メリルは全てを手放したい
ん?・・・ふぁ〜よく寝た。
何だろ。疲れてたのかな? 久々の快眠だった。
懐かしいシーツの感触だなぁ。ゴワゴワだわ。
何だろ?なんか動き難い。
「すーーーっすーーーーっ」
あ。そうだった。
コイツも居たんだった。
なんかこのテットって人もここに居座るつもりみたいッス。
ッスッス。
・・・・・・はぁ。困った。これからどうしよう。
「・・・・・ご飯の用意しなきゃ」
テットやっぱり昨日使った魔法で大分身体が疲れてるみたい。もう少し休ませてやるか。
「あ。確か地下に私の服がいくつか置いてあったよね?」
逃げて来るとき魔術師の服着てたからね。
あれ結構動き辛い。
「あったあった〜!」
うんうん!このフィット感、完璧だね!
じゃあ今日はご飯食べた後はテットのベッドをどうにかしないとね。後、薬草も取りに行こう。
あ、小麦粉が無事だ。じゃ、朝ごはんはこれと昨日塩漬けにしておいた魚で。
「ん〜? いい香り? 」
パンは焼けないからなぁ。薄く伸ばしてフライパンで焼いて食べよう。たまにしか作らないからお父さん達程、料理は上手じゃないけどね。私基本、ご飯はお腹が膨れれば満足だから。
「何作ってんの?」
「フライパンで焼くパンと、魚の香草蒸し焼き〜」
「え? メリル料理出来んの?」
「あーん? 普通に出来るわ!ただお父さんやお姉ちゃんみたいに上手じゃ・・・・」
うっ! しまった・・・思い出した。
「・・・・・・・」
「じゃ、俺昨日掘り出した食器の用意するわ」
ムカつく。テットの癖に気を使うとか、本当腹立つ。
「食料の買い出し大丈夫かなぁ。町がまだ無事に残ってるといいけど」
「・・・・・この山の下、かなり治安が悪いのか?」
「うん。あんな奴等が頻繁に来るぐらいだからね?まだ、悪いと思う」
「メリル。外に出る時は必ず俺に声をかけろよ?」
「は?」
な、何よ? なんでそんな真剣な顔なの?
気持ち悪いんですけど?ニヤニヤしてなさいよ。
「俺が近くにいる間は俺が守ってやる。まぁ、宿代?」
「は、はぁ? 別にいらない! 私自分の身は自分で守るから! 人の心配より自分の心配しなさいよ!」
「まぁまぁ? いいじゃん? 俺強いし? 楽しちゃえよ」
「阿呆。楽なんて出来ないわよ。ここは、宮廷内じゃない。アンタは私の護衛じゃなくて・・・・と・・」
「・・・・と?」
うぐぅ!! 私今何言おうとしたの? 無いわ。無い無い!
「と、とにかく! 守らなくてもいいからね!ご飯出来た!」
「スープよそうな。俺の着替え乾いてっかなぁ」
「多分大丈夫だと思う。二階に干したから後で確認して。乾いてなかったら私が魔法で乾燥させる」
「本当便利だなぁ? お前そんな万能でよく無事だったな?」
「・・・・・そりゃそうよ。だから外に出なかったんでしょうが」
やめよやめよ!さっ!ご飯食べて、やる事サッサと終わらそう!
「うん! 美味いじゃん? メリルにしては上出来じゃないの?」
「はぁ? もっとちゃんとした食材があればもっと作れますけどぉ?」
「ほぉ? じゃあ今度は獣でも狩に行くかなぁ?」
ったく失礼な奴!
ちゃんと美味しいでしょうが! いちいち言われなくても・・・・・。
「・・・・メリル?どうした?」
言われなくても・・・・分かってるって・・・。
言わなくても、伝わってるって思ってたけど・・・・。
"うん! 美味いじゃん?"
本当に?
本当に、伝わってたのかな?私の、気持ち。
「何? 情緒不安定なの? そんなお年頃なの?」
「うっざ! 黙れうっざ!」
どうしたのかな私。お姉ちゃんの事知ってから、なんだかおかしい。今までは何とも思ってなかったのになぁ。
それが、いけなかったのかなぁ?
だってお姉ちゃんの事考えると堪らない気持ちになるんだもん。考えたくない。へこんでる余裕なんてない。
黙々とやるべき事をやろ! 私基本的にそういうのが向いてるんだよ。何かに集中してれば余計な事考えないもんね?
「よし!じゃあ買い出しに行こう!」
盗賊がまた出るかもしれないから注意が必要だなぁ。
あ、町ちゃんとあるじゃん? 良かった・・・ここはまだ無事なんだ?
