メリルは自分の故郷に帰る
本当に嫌。
泣くつもりなんて無かったのに。
あんな事、言うつもり無かったのにな。
「でぇ・・・魔力使ってないのに結構疲れるッスね?」
当たり前でしょ?
魔力が無いから疲れるの!
全くこんな所までテットついて来ちゃうんだから。
本当にこいつウザい。
「え? メリル様?」
「少し魔力を分けてあげる。大人しくして」
この世界は生き物全てに、ほんのわずかな魔力が流れている。空気みたいに体に吸収されて、それは体を動かす原動力になる。栄養みたいなものって考えればいいのかな?
魔力を保持してない人間でもそれは変わらない。
皆、気付いてないけど。
リディがあんなに必死になって魔力の枯渇を危惧するのはそれを知っているからだと思う。
「あ、楽になった? ありがとうございます」
「もう、敬語使わなくていいけど。あそこには戻らないから」
っていうか敬語、苦手なんだよね。
距離感が掴めなくなる。私、本当に人との距離を取るのが下手なんだ。あまり他人とは接して来なかったし。
「あ、そう?俺も敬語苦手」
なんだ・・・普通に喋れるんじゃない。
その方がいいよ。だいぶマシ。
「・・・・・メリルって、そんな顔で俺に笑えるのな?」
「は? 何それ。意味わからん」
相変わらずコイツ意味不明だわ。
いつもちゃんと笑ってるわ。失礼な奴。
「あーーー荒れ放題ッスねぇ?」
「そりゃまぁ・・・人が手を加えなけりゃね?元々人が住む場所じゃないし」
さて、何処から手をつけようかなぁ、
まず、倒れてる木を全部どけて、道を作らないとね?
「わっ! おお? 物が浮いて?」
「はい、邪魔〜どいてどいてぇ〜」
ドン!バキバキドン!バキバキ。ビュンビュン。
「・・・・ひぇぇぇぇ。相変わらず・・便利な能力」
「普段はこんな事に魔法なんて使わないからね?よし!あ、家そんなに壊れてないじゃない。所々直さなきゃだけど。暮らすのは暮らせそう」
「柱は壊れて無いっすけど屋根とか窓とかバリバリだ。板で塞ぐ?」
「あーーーそうだねぇ。一階は直そうかな。二階はいいや」
うん。なんとか活動出来る位には片付いたね。
じゃ、ご飯の確保に行こうかな?
「ん?どこ行くんだ?」
「無事ならこの先に川があるから、そこで魚を捕まえる。私は狩なんて出来ないからね? ここに居たらお肉は食べられないよ?」
ん?なんでそんな驚いた顔してんの? なんだよ?
「・・・いいよ。食べたくなったら俺が捕まえに行くし」
「え?テットて、狩出来るの!?」
「出来る。俺の故郷も田舎っつーか。だから生き残れたんだけどな?」
そうか。そうだよね。
それは、お互い恵まれてたわね。
「それにしても、本当に険しい道だな? メリルがいなきゃ絶対迷う」
「生まれ育った場所だからね? あ!良かった。川はせき止められてない。魚も泳いでる」
久しぶりだからなぁ。釣れるかなぁ?
「あれ?これは魔法使わないんだ?」
「まだ時間あるし、こういうのは極力魔法を使わない様にしてるの。追い詰められたら使うけどね」
お父さんこういうのは煩かったもんねぇ。
あと、魔法使うと必要以上に獲れちゃうから、それもよくないんだよね。
「・・・・釣れるといいなぁ」
「結構難しいんだよねぇ」
そう言いながらも勘は鈍っていなかったわ。流石私。天才。テットも初めてにしては釣れてたわね。なんか悔しいな。
ジャリッ
「おい、お前ら・・・その荷物全部こちらに寄越せ」
あーーー。
人が通れる様にしたら余計なものまでやって来たわね。
「んーーーと?君一人?」
「そんな訳ないだろうが・・・あと、その女も寄越せ。命が惜しかったらな」
五人かぁ・・・私を欲しがってるってことは奴隷商とも繋がりがあるのか。こんな事してたらカスバールから女子供が居なくなって男だけになっちゃうわよ?
「サッサとしろ!お前ら、行け・・・」
ビュオンッ
「メ・・・・!!」
ザシュザシュザシュザシュザシュッ!!
「ひっ!!」
「命が惜しかったら? なんなの?」
本当にアンタら懲りないよね?
まぁ?生き残る為に何とかしようとするのは構わないよ?
でもさぁ。人の命を奪うんだから、自分の番が来ても文句は言えないよね?
ざりっ
「で? 何? アンタも血だまりで転がってる奴等みたいになりたいの?」
「あ・・・あ・・・・・ああ」
アンタだけ生き残るのは不公平よね?
運が悪かったわね? でも。
また変な輩連れてこられたら困るから。
ザンッ!
「・・・・・・っかは・・・」
「・・・・え?」
何でテットがトドメを刺すの? アンタ関係ないでしょが。
「・・・攻撃魔法は使えないんじゃ?」
「風魔法は得意なの。私の属性魔法だから。はぁ・・ヨイショ」
「え?担いでどうするんだ?」
「埋める」
「え? わざわざ?」
そうね。勝手に襲いかかってきて勝手に死んだんだから、私には関係ないけど。
「人は死んだら土に還る。そして、この地に恵みを与える」
それが、どんな人生を歩んだ者だろうと。
人の体は皆同じよ。
「・・・・・・・・メリル」
皆、同じなんだわ。
私も死ねば、所詮はただの肉の塊だわ。




