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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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エピソード3 エルハドとリディ

エルハドはアトレイア以外には基本優しいです。

「父が、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。無理矢理頼み込まれたのでしょう?」


「・・・デズロの望みでもあったからな。済んだことだ。リディが気にすることではない」


この方は父がこの国を統治していた頃ずっと我々の敵だった方だ。


だが、私はこの方をずっと尊敬していた。

この方は、我々がどんなに戦を仕掛けようと自ら我等を侵略しようなどとはしなかった。


恐らくそこにはデズロ様をこの国から奪ったという事への罪滅ぼしも含まれていたのかもしれない。


だが、和平交渉にも応じず、いつまでもサウジスカルを攻撃し、最後はデズロ様の娘にまで害を成した我々をこの方は結局許した。


ただ一人を除いて。


「お前も大変だな。子供の様な親を持つ子供の気持ちをもう少し理解して欲しいものだ」


私は、この人の気持ちがよく分かる。

私も父に同じ気持ちを抱いているからだ。


「・・・少なくとも、エルハド様は分かって下さっております。それだけでも、私の気持ちは救われておりますよ」


「・・・・相手が私では意味がないだろうに。全く」


同じ立場でありながら片方は名君と名高いサウジスカルの皇帝陛下。そして、もう片方は、国の為にならない戦を繰り返した愚王だ。


サウジスカルの国民が心底羨ましい。


「私はリディが心配だ。お前は今、昔の私と全く同じ状態に陥っている」


「・・・・そうなのですか? それは、メリルの事ですか?」


「そうだ、私はリディでデズロはメリルだ。目的も状況も良く似ている。やり方もな・・・だからこそ、心配だ」


そうだな。


エルハド様も無理矢理デズロ様を攫った事になってはいるが、デズロ様の願いを極力叶える事で何不自由なくデズロ様が過ごせるように配慮していると聞いている。


よく考えたら、同じ状況になりつつある。


「私はデズロとは幼馴染だ。だから今まで何とか上手くやってこれた。だが、お前達は違うからな。逆にその方がいいかも知れないが・・・・」


「どういう事でしょう?」


「私達は立場上、誰か一人を特別扱いする事は本来許されない。だが、私はデズロをずっと特別扱いして来た。堂々とな。サウジスカルの為にアイツは必要なのだと皆を納得させた。だが、それでも反発は今でもある。私はデズロを守る為に何でもした。そしてデズロも私を守った。そうしているうちに、私達の関係性はおかしくなったような気がしている」


確かにエルハド様とデズロ様の関係はよく分からないと私も思う。友人にしては近過ぎるが、家族というにも違和感がある。だが、お互を強く大切に想っているのは理解出来る。


「時々考える。デズロがサウジスカルから解放されて私の側から居なくなった時、私はどうなるのかと」


これは、とんでもない告白を私は聞いているのではないだろうか? エルハド様、無自覚ですか?


「いつか、メリルを此処から解放してやりたいと思っているのであれば、その時のことを予め考えておいた方がいいぞ。私は、その作業を蔑ろにしてしまったからな。私が近いうち直面するかも知れない問題だ」


「そのまま、デズロ様に側に居て頂くという選択肢はないのですか?」


「・・・デズロが望めばな。だが、拒否されれば・・・それを止める術は私にはないからな」


確かに、きっと私もそうだ。

私もそんな日が来た時、メリルに拒否されれば彼女を側に置く事は叶わないだろう。


本気で逃げられたら私ではメリルを捕まえる事は出来ない。エルハド様も同じだろう。


「私達と違い、お前とメリルは男と女だ。間違って好きにでもなったら、後が辛くなるぞ。その事は胸に留めておいた方がいい」


「そうですね。ですが、私はこの国の為にいずれ妃を迎えなければならない身です。それがメリルではない以上、そんな心配は起こりません」


「ならば、迎える妃はお前の愛する者にしろ。そして出来れば、相手もお前を愛してくれる女を選べ。決して、打算で伴侶を選ばない事だ」


それは、中々難しいな。

皇妃に相応しい素養を持ち合わせている者はそう多くない。その相手とそんな都合よく相思相愛になれるとは思えない。そもそも、私があまりそういう事に興味がないからな。


「ご助言ありがとうございます。考えておきます」


「いや、余計な事を言ってすまない。帰ったら次の支援物資の輸送の件について連絡する。あちらもオスカールと揉めているから、少し遅れるかも知れないが」


「お気になさらないで下さい。ライスベガの件はどうです? 本当に、大丈夫なのですか? 確かに味はいいですが、魔物を輸送されて皆驚いているのでは?」


「いや、全く。むしろ喜んでいるらしいぞ? 涙を流して」


サウジスカル国民はやはり変わっているな。

流石エルハド様が治めていた国。


逞しくて何より。


「どうか、お気を付けてお帰り下さい。エルハド様カスバールにお越しいただきありがとうございました。国が落ち着いたら、今度は私が其方に如何っても?」


「勿論だ。お前なら私の息子達とも仲良くやれるだろう。その日が来るのを待っているぞ」


ええ、必ず。


必ずメリルを連れて其方の国へ行く。

それが可能なぐらい、この国を立て直してみせる。


・・・ところで、エルハド様は本当にデズロ様とは何も無いのだろうか? 正直今なら恋人だと言われても、私は驚かない。と、いうかアレで何も無いとか言われる方が物凄く信じ難い。


いや、もう愛人でいいと思いますよ? エルハド様。

それで側にいてもらえば、いいのではないですか?


・・・・・いや、無茶か。それは失礼した。

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