「え? メリル? アンタ無事だったのかい?」
「おばさーん! 喉の具合どう? そうなの、取り敢えず無事だよ〜」
「そ、そうなのかい。それは、良かった。あ、何か買っていくかい?」
「うん。何がある? あ、じゃあコレとぉ〜・・・」
そっか・・・そりゃ無事じゃないよね。
人もまばらだし・・・そっかそっか。
「また盗賊が出没してるから、おばさんも気をつけてね? 私は暫く知り合いの人が付いてくれるから大丈夫だけど・・」
まぁ、しょうがないよね。
「おばさんは危ないから、あまり外出歩かない方が良いかもね?」
「・・・・そ、そうだね? 気をつけるよ。心配してくれて、ありがとうね?」
ザッザッザッ
「メリル。どこ行くんだ?」
「薬草を摘みに行く。少し薬を作って数日ここで休んだら・・・・」
カスバールに安全な場所なんて存在しない。
「ここを出る。多分ここにいたら死体の山が増えるだけだもん」
「・・・・・わざとお前の所へ誘導したのか?」
「恐らく。情報を売ってるんだと思うよ? きっとこんな事何度もあったんだろね?」
やだなぁ。だから外に、出たくなかったんだけど。
「着いた」
「・・・・・・凄い。一面薬草畑だ」
ここは無事かぁ。
そうかそうかぁ。
じゃあいくつか収穫してっと。
「テットが居てくれて良かったかもね」
「え? いきなり素直? どうした?」
だってこんな美しい薬草畑を誰にも見られないまま焼くなんて・・・不憫でならないもん。
ボッ!!
「メリル!?」
[紅蓮の業火で焼き尽くせ ファイヤ!]
ゴォォォォォォォォォ!!
「・・・・どうして? 何で焼くんだ?」
「ここにはもう、長く居られない。お父さん達にもメッセージを残したら、ここを離れないと。一度目を付けられたら死ぬまで追いかけ回される。殺すのは簡単だけど、あの人達も生きるのに必死なの」
生き残るためにはどんな事だってする。
誰も助けてはくれない。自分の家族は自分で守らなければならない。それが、ここカスバール。
「この畑が見つかれば人々の争いの種になる。焼いてしまった方が安全だからね」
ごめんねお母さん。
二人で一生懸命育てた薬草畑だけどお母さんもきっと同じ事をしたよね?
「・・・まさか。メリルがずっと帰りたがってた理由って・・・・」
そうだよ。
こんな物残ってたら大変だもん。
やっと安心出来た。
「・・・ここは、結構長く居られたから気に入ってたんだけど、仕方ないね」
村ごと移動してたから毎回大変だったけど、皆いなくなったから身軽でいいわ。
「帰ろう。帰って休んで明日になったらここを出る。テット」
「ん?」
「アンタも帰って。もう側にいなくていい」
一人で今度は旅でもしようかなぁ?
住めそうな場所を探しながら各地を転々として。
医者だって言えばお金も少しは稼げるだろうしね。
「いや? 帰らないぞ? 俺はずっとメリルについてく」
「・・・だから、それは無理でしょ? アンタはこの国の・・・・」
「うん。この国の騎士で、陛下の側近で、今はメリルの側付きだな。メリルがこのまま帰らないならメリルは宮廷から追われる身になる。でも、メリルはこの国から逃げる気は無いんだろ?」
な、何? 一体何が言いたいの?
「メリル俺に言ったよな? 嫌いなら無理して側に居なくていいって。でも、陛下に命令されたら俺はどんなに嫌な仕事でもやらなきゃいけない。俺の命はその為にある」
そうでしょ?だから、戻って・・・。
「その陛下が、自分の命より、お前を守れと命令された。なによりも、お前を優先しろと」
「・・・・・・・だから、ずっとついて来るの?」
結局リディの命令が一番って事?
だから私の意思は関係ないの?なんで・・笑ってるの?
「メリル。俺と暫くお芝居をしようぜ?」
「・・・は?」
「舞台はこのカスバール国の宮廷で、メリルは超我儘な天才魔導師だ。俺はそんなメリルにこき使われる陛下に捨てられた可哀想な下流騎士。メリルは陛下とは仲が悪くて毎日喧嘩する。皆それをハラハラ見つめながら思うだろ?このままならリディを放っておいても大丈夫。いつでも付け入る隙はある。そう、思わせるんだ」
何よそれ。今までと何ら変わりないじゃない。アホらし。
「でも、本当はそうじゃないだろ?」
「・・・・・テット」
そうかな? 私は本当に嫌だったけど?
今更何って思ったもん。
「俺は違う。俺は、この国が良くなるんだったらなんだって良かった。俺はリディ様がこの国を引き継いだから、ここまで来た。あの人を、この国を支える為だ」
信じてるんだ?でも、私は無理。
だって、あの人私の事信じてないから。
「勘違いするなよ。お前が嫌いだった訳じゃない。俺は、自分の成すべき事は自分で決めたいタチなんでね? ずっと考えてただけだ。それで、決めた」
「・・・・なにを?」
本当に。ほんとーーーーに、コイツ阿呆だ。
なんで、そんな事言うのよ。
「メリル俺、お前の為に死んでやるよ。俺は今日からお前だけの騎士になる。宮廷に戻らないならずっと一緒に逃げてやる」
リディの命令をどうやったらそんな風に捻じ曲げられるの?コイツ・・・・本気でおかしいと思う。




