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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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メリルはシャミについて考える

残酷な描写あり

R15

昔、とても好きな子がいた。


その子は美しい銀色の髪に深いブルーの瞳。


その頃、私達は住む場所を何箇所かに分け、季節ごとに移動しながら暮らしていた。


その子は、ある村の近くで暮らしていた時に、その村で出会った男の子だった。


好きになった理由は、よく覚えていない。


多分、その子の母親が怪我をした時に私が治した出来事が彼と仲良くなるきっかけになったのでは? と、思う。


その頃、私はまだ今よりは可愛らしいカッコをさせられていた。毎日髪も整えていたし、それなりに可愛らしい女の子だった。


「メリルは本当に可愛いね。ティファはあんなに男勝りなのに」


お姉ちゃんは私が物心ついた時から男の子の格好をして過ごしていた。そして、デガルドさんと山を走り回っていた。凄いよね。5歳頃かららしいよ?


「でもお姉ちゃんとても強いよ? 私は羨ましい」


「えー? やめてよ・・・あんな風にはならないで」


私はまだ小さくて、その子の言っている意味が分からなかった。ただ、この子はスカートを履いている女の子が好きなのだろうとボンヤリと思ったのを覚えている。


彼は本当に私には優しかった。優しく見えた。

でも、妖精は彼には絶対に近寄らなかった。


「ねぇメリル。明日もここで会えるかな?」


「多分大丈夫。明日はお家のお手伝いないから」


お姉ちゃんは、この子の事を余り好きではないようだったから、私は無意識にその事を隠した。


それがいけなかった。それにその頃、男勝りな姉をネタによく村の子供達に揶揄われた。お姉ちゃんには何も言えない奴等がそれを私にぶつけていたのだと今なら理解出来ている。でも、その頃私にはまだそれすら理解出来なかった。


「お姉ちゃんの馬鹿!私が揶揄われるの全部お姉ちゃんの所為なんだからね!大っ嫌い!」


それもこれも全て仕組まれていたのだと分かったのは、事が起こった後だった。


その日、私は村の奥の大きな屋敷に連れて行かれた。


「さ、入って。お菓子を用意するから」


その時、初めてその子がその土地の領主の息子だったのだと知った私は屋敷に入るのを躊躇った。


何故なら、この屋敷に入った子供が二度と戻って来ないという噂を知っていたからだ。


「・・・・ごめん。入らない・・入ったら怒られるから」


嘘ではなかった。

お父さんもお母さんも、この屋敷に近付くなと私に言った。いつもならこんな村の奥まで一人で来ない。

来る用事がある時は必ずお姉ちゃんが側にいた。


「そうなの? 折角メリルの為に用意したのになぁ・・・残念」


気がつくと、私は手足を縛られて真っ白な空間の中に居た。


私の周りで慌ただしく妖精達が動き回っているのが見えて私はやっと自分が危険な状態に晒されているのだと実感した。そして、真っ白な部屋の扉を開けて入って来たのは、その子ではなく、その子の父親だった。


「おやおや。こんな可愛い顔に傷をつけてしまって・・・可哀想に。だがまぁやっと会えた。メリルだったか? 屋敷の中からずっと君達を見ていたよ?」


背後では表情が全く無いあの子が立っていた。

そこには苦しみも悲しみも喜びも何も浮かんではいなかった。彼は、ただそこにいた。


「・・・本当は、君の姉の方が好みだったのだが。彼女は化け物だ。私の手には負えないだろう? だから君にした」


あの子の父親は平然とそう言い放ち、私の服を引き裂いた。

私は怖がる事も泣く事も出来ず、ただあの子をジッと見ていた。


「綺麗な肌だ。やはり子供は良いなぁ・・・楽しみだ」


カスバールでは襲われた時とる選択肢は2つ。

殺されない様ジッと嵐が過ぎるのを待つか・・・。


ザシュッ


「そうですか。では、続きはあの世でどうぞ?」


相手が誰であろうとやられる前に殺るか。

私達家族は後者の人間だ。


私達は正義の味方じゃない。

自分達が生き残る為にそれを妨害する者達に容赦などしなかった。


「お姉ちゃん。どうして?」


「私嗅覚は鋭いので? ここには山もありませんし暇だったので。ここに入って行くメリルを見つけて突入しました。帰りましょう?」


「・・・・・お父さん・・・」


可哀想だ、なんて思わない。

この子は私を騙して危険に晒した敵だ。

私達家族を危険に晒した・・・害のある人間だ。

もう信じない。大丈夫だ。


「貴方の事、今日は見逃してあげます。でも、次私達に何かする素振りを見せたら皆殺しにします。仲間を呼んでも無駄ですよ? 私達強いので」


お姉ちゃんはその頃10歳。

それでも大人に負けない強さだった。


私も隠してはいたけど、本当は抵抗出来た。

でも、躊躇った。


「お父さん・・・お父さん!!あああああああ!!」


帰り道。私はお姉ちゃんに抱っこされながら顔を上げられなかった。怒られるのも怖かったけど、それよりも自分の気持ちを悟られる方が恐ろしかったから。


「メリル」


ただ。お姉ちゃんは一言だけ私に声をかけた。


「ごめんなさい」


その後も何度も危険な目に遭った。

でも、あの時ほど私の記憶に深く残っている記憶は無いと思う。その日私は誓ったのだ。私は、二度と誰にも恋なんてしない。あれは人の思考を駄目にする。

私はその所為で大好きな姉の手を汚させて、傷つけた。


だから、二度と誰にも心揺さぶられる事は無い。

家族以外誰も愛さない。





「メリル! 俺、メリル大好き!」


私は、なんて事をしてしまったんだろう。


シャミなら時間が稼げるからなんて安易な考えを口にするんじゃなかったわ。


子供だから大丈夫だなんて、馬鹿にしてるよね?


何でシャミの気持ちをちゃんと考えてあげなかったんだろう。


シャミが一生懸命貯めたお金で初めて買った物が(婚約者)へのプレゼントだなんて・・・・。


それを貰って本当は飛び上がるほど嬉しいなんて、とても口に出来ないよ。


「・・・・シャミ」


あの真っ直ぐな目で見つめられる度、私は思い知らされる。私は決してシャミの気持ちに応えてはいけないんだって。今の私にその資格は全く無いと思うから。


「ごめん」


私は誰にも恋しない。私は、恋しちゃいけない。

このまま誰のものにもならず一人引きこもって薬を作り続ける。そうやって死ぬまで静かに暮らして行く。


シャミにそんな気持ちを抱いてはいけない。


私は絶対誰にも・・・・恋なんてしないんだから。

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