テットはメリルの変化に気づく
この間テゼールさんにデズロ様から連絡が入ったっス。
どうやらチェシャはカスバールに新しく生まれる精霊を安全に迎え入れる為に妖精の光を体内で保護しているらしいっスよ? 最早人間業じゃない。
「う〜ん。なんか違うんだよなぁ」
今サウジスカル帝国でも大変な騒動が起こっているらしいっスから、デズロ様ともそれっきり連絡取れてないっス。
でも、サウジスカルの大樹はまだあるらしいから、それが消えるまでは探し回っても無駄みたいッス。だから、こうやって街で情報を集めつつ息抜きしてるんすけど・・・。
「あ。これはいいかも。うん」
さっきからメリルがずっと小物店の商品をぶつぶつ言いながら物色してるんだけど皆気づいたっスか?
そう。
実はこの人、生まれて初めて人に贈り物をするらしいっスよ?それも驚きだけど、その相手がまたお約束というか。
「いいのあったか? シャミにあげるんだろ?」
「あれ? テットまだ居たの? 離れてていいって言ったのに」
あのな。
俺メリルの護衛なんっスけど?
多々忘れるよな? 本当は離れちゃいけないっス。
「身につける物に拘らなくても良くないか? 好みもあるし」
「そうだけど・・・滅多にあげないし、手元に残る物をあげたい気分なの」
「・・・・気分、ねぇ?」
おかしい。
もう暫くメリルのシャミに対する態度がおかしいと思うッス。最初は笑ってやり過ごしてたっスけど、ここ最近の二人の様子は、ちょっと見過ごせないっスね。
メリル。
相手まだ10歳にもなってない子供だから。
まさか、本気で異性として意識してる、とか無いよな?
「・・・・これにしよう。コレ、プレゼントで包んで下さーい!」
「・・・・え? シャミにそれあげるの? ループタイだよね?」
「うん。これなら似合いそうだし、長く使えそうだから」
あんな子供にこんな物あげてどうするのかと思いつつ、実は俺は気がついている。
メリルが、成長した先のシャミを見ているのだという事に。メリルは、シャミの気持ちがこのまま変わる事がなければ、本気でシャミと夫婦になるつもりなんだって。
それなのに、そうしようとしているメリル本人が迷っている事も。
「良いなぁシャミは。俺もシャミになりたい」
「・・・・何それ。アンタだってそんな時期があったでしょ」
「・・・そういう事じゃなくて。俺もメリルに優しくされたい」
そんな驚いた顔しなくても。俺だって人の子なんだぞ?
「やめてよ。シャミで充分懲りた」
あれ? てっきりキツイ言葉が返って来るかと思ったんだけどな? メリル?
「あと、なんでテットもテニアもシャミと私が話してると邪魔しに来るの? 心配しなくても変な事するつもりなんてないけど?」
「俺もテニアもヤキモチ焼きだから? ご主人様に構って欲しいっスよ?たまにはね」
「ん? そうなの? そういうものなの?」
違う。信じるなよ。この子しっかりしてるようで抜けてる。もしかしてデズロ様の影響もあるのか?
「テットはどうやって構って欲しいの?」
「・・・・あ、いや。冗談だから。ウォンってするの止めてくれ。俺どこも悪い所ない」
「・・・そっか。ふ〜ん?」
いかんいかん。
メリルがシャミの前で頻繁に出す乙女顔を目撃して、俺もテニアも動揺のあまり、最近よく分からない行動をとっている。
もしかして変のは俺達なのか?
そんな気しないでもない。
「そういえば、リディ側は変化ないって?」
「そうだな。変化はないけど、かなり騒がしくなってるみたいだぞ? 強烈な婚約者達だもんな」
「ねぇテット」
「なんだ?」
考え込んで何だろな。
今度は何を企んでるんだ?
「暫くリディの所に戻らない? 」
「は? 何言ってんの?」
おっとー? 何やらこちらによく分からない振りが来たぞ?
メリルお前な。やっぱり俺の事、邪魔なんだろ?
