テットは不安である
「メリル様は一体何を考えておられるのだ! よりにもよってナシェス様をペットになどと!!」
「今すぐ離宮に戻した方がよいのでは? それに、メリル様に何かあったら大変です」
そうっすね。
俺もそう思います。思うんっすけどね。
「・・・・メリルはナシェスを助けた様だな? 何故メリルはそんな事を? テットは何か聞いているか?」
はい。知ってます。
でも、ここでは言えないし陛下にも俺の口からは言える内容じゃないっすよ。あんな事・・・・・。
「いい? この事はまだ誰にも言わないで。リディには私から直接説明する。デズロさん達にも。症例が少ない上に私はその寄生虫を見逃してしまっているから、皆混乱して大騒ぎになる可能性があるでしょ? 」
「・・・・・そ、そんな物がほ、本当に存在するのですか? ひ、人に寄生し人に姿を変えるなど・・・」
「実際この目で見てるからね。私達も一度目は驚いて襲いかかってきた寄生虫を殺してしまってるしね」
ゾッとするッス。
よくもまぁそんな気持ちの悪い物を自分の孫に寄生させたもんッスよ。胸糞悪い。
「暫く私はチェシャに付きっきりになる。その間なんとかチェシャの事隠して欲しい。チェシャを取り返したい奴等が押し掛けてくると思うけど絶対応じないで。ここだけの話チェシャは、この国に無くてはならない存在なのだと思う」
いやいや。何故そうなる。
またコレは、リディ様が荒れそうだ。
「チェシャは恐らく私達と同じ。妖精が視える筈なの。チェシャには何か重大な役割がある。ここまで無事に生き残ったのは妖精が彼を守っていたからなのよ。余りに彼等が騒ぐからおかしいと思った」
「・・・・あの、そのチェシャって呼び名何か意味があるんッスか? 最初はあの人を揶揄う為だと思ってたんすけど・・・違います?」
「あれは妖精達が付けた彼の愛称みたいなものよ。シャミの名もそう。その名が彼を守護してくれる。彼等が人間に名前を付ける事など基本的には無い。彼等に名前を付ける又は付けられる事はある種、誓約と同じくらいの加護がある。それだけの価値がチェシャにはあるのよ」
まさかあの勘違い皇子にそんな秘密があるなんて。
それじゃあ本当にチェシャの面倒をメリル様が見なきゃならなくなるじゃないッスか。それは、気にいらねッス。
「あの人の面倒をメリル様が見るんッスか?」
「そうだよ? 私以外誰が見るの?」
即答ッスね。
貴女面倒事は嫌いとか言ってませんでしたっけ?
たまにヤル気フルゲージなのはどうしてッスか。
「何? 不満なの?」
「・・・・リディ様が不安になるのではないでしょうか? メリル様がチェシャを守れば自分に牙を剥くやも、と勘違いされる可能性はありますわ」
「あはは。リディってチェシャの事苦手そうだもんね? でも、コレは国事よ。理解してもらう。私を巻き込んだのはリディなんだから、今更手を出すなと言われても無理だわ」
割り切ってるっすね。
それが出来れば皆、苦労しないッス。
「チェシャの心が安定するまで私は側を離れられない。救いは・・・アレを埋め込まれたのが人格形成される前の赤子だった事かな」
「どういう事ッスか?」
「長年積み重ねたものを壊されるのと、何も出来上がっていないものを壊されて育たないのでは、大分違う。前者の場合は致命傷だけど、後者なら間に合う可能性があるもの。チェシャは当時幼過ぎて、自分が何をされたのか理解出来ていなかった。当時の記憶を視て、かなり取り乱したもの。自分が何をされたのか、やっと理解出来たから」
怖いッス。
もし、自分が知らない内に身内にそんな事をされていて、今更その事実を知らされたら、俺はどうするッスかね?
「メリル!! 来てー!」
「いけない、目を覚ましたみたい。二人共お願いね? もし、私が行くのを待てない様なら、ここに来て欲しいと伝えてくれる?」
「分かったッス。伝えておきます」
「あ、あとさぁ〜・・・一応これも伝えておいて。一応ね!」
「・・・・何も、聞いてないですが。伝言はあるッス」
メリル様かなり恥ずかしそうに言ってたっすよ?
ちょっとだけコイツ可愛い奴だなって思ったッス。
ちょっとだけッス。
あ、耳貸してください。
「私はリディの味方だって、わかってるよね? だ、そうです。詳しい事が知りたければ、こちらの屋敷までお忍びでお願いします」
お? 俺がリディ様に耳打ちしたら反応した奴がいるっすね? へぇ・・・・? ちょっと俺の予想が外れたな?
「・・・・当たり前だと伝えて欲しい。・・・テット」
「はい。・・・分かっております」
メリル様だけに負担をかけるのはフェアじゃないッス。
メリル様の邪魔はしないッスよ?
俺は、メリル様を信じてるッス!
信じてますから・・・チェシャと毎晩同じ部屋で寝るとか言っても。
・・・俺、取り敢えずドアの外で待機していいッスかね? あ、駄目ッスか? 邪魔ですね? はい。
すごい不安!!




