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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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テニアはしばし目を閉じる

「婚約者候補達皆が共犯だったとは。愚かだな」


ディアナ様。そうですわね。

エドリア伯爵もさぞ驚いたでしょうね。


しかもそれを手引きしたのがクロエ様だったとは。

本当に碌でもない人間ばかりですわ。


「そんなにまでリディ様の婚約者になりたかったのでしょうか? 確かにお料理は美味しいですけれど・・・・」


クララ様は、それしか無いのですわね?

あれからメリル様はあっと言う間にエドリア様の罪を暴いて投獄してしまいましたわ。


他のご令嬢達にもついでに釘を刺したみたいです。


正しくは彼女達の親達にですが。


エドリア伯爵が投獄された事で皆明日は我が身と保身に走り始めておりますわ。


「私の事を、覚えてらっしゃったのですね? バレないよう、こちらでは見た目を変えていたのですけれど」


「どんなに地味な格好をしていても、テニアのその美しい髪の色までは変えられないからね? それに、貴女は所作が綺麗だから、動きを見て直ぐ気づいたよ?」


有り難いお言葉ですが、とても複雑ですわ。

まぁ、この方がいなくともメリル様はきっと真実に辿り着いたでしょうが。


もうじきカスバールの永きに渡る闇が明ける。


「テニア。少しいいですか?」


「ラフィネラ。どうしました?」


「リディ様から、戻るようにと命があった。少し話をしたいんですが」


「私達は構わないよ? 行っておいで」


あれから。ラフィネラと話をしたのは一言二言。

でも、きっとメリル様が言っていた事は真実でしょう。


ラフィネラの事情を聞いて、私はもう、どうしたらいいのか分からなくなってしまいましたわ。


「ごめんなさい。関係ない貴方に最低な事をさせてしまいましたわ」


「・・・・俺が自分で決めて行動した事だ。謝る必要はない。母は、ずっと貴女を迎えに行けなかった事を悔やんでいた。それなのに、自分だけが幸せになってしまったと」


そう。

そうですのね。

確かに、私の人生はとても寂しいスタートでしたわ。

でも、私はあの時まで確かにそれでも幸せだった。


恵まれた職場で、限られた中でも私達はお互いを大事に思えた。あの子が死んだ時、皆泣きながらあの子の死を悼んでくれた。それだけで満足するべきだったのです。


でも、私はそんな人達を巻き込んで最低な事に手を染めさせた。彼等を罪人にしたのは、紛れもなく私ですわ。


「ラフィネラ。もう二度と私の為にこんな事はしてはならない。貴方は誇り高き陛下の騎士ですわ。今もこれから先もずっと」


「・・・・・・ああ」


「テットを追いかけて来たのですわね? テットは強いですわ。でも、貴方ならいつか、テットと並んでこの国を支えられる立派な騎士になれるでしょう。だから、もう私の事は守ろうとしないで下さいませ」


そんな顔をしないで。

私は大丈夫ですわ。だって私はもうメリル様のものですもの。だから、勝手に死んだりなどしませんわ。


「私は心の目を閉じて、あの子の事は暫く封印します。今目の前で生きているメリル様をお助けする事だけに力を注ぐ事にしますわ。全てが終わって、この国が平和になったら、その時こそ全ての罪を償いたい」


「・・・・じゃあ、その時は。俺も一緒に償おう」


駄目ですわ。貴方はそんな事しては駄目。

貴方は、幸せにならなくては。


「テニア、忘れないで欲しい。どんなに離れていてもテニアが罪を犯しても俺はあんたの味方だ。あんたの家族だから」


"お前の愛する者の国ではないのか?"


ええ。私もですわ。

ラフィネラ。今度は私が貴方を守ってみせます。


メリル様と一緒に、今度こそ。




「あーーーやっと帰って来れたぁぁあああ!!」


「あ。お帰り〜早かったね? もっと向こうにいても良かったんだよ?」


「嫌ッスよ! 堅苦しいし、ラフィネの奴やたらグイグイ来るんすよ? 面倒くさい!!」


そんな事言わないで下さいません?

彼は貴方にちょっと憧れを通り越して崇拝に近い感情を持っているだけですわ。少しくらい話してあげて下さいませ。


「なんッスか。テニア何か言いたげッスね?」


「いいえ? ただ、今回のチェンジでテットがいかに普段仕事をサボっているのかがよく分かりましたわ。ラフィネラはちゃんとメリル様の護衛勤めておいででしたわよ?」


「え? 俺もちゃんと護衛してるッスよ?」


もうすでにメリル様の姿を見失っておりますわよね?

いい加減にして下さいませ?


「って、あ! メリル様どこ行った?」


「メリル薬草畑行くって〜」


「お! ナイスシャミ! テニア、シャミは任せた」


ごめんなさい。

いつか、貴方からもちゃんと罰を受けますわ。

だから、今はまだもう少しここにいさせて下さいませ。


「あ。テニア」


「はい?」


「俺はもう、メリルの騎士だからさ」


ええ? そうですわね。

貴方が勝手にそう決めてましたものね?


「メリルが決めたなら、それでいいんだ。だから、気にしなくていいんじゃないか?」


「・・・・・・・・テット?」


「メリルが信じるなら俺もテニアを信じる。だからテニアも俺を信じろよ」


「・・・・・・・もう、とっくに信じておりますわ」


「そっすか? じゃ、行ってきます!」


彼等が笑って暮らせる明るい未来。


私は必ずそれを彼等に与えてみせる。

そして、その日を迎えるまで、しばし目を閉じる事にしますわ。

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