「チェシャが狙われるなら、リディも狙われる可能性がある。ラフィネラも強いみたいだけどアンタの方が強いでしょ?」
「・・・・俺、メリルだけの騎士になるって言ったよな?」
「うん。私を守ってくれるんでしょ? ならリディも守って。この国がもっと安全になって、私達が生き残れる様に」
そういう事じゃなくてだな。
・・・・いや。無駄だな。
「短期間だぞ? リディ様にはお前から言えよ。俺は言わない」
「うん。ありがとテット」
まぁ、俺だってリディ様を護りたい気持ちは勿論あるから構わないけど、メリルから離れるのはいただけない。
「ん? なんだそれ? それもシャミに?」
男が付けるネックレスなんてシャミにはまだ必要ないだろ?さっきので充分だぞ? 甘やかし過ぎるのは良くない。
「いや? これはテットに」
「え? もしやさっき言ったこと気にしてるのか?」
「そうね。テニアにも何か買って行こう。さっき綺麗な櫛が売ってたんだ」
別にそんな物わざわざ買わなくてもいいのに。
ちょっと大人気なかったか?
メリルはそういうの気にしないと思ったんだけどな。
「あ、おじさんそれは、袋に入れなくていいよ! すぐ付けて行くから」
おーい! なんで俺だけ裸のまま渡されるんだ?
この扱いの差! 酷いな! やっぱずっとリディ様の所に居ようかな?
「えーと。あ、ちょっとあっちに行っていい?」
「いいけど。そっちは何も無いぞ? ただの空き民家の裏路地」
なんだなんだ?
足早に何処まで行くんだ? 人気もない場所だぞ?
「よし! 誰も見てないわね?」
アレ? もしかしてこんな所で調合するのか?
でも、手に持ってるのはさっき買ったネックレスと。
その瓶なんだ?
ピキッピキピキピキピキッ
瓶の中の金色の液体が中からゆっくり浮かび上がって結晶化したな。とても綺麗だけど、これ、ポーションと同じ原理で作ってるのか?
その形まるで宝石みたいだな。
ん? もしかして・・・・。
「出来た。テットちょっと頭下げて」
「え? いや、でも」
「さっさとして。人が来るかも知れないじゃない」
おい! メリル無理矢理頭引き寄せるな!
わかった。わかったって!!
「・・・・これ、なんだ?」
「お姉ちゃんのほど完成度は高くないけど、テット用に作っておいた秘薬の結晶よ。万が一、命の危険が迫ったらこれを使って。勿論、テット以外使っちゃ駄目だからね?」
・・・・・・・いつの間にそんな物。
秘薬ってそれなりに高価な物とか、手に入りづらい材料使うんだろ?いいのかよ、そんな物俺に使っちゃって。
「もしかして俺、今甘やかされてる?」
「 私は多分テット達には普段から甘いと思うけど? 嫌ならこんなに長く側に置かないし」
「俺が居なくなったら寂しいか?」
メリル、睨まないでくれ。
戯けてないと俺照れそう。
「当たり前でしょ? そんな事わざわざ聞かないでくれる?」
「・・・・・・・」
「・・・・テット? 何?」
あー。やだな。
離れたくねぇな。
理由はわからないけど、ずっと側で護りたい。
でもメリルはいつだって最善に近い選択をする事が多いからなぁ。
「メリルも、気をつけろよ。俺が居ない間に危険な目にあったら許さないぞ?」
「大丈夫よ。私強いし、今はお父さん達も側にいる。味方がいっぱいいるからね? でも、リディは違うから。私の代わりにテットが側に居てあげて」
「もし、前みたいな事があったら構わず宮廷を爆破しろよ。マリオーネ様もいるから思いっきり抵抗してやれ」
「あはは! ・・・・うん。そうする!」
俺は単純だなぁ。
こんな事で最近のモヤモヤが無くなるとか。
なんで俺達メリルの行動に一々振り回されてんだろうな?
これ以上思考を働かすのは危険な気がするから考えないけどな!
頭の隅にふと邪な気持ちが浮かび上がったのは、絶対気のせいだ! 気のせいだからな!!




