公爵令嬢は納得出来ない
「濡れ衣で御座います」
こんな筈ではなかったのに。
そもそも何故あの事がこんなに早く公になったりなど?
身分を弁えない愚かな小娘も少しお仕置きをして、痛い思いをすれば、目も覚めるだろうと雇ったあの男達・・。
早々に現場を押さえられ、しかも私の事をアッサリと口にするなど、あり得ませんわ。
「私はつい先日こちらに来たばかりで御座います。お会いした事も無い方に、その様な乱暴な真似をしろ、などと申したりは致しません。酷いですわ、リディ様」
そもそも何故リディが皇帝などに。
私はずっとナシェス様の妃になる為、努力して来ましたのに。貴方のような平凡で何一つ秀でるものがない人間が皇帝など、相応しくありませんわ。
「そうか? では、賊が嘘を申していると、貴女は言われるのだな?」
「きっと何者かの差し金でしょう。私はよく思われていないようですので」
とにかく、今はこの危機を脱しなければ。
もっとしっかりと下調べをしてから行動すべきだったわ。
メリルとかいう女。私が思った以上に厄介な女かも知れませんわね。
「・・・・成る程。おい、その賊をここに連れて来い」
「はっ!」
え? あんな野蛮な男達をここに連れて来るつもり?
一体何を?
「へ、陛下。お許し下さい・・・俺は本当に・・・」
「この中に、お前を雇った者がいるか? いたら正直に言うがいい」
え? ハッ! い、いつの間に私以外にも人を謁見室に・・・けれど、あの男は、私の顔を知らないわ、きっと大丈夫・・・・。
「あ・・・あの男です! あそこにいる男に雇われました!」
「私は・・・・・」
え!? ど、どうして私の従者がここに?
従者が謁見室に通されるなど聞いてないですわ!
「成る程? 一度しか尋ねぬ。お前がこの男を雇ったのか? 何故だ?」
「・・・・・申し訳ありません。全て、私が勝手に行った事。お嬢様は何も存じ上げませんでした」
「ーーーーーなっ!!」
何故そんな事を?
それでは私が疑われていまうし、お前は何も知らない筈!
「・・・・そうか。お前は知らぬかも知れないが、メリルはこの国にとって、とても大事な人物だ。彼女がカスバールの生命線であると言っても過言ではない。彼女の身を守る事は厳守されるべき項目で彼女の命は私の命よりも重い」
え? 今この男はなんと言ったのです?
皇帝である自分より小娘の命の方が重い?
そんな、馬鹿な。
「お前も気付いているだろう? ここ最近のカスバールの変化、それは彼女の魔力の恩恵がもたらすものだ。今もなお、彼女はこの国の為に働いている。お前達の下らない嫉妬心で起こしたこの不祥事で、どれだけの人間の命が危険にさらされたと思う? お前達は犯した罪の重さに全く気がついていない」
「そ、そんな・・・・そんな事が・・・」
「二度はない。私は彼女を害す者は容赦しないが、お前は見込みのある男だと知っている。だから、今回だけは見逃してやる。だが、マチェスタ」
ちょっ・・・ちょっと? どう言う事?
あなた、まさかリディと知り合いだったの?
たかが従者の分際で?
「主人はちゃんと選んだ方がいい。次は殺すぞ。迷いなく」
ザンッ!
「ひっ!!」
「リディ様!!」
な、なんて野蛮な・・・こんな場所で剣を抜くなど・・・ほ、本当に。あんな方でしたなんて・・・。
「その男を連れて行け。もう用はない」
「ま、待ってください! 俺は本当にや、雇われたから仕方なく・・・」
それに、なんてお顔。
あの方でもあんな顔をする事があるのですわね。
「・わ・・・私には、何も仰らないのですか?」
何を言っているの?
黙っていればそれで終わったのに、何故私は。
「・・・・・私は人形相手に話しかける趣味はない。そんな事をするのは、幼い子供だけだ。話の通じない相手も同じ事。もう私の用事は済んだ。下がれ。そして二度と私の目の前に現れるな」
「・・・・・・・・・信じては、もらえないのですね?」
お前達兄弟は揃いも揃って私を侮辱して、覚えてらっしゃい。
「私が信じているのはメリルただ一人だけだ。お前と違ってアレは嘘をつかない。私が今、妃を娶る可能性があるとしたら真っ先に彼女の名を挙げる。野蛮で無礼な女でも、お前よりはまともな妃になるだろう」
覚えてらっしゃいディムレムの一族。
一度ならず二度までも私にこんな態度をとって絶対に許しはしない。こんな事で私は諦めない。
また再び此処へやって来る。
そして、お前達を引きずり下ろし破滅させてやる。




