メリルはテニアを守りたい
「お前を襲った男達をこの宮廷内に招き入れたのは、テニアだろう。彼女はまだハーバー家と繋がりがある」
リディの口からその言葉を聞いた時、やっぱりなと思った。
実はずっとテニアが何か目的があって私の所に来たのだと勘付いてた。
だってどう考えても不自然でしょ?
リディも私もテニアを此処へ呼んだわけじゃない。
伯爵家から紹介されてやって来て、半ば強引に私の侍女になったもんね?
私も最初は誰も信用してなかったから特に何も感じなかったんだけど、テニアって不思議な人だよね。
淡々と仕事をこなしているように見えるのに一つ一つの接し方に温かみがあって、偶に見せる本音がとても面白い。
私達の中で一番人間らしい人だと思った。
彼女は完璧な人間じゃない。
だけど、そこに好感を持てた。
テニアが何かに悩んでいる事も感じ取れていた。
でも、私は聞かなかった。
何となく想像はついたから。
「・・・・うっ・・・うううう・・・・」
私が襲われたと知って本気で泣くテニアを見てきっとテニアはアイツらの目的が私だった事を知らなかったのだと分かった。テニアは勘違いした。狙われていたのはリディだと。
奴等はリディが邪魔なんだろう。
久しぶりに立つ真っ当な王に迷惑しているみたいね?
本当に呆れかえるよ。
ずっと私は迷ってた。テニアをどうするか。
此処から出してしまうのは簡単だけど、そうしたら恐らくテニアは無事では済まない。口封じで殺されてしまうかも知れない。それに、ラフィネラの事もあったから、下手な事も出来なかったからね?
そんなある日、アイツが現れた。
「メリル。お前シャミと婚約したのだな?」
「そうだよ? 何よチェシャ。不満そうだね?」
[わーいわーい! シャミとメリルが番になるよ!めでたいめでたい]
あ、外野が騒がしかったのね? それはごめん。
「お前シャミの事が好きだったのか?」
「シャミの事は好きだよ? だけどコレはあくまで時間稼ぎの仮婚約・・・・」
うっ! ジッと見ないでよ。
分かってる! 早速私は後悔してる。
「今からでも遅くない。本気でないのなら撤回してやれ」
「そうなんだけど・・・・」
「私は、まだなんとなくだが、自分が間違っていたのだと理解出来ている。どこからが間違っていたのかは、分からないし、全てを納得するのもまだ私には難しい。だがな」
チェシャはもうちゃんと分かってると思うよ?
ただ、チェシャの事だからきっと言い訳も謝罪もしたりはしないよね? ただ、その罪を受け入れて罰をうけるだけだろうね。
「私は、お前の姉を、ティファを愛した事を一度も後悔はした事ないぞ? 例えやり方が間違っていたとしても、それでティファを傷付けたのだとしても・・・。私が人生で初めて自分の意思で欲した女だ。本気でなければ、あそこまで追いかけて行ったりしなかった」
それは、中々情熱的なんだね?自分の思う通りにならなくて意地になってた訳じゃなかったんだ? 意外。チェシャって根はそういう人間だったのかもね。チェシャがまともに育ってたら意外とお姉ちゃん落とされてたかも?
[面白い話してるな? 恋バナか?]
は? 何? どこから声がした? 上?
「お前は・・・」
ちょっと? なんでここに戻って来た? 嘘でしょ?
[ナシェスの精神が最後まで壊れなかったのはティファのお陰だからな? 私にとっては煩わしい相手だったが]
「まさか、私の中に寄生していた奴か?」
「何故戻って来たの? せっかく自由になったのに」
凄く嫌な予感するんだけど?
あ、鳥の姿のままでいてよ? 誰かがここに来たら驚かれる。チェシャが二人もいたら、目が潰れると思う。
[それがな。この国をグルッと回って見てきたのだがな。つまらないんだ]
「「は?」」
[どいつもこいつも面白くない。それでメリルを思い出してな。会いに来た]
・・・・チェシャ。あんたの本質って今とそれ程変わってないんだね? つまらないって何なんだよ。
まぁ正確にはチェシャではないけどさ?
「で? 会いに来てどうするつもりなの? まさかチェシャと入れ替わるとでも?」
[別にそんな事をするつもりはないが、それも面白いな?]
「あのね?・・・」
「行く所が無いならここに置いてやったらどうだ」
「はぁ!? チェシャ? あんた何言い出すの?」
嫌だよ。私だってコイツの生態をよく知らないんだよ?
・・・・・あれ? あ、そうか。
「姿を変えていれば構わないだろう? メリルならそいつの事を調べられるのではないのか?」
「チェシャって、凄いね? 長年自分を苦しめていた物なのに、大丈夫なの?」
「それはコイツの生態であってコイツが悪いわけではないだろう。それに、きっとコイツが中に居ようがいまいが私は変わらなかった気がする」
そうかなぁ? そんな事は無いと思うけど?
[で? 私はどこに住めばいいのだ?]
「もっと小さい鳥に変化できる? 貴方の定位置は鳥籠の中よ」
まさか本当にチェシャと入れ替わる事になるなんて思わなかったよ。
しかも結構助かってるんだよね。
チェシャが光に包まれてその姿を消す瞬間、彼が飛び込んで来た時は驚いた。チェシャ、前もって彼に頼んでたみたいなんだよね。自分が居なくなったら、その間代わりになってくれるようにって・・・・。
私は、チェシャを探して迎えに行かないと。
だから私、その為にも手段は選ばない事にしたよ。
「私は世界一我儘な薬師になるよ。テットもシャミもテニアもそしてチェシャも・・・全て手に入れる」
誰か一人に絞るつもりなんてない。
最強の仲間を手に入れて、私はリディとこの国を復活させる。私は、欲張りでいい。
それぐらいで、丁度いいよね? デズロさん。




