テニアは後悔する
「あ! じゃあさ! テニア私と婚約しない?」
メリル様にそう尋ねられた時私頭が真っ白になってしまったのです。
まさか、メリル様からあんな事言われるなんて思いもしませんでしたので。
「え! わ、私ですか?」
「うん! テニア私の事嫌い?」
更にそんな事を重ねて尋ねられて、思わず拒否してしまったのはきっと、自分の中にメリル様に対するやましい気持ちがあったからですわね。
いつもの様に冷静に、表面上だけの関係として受け入れれば良かったのです。
そうすれば、こんな事にならなかったですのに。
「メリル、俺メリルの事大好き。メリルも俺の事好きになって」
最初は笑って見ていたのです。
皆笑って微笑ましいと思っていましたわ。
でも、私は直ぐにそうではないと気付きました。
明らかにメリル様の様子がお変わりになられたので。
「う、うん。大好きだよ? 」
メリル様はシャミが本気なのだと直ぐに分かったのですわね? だから皆が笑う中一人真っ青だったのですわ。
でも、一番の誤算は・・・・メリル様が、シャミと真剣に向き合おうとしている事ですわ。
「シャミ? この前も話したけどね、私はシャミを子供じゃなくて男の子としてみるって言ったよね? だから、前みたいに一緒にお風呂に入ったりベットで寝たり・・・キスも、前みたいにはしないの。大人の男女は夫婦になるまではそういう事、しないから」
「うん。でも、恋人なら手を繋いだりくっついても良いんだよ? キスもしていいって聞いた」
一体誰がそんな事をシャミの耳に入れやがりましたのかしら? 今すぐ薬草畑の肥やしにして差し上げましょう。
「そうだね。でも、私は結構恥ずかしがり屋さんなの。だから、私がいいって言った時だけにしてくれる? 私もそうしたい時シャミに聞くから」
「分かった! ちゃんと聞く! メリルチューしていい?」
「・・・・・・・・・・・・・頬ならいいよ」
何故、私はあの時メリル様を受け入れなかったのでしょう? そうすれば少しややこしくなったかも知れませんがこんな面倒な事になりませんでしたのに。
メリル様に付け入る隙があるのだと分かっていたら、絶対に断ったりしませんでしたのに。
「おーいシャミ? こんな真昼間から女の子にチューチューしたら駄目ッス。夜寝る前のチューで我慢しときなさい」
テットもやっと気付きましたわね。
少し前まで笑って見ていましたのに、最近は笑顔の目が全く笑ってませんもの。分かりやすいですわ、あの男。
そして、遅い!!
「夜は駄目だってメリル言ったよ? だから、今求愛してる」
・・・阿呆が。
貴方まだシャミが子供だからと何処かで侮っていますわね? 確かにシャミは子供ですわ。今の段階では間違いは起こりませんわ。ですが、メリル様がシャミを完全にそういう対象に分類したのですわ。それが、問題なのです!!
テット絶句しておりますわね?
そうなのですわ。メリル様、シャミを意識しまくりなのですわ!! テットや私より、メリル様の中でシャミは一歩、二歩先を行っているのですわよ! 情けない!
「・・・・メリル様、ちょっといいッスか?大事なお話があるので・・・」
「え? ああ、うん」
「二人で行くの? 俺も行く」
シャミは絶賛成長中で、今沢山の知識や経験を吸収しております。そして、その成長具合は日に日に増しておりますわ。今まで与えられなかった分、それを補うかの様に。
「いや、シャミには聞かせられない話なんッス。少しだけ待っててくれないッスかね?」
「・・・・そうなの? じゃあその間、メリルには触らないで」
本当に。数日前まで皆仲良しなどとくっついていた子供が、なんて目でテットを見ているのでしょう。
「あのなぁ? 俺はメリルの護衛ッス。全く触らないのは無理ッスよ? 抱えて運ばなきゃならない事もあるっすから」
「じゃあ、それ以外では触っちゃ駄目。婚約者以外の男の人に触らせたら駄目なんだよ?」
「あ、あのさ? 二人共ちょっと落ち着いて? シャミ、どうしたの急に。テットはそんなんじゃないでしょ?」
鈍い。メリル様は恋愛関係に対して余りに鈍すぎる。
テットもシャミも微妙な顔しておりますわ。
皆年齢も立場もバラバラですので、側から見たら分かりませんが、これを普通の男女三人の場面に置き換えてみて下さいませ。・・・見事なトライアングルフォーメーション。そして私を加えたらラブスクエアの完成ですわ!!
「何だ? お前達こんな所で何を呆けている? シャミ、今日は出掛けなくて良いのか?」
「あ、チェシャ。うん! チェシャも行く?」
あら? シャミの表情が変わりましたわ? 少し場が穏やかになりましたわね? 空気読めない者が来ると場が緩むとは本当なのですわね?
「どうせ暇だからな? 構わないが・・・喧嘩でもしていたのか? 珍しいな? いつも能天気にヘラヘラしているだろうに」
「アンタに言われたくないっすね? 牽制されたんすよ。メリル様はシャミの婚約者ッスから? 近づくなと釘を刺されれた所ッス」
「ちょっとテット? アンタ何言って・・・」
そういえば、チェシャは詳しい事は知らないですものね?
しかし、驚いた様子ではなさそうですわね?
「・・・シャミ、行くぞ。心配などしなくともその二人はどうにもならない。テットはお前のライバルにはならないぞ」
「そうなの?」
ちょっとお待ちなさい?
チェシャ? 貴方シャミに一体何を言うつもりですの?
「お前のライバルはリディだ。シャミ、大人に惑わされるな。本気でメリルが欲しいのなら、私の様に間違えてはならない」
「ちょっとちょっと・・・」
「お前はメリルに利用されたのだ。リディとの婚約を避ける為、するつもりもない結婚の約束をさせられた。分かっているな?」
「「「え?」」」
チェシャ? 今、なんて仰いました?分かっているな?
ど、どういうことですの?
「・・・・なんで言う? 酷いチェシャ」
「・・・シャ、シャミ?」
「俺それでもいい。メリルと結婚する。俺メリルの事好き」
なんですってぇええええ!!
え? では、全て理解した上で? 理解した上でのすっとぼけてメリル様に求愛していたと? こ、このガキ・・・やはり私の最大のライバルは、ライバルは〜!
「・・・・・・・あぅ」
シャミでしたわ!!
メリル様見事に真っ赤ですわ!
ダァーーーーー! 私の馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!! 大馬鹿者!
誰か時間を戻して下さいませぇ! そしたら名指しされた瞬間勢いよく手を挙げますのにぃ!




