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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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戸惑うおっさん達その1

「シャミと正式に婚約するそうです」


「「「・・・・・・・」」」


しまった。


何か手を打って来るかと思ってはいたが、まさかそう来るとは。


メリル様はなるべく長い間時間を稼ぐつもりだな。

やはり我等の企みに気が付いていたか。


「まぁ、相手は子供ですからな。どうとでもなるでしょうが・・・それに、下手な相手に求婚され連れ去られるよりもこの展開の方が私達にとっても安心だ」


そうだな。


私達は良からぬ者がメリル様を拐かしてここから連れ出すのを恐れている。それを防ぐ為リディ様の婚約者にしてしまおうと目論んでいたのだが、まぁ、バレるとは思っていた。そもそも本当にリディ様と結ばれてしまったら困る。

アレがカスバールの皇妃とか困る。


「アレ? リディがいない所で集まって何なに〜? 作戦会議?面白そうだね〜?」


げぇ! 何というタイミングで現れるんだ。

いつもは探しても逃げ回っておいでなのに、今日は、お一人なのか? 珍しい。


「丁度先程早朝の政務が終わったのです。お一人ですか?珍しいですね?」


「うん? エルハドがマリオーネにこき使われている間にコッソリ抜けて来た。直ぐ戻らないとエルハドに叱られちゃうから、少し散歩したら戻るよ〜?」


この方も相変わらず掴み所がない方だ。

だが、不思議とデズロ様がその場にいらっしゃるだけで安心する。何処かで私達は未だこの方に何か期待をしているのだろう。もう、この方はカスバールの人間ではないのに。


「そういえば、私が提案したお話、考えて頂けましたか?」


「あー? 僕にいい男を紹介してくれるってアレ? アニラよくそんな相手探して来るよねぇ? 一つ気になったけど一様に皆マッチョなのは何でかな?」


え? なんの話だソレ。アニラ殿? 貴方何故勝手な行動を?

皆知らなかったみたいだが?困惑顔で顔を見合わせているぞ。


「 ああいうのがお好みなのかと。エルハド様程の驚異的な強さはありませんが若いので満足して頂けるかと?」


「う〜む? 何にかな? 僕は何に満足しちゃうのかな?」


「ちょっとお待ち下さい? アニラ殿、先程からとても穏やかではない内容のお話をされているようですが・・・まさか、デズロ様に変な事仰られてないですよね? 」


「エルハド様もご一緒にいらっしゃられてるのですよ? 軽率な行動は命取りになります。おやめください」


アニラ殿は穏やかそうに見えて唐突に大胆な行動をとる事があるからな。悪気は無いのだろうが・・・。

今またサウジスカルと関係がこじれるのはとても困る。


「何を仰います。エルハド様にはちゃんとした正妃がおられる。恋人を作るのであればエルハド様ではなくても良いではないですか。そもそもデズロ様に失礼では?」


「・・・・それは、デズロ様がお決めになる事なので私はなんとも・・・」


そもそもお二人は本当にそういう関係なのだろうか?


その辺りが未だハッキリしない。

だが、可能性は無いとは言えない辺りがややこしい。


「うーん? でもね、僕別に特別な相手はいらないや。ここでそんな相手作っても後々面倒だしね? エルハドの奥さんとも上手くやってるから心配しなくても大丈夫だよ?」


「そうですか。それなら良いのですが・・・気が変わりましたらいつでも仰って下さい」


「うん! エルハドに飽きたらお願いするー!」


なんだこの会話は。

酷い。揃いも揃っていい大人が話す内容がコレか?

出来ればもっと実りのある話をしたい。


「それにしても、今更ながら変な気分です。こんな風に私達が集まって話をするなど、しかもデズロ様までその場におられる。・・・・なんだか不思議な気分になりますな?」


そうだな。

あの頃、私達がこんな風に集まり話をする事など恐ろしくて出来なかった。こんな所を見つかりでもしたら、その日のうちに在らぬ罪で首を斬られる可能性があったからな?


