尚書官の企み
面倒な事になったな。
まさか今になってデズロ・マスカーシャがカスバールを訪れるとは。
「デズロ様はあの様に仰られていたが、本当にそうなのだろうか? また、無理矢理囲われているのでは?」
「その可能性はなくは無いが・・・今の所はなんとも言えないな」
そんな事はどうでもいい阿呆共が。
問題はデズロがここへ何しに来たかだ。
まさか、ナシェスの様子でも伺いに来たのではあるまいな?せっかく順調に洗脳出来ていたのに、あの女、ティファの所為で計画が破綻してしまった。
今、一からやり直しているというのに。
そもそもリディが後を継ぐなど全く予想もしていなかった。
アトレイアめ。あれ程ナシェスに後を継がせると言っておきながら直前になってリディに譲りおって。お前の気まぐれのお陰でこちらは大損だ!
大金をはたいて連れて来たナシェス付きの奴隷もサウジスカルに捕らえられてしまい、取り戻す手段もない。
やはり付けた奴隷が幼過ぎたのがいけなかったか。
だが、ナシェスがあの二人以外を受け付けなかったのだから、仕方がない。
「しかし、このタイミングでデズロ様が我らの国へお越し下さるとは・・・メリル様がいらしてから国政も徐々に安定しておりますし、各領地から実りも増えたと・・・良い事づくしで少々不安ですな」
「そうですな。ここで気を緩めず現状を維持出来るよう対策を練って行かなければ」
対策とはなんだ?
お前達がしている事と言えばあの小娘に媚びへつらい頭を床に押し付けているだけではないか。
お前達は昔からそうだ。
無能で自分達では行動を起こせない。
ただ、粛々と陛下の言いなりになっている。
私はもうごめんなのだ。
今度こそ私がこの国を動かしてやる。
私の思うまま。
その為には傀儡の王が必要だ。
その為にはまず、リディをあの座から引きずり下ろさねば。
そして、その地位にナシェスを据えお前達を葬り去り私の国が完成する。
「・・・・ああ。楽しみだなぁ」
デズロ。
あの頃、貴方は私にとって希望の光だった。
真っ暗な闇の泥の中から見えた僅かな光。
だが、貴方があの男を殺しこの宮廷を去った後、私は自分が何を求めていたのか知る事になったんだ。
「カスバールが沈む、その瞬間を・・・私は見たい」
あんなに苦しく辛い日々だったのに、私は、あの日々を失いおかしくなった。
ベルシャナが存在しない、刺激のない毎日は私から色を奪っていった。
アトレイアの面白みのない治世に、私は我慢が出来なくなった。
安寧な治世など要らない。
平和などもってのほかだ。
皆、あの時の様に怯えて恐怖し壊せばいい。
それでこそ、生きている事を実感出来るというものだ。
ギィィィィィイ。
メリルもどんなに魔力が強くとも所詮はただの小娘だ。
あの様子だとリディ様もあの小娘を上手く操作する事は出来ないだろう。それならば、その役目を他の者に与えてやろう。
「・・・・・・アニラ?」
「お久し振りでございます。ナシェス様」
さぁ? 役立たずの貴方にもう一度チャンスを与えましょう。今度こそは上手く踊って下さいますよう。
「デズロ様が貴方にお会いしたいそうですよ? 向かいがてら面白い話もいくつか御座います。どうぞ外に出るご準備を」
ナシェス。
お前がなるのだ。
この国を滅ぼす筈だった狂皇ベルシャナ・ディムレムに。




