フィクスは本気である
「改めまして。私はサウジスカル国の騎士フィクス・ヴァンディルと申します。今回ベロニカの付き添いとして同行致しました」
「よく参られた。我々はあなた方を歓迎する。所で、付き添いと申されたが、君はベロニカの護衛としてついて来たのか?」
この宮廷に足を踏み入れ、ベロニカに話をかけようとした男は確認済みだ。
ちょっとベロニカさん?
想像以上に多い数だったんだけど? 君、本当に大丈夫だったんだろうね?
「いいえ。私は・・・彼女の婚約者として同行致しました。命の危険が迫っている事もあり、特別な許可を得て今回同行させて頂いております」
ガチャーーーーン
「ん?」
「ハッ! 申し訳御座いません!」
・・・・・ここにも一人、明らかに動揺した男が。
おい、アイツこの国の騎士なんじゃないのか?
「婚約者と申しましても、既に私達は恋人です。明日にでも婚姻出来る関係ですので部屋は同室でも構いません。寧ろそうして頂けると助かります。夜、突然発作が起こるとも限りませんので」
「何処かで聞いたような展開だが、構わない。ベッドは一つか?」
「別々で構いません!! 私、病人ですので!!」
ッチ! おっと、いけないいけない。
思わず態度に出そうになった。気を付けないと。
でも、明らかにホッとしたあの男が気に入らない。
アイツ後で調べないとな。何か行動を起こしそうだ。
「では、部屋に案内させよう。そちらのお二人は一度別室へ案内してもいいだろうか?」
「はい。メリルも来るか?」
「ううん。私は、フィクスさんの話が聞きたいから」
うんうん。なんだ、ティファと上手くいってないみたいだったから心配だったけど、素直ないい子じゃないか?
ティファ、なんで上手くいかなかったんだろうな。
いや、家族だからこそ、分かり合えない事もあるか。
「ベロニカ、行こうか?」
ん? 何固まってる? ほら、ちゃんと俺の手を取って。
そうそう。ちゃんとエスコートするから。
「・・・あ、あの。フィ・・・フィクス」
「大丈夫だよ。心配しないで、俺がついてる」
ベロニカ、ガチガチだね?
ここに来てからヤケに俺の事、意識してない?
それとも、周りの目線が気になってるのかなぁ?
さっきから睨んでる、でかい奴とか?
「あ、あまり人前で、その、くっつかれるのは・・・」
「なんで? いつもは平気だろ? 気にしすぎだよ」
「あっ!」
本当にどうしたんだろうな?ベロニカ動揺し過ぎてフラついてるな?これは、しょうがないよな?
「きゃ!!」
「やっぱり疲れてるんだな。部屋まで俺が運ぶ」
凄く恥ずかしそうな顔だけど抵抗は許さない。
俺は理解した。状況を理解した。ティファ、君、大変だったね? この子の事守るの、苦労しただろうなぁ。
俺ベロニカがティファに一方的に振り回されてるって思い込んでた。大いなる勘違いだった。
ティファの人外の強さに、今はただ感謝しかない。
「なんか、絵本に出てくる王子様みたいね。フィクスさんって」
「よく言われる。良くも悪くもお決まりのイメージらしい」
「へぇ?見た目がいいのも考えものだね」
この子面白い子だな。
ティファもベロニカも俺の見た目に騙されなかったけど、この子はそのもっと先を見抜いている気がする。
「君のお姉さんは俺の見た目に騙されなかったよ? ベロニカもだけど」
「え? わ、私?」
そうだよ。君、全然俺に興味無かったよね。
俺ばかり君を追いかけてて正直、面白くはない。
「そ、そんな事ないけど。最初見た時、綺麗な人だと思ったわよ」
「・・・・・・綺麗な人? カッコイイではなく?」
「・・・・そ、そう表現する人も、いる」
俺ね。これでもかなり我慢してきたのでは?って思うんだ。彼女の事が本気で好きなのだと自覚してから、俺の意思などは関係なく日に日に膨れ上がるこの想いの持って行き場がなくて俺は困り果てているんだけどね?
今更ながら今絶賛恋愛中の俺の親友の気持ちがよく理解出来ている。こりゃ辛い。
「あのさ。やっぱり私の用事は後にしようか?」
うん。この子聡い。でも、無理。
「ううん? お願いだから一緒にいてくれる? じゃないと俺も我慢の限界を突破しちゃいそうだから」
「・・・そう。これは、サッサと身体を治した方がいいみたいね?早速診てあげる」
「な、なんなの? なんの話なの? フィクス? 分かるように説明して!!」
「うん。治ったら教えてあげる。治ったらね?」
実は俺、ここに来る事を決めた時、全てを捨てる覚悟でサウジスカル、出てきたんだ。だからベロニカ、今は我慢してるけど、体が完全に治ったら遠慮、しないからな。
というか、即刻治してくれ!!もう待てない!




