で報酬をお渡ししますんでよろしくお願いしまーす!」
「はーい!」「うーっす!」「おっけー!」「よっしゃー!」
色んな掛け声とともに、みんなが位置に付く。
一人一列がノルマか。一列で目測25メートルくらいあるな。けっこうきつそう。
「掘るぜ~めっちゃ掘るぜ~!」
お姉さまはやる気まんまんマンだ。さて、俺もいっちょ頑張りますかね!
魔法袋から手袋を取り出す。
これはノエルさんからもらった【マーマンの手】といわれる道具。本来は水の中で動きやすくなる、いわゆる水かきのようなものだ。
しかし、見た目や肌触りはゴム手袋に酷似している。
これを使えば手に土も付かずに掘れるはずだ。
「さきねぇー、これ使えーい。」
「うぇーい。」
さきねぇに【マーマンの手】を投げ渡す。
・・・子供の頃は普通に素手で土掘ってたなーそういや。
いつから『素手で土掘ったら指と爪の間に土入って衛生面でちょっとね』なんて思うようになったんだろうか。
これが大人になるってことなのかな。なんか寂しい。
「感傷に浸ってる場合じゃないね。お仕事お仕事。」
悲しい想いを振り払い、しゃがみこんで土を掘る。
少し掘るだけでサツミモが姿を現す。
「ふんぉっとぉ!?」
地球の感覚で思いっきりサツミモを引っこ抜くと、予想以上に簡単にスポーン!と抜けた。
そういや能力強化されてたんだった。あまりにも普通の芋ほりすぎて、ここが異世界だということを忘れてたぜ。
これなら簡単に終わるんじゃないか?
そう甘く考えながら土を掘る→サツミモを引っこ抜くを繰り返すこと数回。
新たなサツミモに手をかける。
すると。
「よっと・・・イテッ。なん、だ・・・ぅわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「え、ちょっとヒロ、どうし・・・ぶわははははははははは!」
そこには、『さつまいもに手を噛まれている』アホな男の姿があった。
もちろん俺のことだ。
「サ、サツマイモに食われてるー!ちょ、ちょうだせぇ!ぶわはははははははは!ヒー、ヒー、、死んでしまう!助けてエルエル!愛しい弟が私を殺そうとしてくるわ!しかも体を張って!愛情と殺意は紙一重ぇぇぇぇぇぇ!」
「わ、笑ってないで助けて!怖い!すごい怖い!あんまり痛くないけどすげー痛く感じる!ひっぱって!お姉さまひっぱって!」
俺のパニックっぷりとは裏腹に、周囲は『お、今日の初ヒットはヒイロさんか。』『あの人がパニックって珍しいな。』『・・・どうしよう、ちょっとかわいいかも。』『あ、やっぱ思った?私も。これがギャップ萌えってやつなのね。』などと平和な感じで好き勝手いってやがる。
「よっとぉ!」「いてぇ!」
さきねぇにひっぱってもらい、殺人サツミモから逃れる。
「イモォォォ!イモォォォ!」
「ギャァァァァァ!叫んでるー!マンドラゴラだー!耳をふさげみんなー!」
「ぶわはははははははははははははは!鳴き声ちょう不細工!うける!これ持って帰って飼育しようかしら!」
「・・・・・・てい!」
「あぁ!私のイモザエモンが!?」
変な顔をしながら近づいてきたスレイが剣を一閃、マンドラゴラ(?)を真っ二つにするとキラキラ輝いて消滅した。
つーかイモザエモンって名前つけてる時点で、すでに飼う気まんまんだったんじゃねーか。
「・・・あのー、大丈夫ですか?」
「スレイー!助かった!お前恩人だわ!俺の命の恩人!オマエ、オレ、タスケタ!オレ、オマエ、スキ!」
「なんで急にカタコトになるんですか!?」
「そんくらい助かったってことだよ!怖かったよー!」
「あ、ちょっとヒロ!抱きつく相手が違うでしょ!こっち!お姉ちゃんはこっちよ!」
勢い余って俺がスレイに抱きついたため、さきねぇがぷんぷんしてる。
弟のピンチに爆笑したからだ!
「えっと、ヒイロさんたち、もしかしてサツミモ掘り初めてですか?」
「ええ、初めてよ。簡単に言えば処女と童貞よ?」
「どどどどど童貞ちゃうわ!」
「はいはい、私が処女なのにヒロが童貞じゃなかったらおかしいでしょ?同時喪失しなかったら世界が崩壊するとまでいわれてるのに。」
「誰にやねん。」
「・・・・・・あのー、そういう込み入ったお話は自宅でしてもらえると助かるんですけど・・・」
顔を赤くしたスレイからツッコミが入る。大変申し訳ない。
「すまんすまん。説明お願いしますスレイ先生!」
「せ、先生!?わかりました!俺に任せてくださいっす!」
なぜこの世界の住人は先生扱いされるとテンションが上がるのか。
いつか研究レポートを発表したいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
さつまいも型魔物『サツミモドキ』は一見するとただのさつまいもですが、触るとマリオのぱっくんフラワーみたいに口が裂けます。怖い。




