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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
後日談&番外エピソード
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テットは寄り添う

俺は知っている。


メリルは長い眠りから目覚めて元気になってから、時折夜うなされる。


「・・・・・うっ」


そんな夜、俺はこっそりメリルの部屋に忍び込む。

恐らくテニアにはバレているだろうけどな。


俺は彼女のベッドの脇の椅子に腰掛けて彼女の側を離れない。


最初メリルは寝ぼけていたのか、俺の夢を見ていると思っていたようだった。


手を差し出されたので俺は何も言わず、その手を握った。


「・・・ごめん。・・・少しだけこうしてて」


「いいよ」


きっと、アイツの夢を見るんだろう。

ずっと忘れていた、アイツの夢を。


俺は、今でも後悔している。

俺の手でトドメを刺してやりたかった。


彼女を傷つけ、彼女の隠し通そうとしたものを悪戯に暴いたあの男を。





「ビックリするから部屋には来ないでってば! ちゃんと自分の部屋で寝なさいよ!」


「いや〜でも、俺メリル様の騎士ッス。いつうちの最強薬師様が拐われるか分からないですからね?」


「はぁ!? そうそう拐われてたまるか! 心配なら宮廷内の警備増やしなさいよ! っていうか、せめて部屋の外で見張ってなさいよ!」


そんな事言っているが、実は夜中ちゃんと俺が部屋に来ているかを確認している。


そして、見つけて安心していることを俺は知ってる。


メリル、俺には容赦なく甘えるよな?

テニアやシャミには気を使うのに、俺には使わない。


この態度は完全な照れ隠しだ。


「まぁまぁ〜俺これでも常識人なんで、許可なく襲ったりしませんから。心配無用です」


「何言ってんの? あんた馬鹿なの? 許可ってなんだ! 誰が好んで襲ってくれなんて言うか! 」


俺の想いが叶えられることはないだろう。


メリルはきっと宣言通り、これから先誰とも恋しない可能性が高い。


俺だってメリルと出会うまで自分は誰とも恋しないと思ってた。





"テット・・・・アイツは、助けないで欲しい"



理解できなかったんだ。

俺の親友の、あの言葉が。


子供の頃から恋い焦がれて、やっと手に入れたアンシィを下らない嫉妬で助けるなと言ったアイツが。


俺は、何度もアンシィとは何も無いとアイツに言った。


アイツもそれは分かってた。アンシィも、恐らく俺に気持ちを打ち明けるつもりはなかっただろう。

それなのに、どうしてあんな形で終わってしまったんだろう。


正直に言うと、俺は面倒だったんだ。

俺は、二人とは子供の頃から一緒にいた。

アンシィは大切な家族だった。


だから、俺はずっと彼女の気持ちから目を背けた。

それなのに、中途半端に優しくした。


本当に諦めさせたいのなら、もっとハッキリと態度に出すべきだったのに。家族だから放っておけなかった。


二人が付き合うと聞いた時、正直ホッとしたんだ。


アンシィは多分、俺を諦める為に、アイツと付き合ったんだと思う。だからアンシィは今でも許せないんだ、自分の事が。



" どんなクソみたいな世界だって、ここは私の故郷だわ! ここで生きて死んでいく。でも、どう生きて死ぬかは私の自由でしょ!! その自由まで奪うって言うの!!"


メリルの、あの言葉を聞いた時、その言葉がストンと俺の中に落ちて来た。


俺達は確かにあんな別れ方をしたけれど、自由に生きた。

選ぶのは自分だ。どんな状況下でも、俺達はその中で自ら選択して決めた。


だから、その時出した答えに一々、正しさを求めなくてもいいと思えたんだ。俺達は精一杯生きて来た。


俺はメリルの騎士になってからも、彼女がする事に口を出さなかった。口を、出さないつもりだった。でもさ?


俺、お前達二人の気持ちが始めてわかった。

想いを隠すのって、こんなに辛いもんなんだな?


自分で選んだとはいえ、これはしんどい。

正直俺は甘かった。

それに、自分よりも相手が辛そうなのを見る方が痛いとか、ないよなぁ。


お前も、ずっとこんな気持ちだったのか?


「・・・・・俺はここにいる」


俺はメリルの騎士だ。


それ以上でもそれ以下でもない。

でも、俺はその線引きを少し超えた所にいる。


「・・・・テット? また居たの? もう、大丈夫だから寝ていいよ? ちゃんと休んで」


「ええ。もう少ししたら部屋に帰りますから、気にせず寝て下さいッス」


「・・・・・・テットの阿呆」


「俺、丈夫に出来てるんで大丈夫です。お気になさらず」


今はまだ、ただ彼女が安心して眠れるよう、側で見守りたい。俺は死ぬまでメリルと共にいるつもりだ。


「大丈夫です。襲ったりしませんから」


「当たり前でしょ。何言ってんの? ちゃんと守って」


「はい、必ず守ります」


時間はたっぷりある。

俺はメリルが、幸せになる所を見てから、死のうと思う。


「でも、私より早く死んだりしないで」


「それは無理ッス。何故なら俺の方がメリル様より年上ッスからね? 年功序列ってやつッス」


もし、それでもメリルが幸せにならなかったら、俺が幸せにしようと思う。


俺なりのやり方で。


「私は天才だから、テットの寿命なんて簡単に引き伸ばしちゃうんだからね」


「滅茶苦茶ッスね。先が思いやられるッス」


いつか、メリルがあの男や、リディ様の事を消化できた時彼女の隣にいるのは俺でありたい。


例えそれが叶わないとしても、メリルから俺は離れない。


「・・・おやすみテット」


「お休みなさい。良い夢を」



今日も俺は、彼女の側を離れない。

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