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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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リディはチェシャの夢を見る

「おおきなーおおきなーしろいとり〜かみさまからの〜おくりもの〜おとどけものは〜うばわれて〜となりのくにに〜たびだった〜」


なんだ?

子供の声?これは、歌?


「とりのこされた〜そのくには〜しくしくなみだながしては〜ひとつ〜ふたつ〜うばわれた」


だが、この声は何処かで聞いたことがある。

一体、誰の声だ?


「あ〜〜かなしきカスバール。われらのあいするカスバール。めぶくめもなくこおりつく、はやくあのこをつれてこい〜」


こ、れは。まさか。


「・・・・・・ナシェス。その歌はなんだ?」


「おじいしゃま・・・」


怖い。


声を聞いただけなのに背筋が凍るようだ。

なんて、声でナシェスに話しかけるんだ。


「何を歌っていたんだ? 私に教えておくれ」


「ようしぇいのおうたです!いつもうたってる」


駄目だ。駄目だナシェス。

余計な事は口にするな。

これは夢か? ナシェスの周りの妖精達が騒いでいる。


そもそも何故ここにナシェスとベルシャナしか居ないんだ!!誰か!!


「・・・・・そうか。やはり・・・そうだったのだな? だから、この国はいつまでたっても・・・ははははは!!」


「おじ・・しゃま?」


誰か! 父様! 母様!!


「有難うナシェス。私の可愛い孫よ。お前のお陰で全ての謎が解けた。私達は精霊に見捨てられたのだな?」


ナシェス!! 兄様!!


「お前は美しいなナシェス。そして、私には視えぬ物が視える。恐らくお前がこの国を救う可能性があるのだな?」


これは、きっと妖精の記憶だ。

妖精達が見た過去の記憶。

私は、この後ナシェスが何をされるのか知っている。

いや、私はその話を聞いただけで、それがどういう事か、ちゃんと理解していなかった。


「皮肉だな。それを真っ先に私に知られるとは。ふふふ」


なんて目でナシェスを見るんだ悍ましい。

それ以上兄様に触るな! なんで、誰も助けに来ないんだ!!


「いいかナシェス。私達はな? 選ばれた存在なのだ、神に選ばれこの国とそこで暮らす人間を授けられた、特別な人間なのだ。お前はまだ赤子だが、私によく似ている。いいか? もし、私がいなくなったらお前がこの国を引き継ぐのだぞ? そして思い知らせてやるがいい」


どうして。

何故こんな物を私に見せるんだ!

こんな物を見ても私には何も出来はしないのに!


「私達を見限り捨てたこの世界に、其れ相応の報いを与えるのだ。お前は思うまま欲し、支配し、そして壊せ・・・自分の身が滅びるまで。大丈夫、そのうち何も感じなくなる。お前にはとっておきのプレゼントを授けてやろう。三歳を迎える可愛い我が孫に私からのささやかなプレゼントだ」


やめろ! やめろぉおおおおお!!


「大丈夫。死にはしまい。ただ何も感じなくなるだけだ」


グジュッ


「あ"」


その虫が兄様の身体に侵入して彼の大事な部分を壊して行くのがわかる。酷い。こんな事されるのなら、いっそひと思いに殺された方がマシだ。何故こんな事が出来るんだ!


何故!!


「・・・・聞こえているか? 私の声が。そもそも、お前達がいけないのだ。何故、必要不可欠な存在など作り出した?」


ベルシャナ?

この男何を・・・・。


「もういい加減我等を解放しろ。お前達の勝手に振り回されるのはうんざりなのだ。もう、私は疲れ果てた」


勝手な事を。

散々この国の人間を好き勝手に扱っておいて・・・。


「せめて人として死なせてやれ。私の代わりなどお前達に渡すものか。ここは私の国だ。私は、この国と共にこのまま滅びる」


どういう意味だ?


「この国の人間が消え去れば精霊も必要なくなるだろう?

それで全てを許してやろう。お前達が私達ディムレムに課した残酷な使命を」


[リディ]


なんだ? 妖精?


[もうすぐ精霊が産まれるよ。この国の精霊が]


そうなのか? では、この国は救われるのだな?

だが、なんだろう。この、胸騒ぎは・・・・。


[連なる岩山の間に彼が産まれるよ。会いに行ってあげてね?]


「分かった。それで、その精霊の媒体は何なんだ?」


サウジスカルの本来の精霊の本体は綺麗な湖らしい。

あの大樹も精霊の媒体だろう。


[この国には、精霊を迎え入れる事が出来る器がまだないの。だから・・・・・・]


よせ。言うな。


[チェシャがその代わりに精霊になってくれるよ。リディ。祝福してあげて?]


どいつもこいつも勝手なことばかり、ふざけるな!!

お前達は一体兄様をなんだと思っているのだ!!


「ハッ!!」


ここは? いつもの寝室? 目が覚めたのか?


「兄様・・・・・」


本当は頭の隅でその可能性も考えてはいた。

だが、まさかこれが我等ディムレルの使命だったとは。


今すぐ行かなければ。

二度と会えなくなる前に。


「え? リディ様? そんな格好で何処へ行かれるのです?」


「精霊のいる場所が分かったぞ! 今すぐ向かう!」


「 その格好でですか!?お待ち下さい!」


今行かなければ。今すぐに!!


「何を騒いでいる?」


「アトレイア様」


また、こんな時に・・・。この人は。


「ナシェスの所に行くのか?精霊の誕生を止めるのか?」


「・・・・何ですかそれは?」


この人は、今何と言った?


「ナシェスから話は聞いている。・・・・リディ」


そうか。いつだって私は蚊帳の外なのですね。

でも、これはあんまりだ。


「二度と、私に話しかけないでください」


私は、ただ、この国を救いたいだけなのに。

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