「・・・・・・・・デズロ様。ずっと、お聞きしたかったのですが、貴方は本当に無理矢理彼方に連れ去られたのですか? 」


「やめないか。もう、終わった事だ。アトレイア様もリディ様も、もうデズロ様を連れ戻すおつもりはない。余計な詮索は失礼だぞ」


こんな事を口にしているが、私も皆も真実が知りたいと思っている。


あの日、あの謁見の間で一体何が起きたのか。


だが、アトレイア様はその事を詳しくお話しにならなかった。


ただ、ベルシャナ様は自ら暴走し、自殺したのだと。


その隙にデズロ様はサウジスカルの皇太子に連れ去られたのだと言った。そして、デズロ様を取り返すと。


「知ってどうするの?」


「・・・・それは」


「君達はさぁ、あの中で必死に生き残って、今ここで生きている。その為にどれほどのものを犠牲にしてきたのかな?」


「・・・・・・・」


「それをわざわざ思い出させて欲しいの? 何? 昔が懐かしくなっちゃった? 変わってるねぇ? あの地獄の日々をもう一度思い出したいなんて。僕は君達みたいなマゾヒストじゃないから、そんな事はゴメンだなぁ」


私だってゴメンだ。

だが、忘れたくとも未だに偶に夢に出てくる。


泣きながら私の足に縋り付き助けを求める者達の夢を。


「・・・・・それとも、連れ去られた後の僕の事、心配してくれたのかな? 僕がエルハドにベルシャナにされたような事されたんじゃないかって? あはは!!」


「デズロ様・・・・」


「は・・・・・・僕も君達も同罪なんだよ? そんなだからアトレイアはこの国を立て直す事に失敗したんだ。いつまでも被害者ぶって、ベルシャナ一人が悪いと思っているんでしょ? そうだね? アイツは本当に最悪だった、だけどさぁ? じゃあなんで君達誰も止めなかったの? この国の官僚だよね? 皇帝の間違いを正す立場なのにさ? 分かってるよ? 殺されるのが嫌だったんだよね? 逆らって自分が今まで築き上げてきた物を奪われるのが嫌だったんだね?」


違う。


確かに最初はそうだったかもしれない。

だが、あの方には誰にも逆らえなかった。

あの方は、完全に狂っていた。


「僕はサウジスカルに行って分かったよ。国を治めるとはどういう事かを。君達は、自分のすべき事をしなかった。全てをベルシャナに押し付けて、目を閉じ耳を塞いで嵐が去るのをただ蹲って待っていた。もっと早く動けば止める手段はいくらでもあった筈だよ」


こんな事を言いながら、何故貴方はそんな風に優しく微笑んでいるのだろう。私達に腹を立てているのではないのか?


「同じ事を繰り返すつもりなら、ここから離れた方がいい。今のカスバールに、そんな人間は必要ないもんね?」


「私達では、カスバールの再建など、無理だと?」


「・・・・少なくとも、未だに僕に気を取られているようじゃねぇ? もう引退でもしたら? サウジスカルでは若い子が国を支えているよ? 頭の固いおっさんは、さっさと身を引かないとね?」


確かにサウジスカルの官僚や政務官達は皆若いが、逆に若過ぎる。無茶を言わないで頂きたい。


「申し訳ありませんでしたデズロ様。余計な事は考えず、この国の事だけに集中致します」


「そ? まぁまだ頑張るなら止めないけどぉ? 楽しいのになぁ。隠居生活」


全く隠居してませんがね?

あと、もうそろそろ帰らないとマズイのではないでは?


貴方の姿が見当たらない事にエルハド様が気付く頃だ。

エルハド様は、一体どうしてこの方にこんなにも執着しているのだろう。貴方は今私達に釘を刺したが、私は貴方達がここに来てお二人の様子を見ていて疑問が湧いたのだ。


サウジスカルには一体どんな秘密が隠されているのだろう。

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