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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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リディの選択

「私達と違い、お前とメリルは男と女だ。間違って好きにでもなったら、後が辛くなるぞ。その事は胸に留めておいた方がいい」


「そうですね。ですが、私はこの国の為にいずれ妃を迎えなければならない身です。それがメリルではない以上、そんな心配は起こりません」


「ならば、迎える妃はお前の愛する者にしろ。そして出来れば、相手もお前を愛してくれる女を選べ。決して、打算で伴侶を選ばない事だ」




エルハド様とのそんな会話のやり取りがふと脳裏をよぎった。


視界に入ったものを見て、私は何故自分が目覚めたのか、瞬時に理解した。



彼女が命を懸けて私を生かしたんだと。



「私を殺して。今、すぐに」



目の前の彼女の瞳が徐々に光を失っていく。




彼女の小さな身体がじわじわと黒ずんで、そんな彼女の体を奴が破壊したアースポントが覆っていく。



ずっと私は、メリルの事を恋愛対象としては見ていなかった。いや、最初から除外していた。



そして彼女が私に好意を持ち、それを隠していた事も、私の妃になるつもりがない事も、ちゃんと理解していた。



今考えると、私もメリルもとても愚かだったのだと思う。



私達はお互いの事を、きっとかけがえのない相手だと認識していたはずなのに、どうして、恋する相手に選ばなかったんだろう?



「・・・・・・メリル・・・いくな・・」



今なら私は、エルハド様にこう答える。




"貴方は間違えていなかった"と。




間違えたのは私だ。




最初から素直に私の側に居てくれと言えばよかったんだ。

お前を、失いたくないと。

そう、感じたその時に。



例え、その想いが恋ではなかったとしても、素直に伝えるべきだった。




メリルはずっと、その言葉を・・・待っていたのに。




"じゃあさ。私ずっとここで暮らしていい? 皆の側で。リディ。貴方が結婚して子供が産まれたら、その子を抱っこさせて欲しい"




「行くな!! ずっと私の側にいろ!」




自分が死ぬよりも、メリルを失ってしまう事が、こんなに耐え難く、苦痛な事などとは思わなかったんだ。




"私、リディが幸せになるところが見たい。私は、人の幸せをこの目で見た記憶があまりないから。死ぬ前に、大切な人達の幸せな姿を残しておきたい"




何故私は、もっと早く彼女を捕まえておかなかったのか。

エルハド様は、失わない為そうしたのに。




メリルがゆっくりと倒れてくる。

剣を握る私に向かって。

私がメリルを殺すのか?

奴の暴走を止める為に。

この国を、救う為に。

この国の皇帝としての役目を果たす為に。




もし、私が何も持たない、ただの男ならば、どうしただろう?


カランッ


「・・・・・リ・・デ・・ィ」


そんなもの、決まっている!!


「お前は馬鹿なのか? 私を好きな女一人守れない惨めな男にするつもりか? 」


「・・・・ば、か・・・なの?」


そうだな。

馬鹿だと思う。


だが、やっと。父や兄の気持ちが少しだけ理解できた。


「最後だから言っておく。今、お前に恋をした」


「遅い・・・あと・・・わた、し、これでも・・・モテモテ・・・ですので」


ビキビキビキッ

このまま私は最後まで、メリルを抱き締めていようと思う。すまない皆。


「知っている。・・・・・望むところだ」


「私は、誰にも・・・・恋は、しない・・・」


構わない。

お前が私のものにならなかったとしても、そんな事はどうだっていい。


「でも・・・リディ。・・・私は、今日の事を、忘れない。ずっと、忘れない」


私もだ。死ぬまでずっと覚えている。


「はぁ・・・・はぁ・・嫌な、予感がして、戻ってみれば・・・まさか、そこから抜け出す、とは・・・ね?」


マチェスタ!?

では皆は・・・いや、マチェスタ一人?


「全く・・・一足、早く・・魔力暴走を・・起こし、かけてるじゃ、ないか・・・こちら、へ・・・よこ、せ」


どういう事だ?

奴の様子がおかしい。

何故、そんなに焦っている・・・メリル? 笑って?


「はは!・・・やっぱり・・・ね。アンタの体じゃ・・・私の魔力・・・支えきれないんでしょ?・・・・ざぁま・・ぁ」


「メリル・・・ふふ・・・そう、だね?・・・まさ、かこんな自殺行為に、出るとは・・思わなかった。でも・・君もそろそろ限界・・・だ」


このままメリルが暴走したとしても、奴にだけは渡さない。渡すものか。



「・・・・・テット。・・・遅いよ」



「悪いメリル。そいつ、ちょこまかとすばしっこくて・・・今、行く」


テット!何故、マチェスタに向かってではなく、こちらに走って来る?・・・・まさか。


「させるか!メリルを殺すのは僕だ! お前になど渡すものか!!」


「知ったこっちゃねぇッス。後、勘違いすんなよ?」


なんだ?

部屋の天井が、激しく音を立てている。

何か上から降ってくる?


ドドドーーーン!!


「ぎゃあああああ!!ひぃいあああ!」


「!?クリオル?・・・と・・」


「ジャスト、タイミーング! 流石僕ぅ♪」


あれは・・・何故!?


「デズロ様!!」


「・・・・伯父・・・さん?・・・」


どうして今ここに?

この人本当に突然現れるな? まさか、またなのか?


「ドッキリ第二弾大成功! とは、言ってられないこの状況! あ〜あ。せっかくの計画が台無しだよ?」


「いや。ナイスタイミングッス! 最早神と崇めたいッス!」


「あ、そう? テレるなぁ〜?」


ちょっと呑気にそんな事を話している状況ではないのだが? 色々起こりすぎて私は混乱している。


「メリル様、失礼します」


「クリオル」


メリルを纏っているアースポントのかけらが溶けていく。

これは、デズロ様の力か? そうか、作り方を知っているのだから、壊し方もよく分かっている。


「・・・・デズロ・マスカーシャか?」


「まさか僕の作ったアースポントを利用してメリルの力を奪うなんてね? やってくれるじゃない? その発想力は褒めてあげるよ。それで? 君は結局何がしたかったのかな?」


「メリル様! お気を確かに!」


「メリルー!!」


「・・・・テニ、ア? シャミ? 無事、だったの?」


「はは、はははは! 君も来ていたんだね? 良かったねメリル。君の大好きな人達が駆けつけてくれて」


これは夢だろうか?

何故、彼女までここにいるんだ?


「・・・・・・なん、で?」


「久し振りですね? 貴女が打ち上げた花火のお陰で私は日々宿舎で揶揄われて大変です。私の反応がいちいち面白いらしいですよ? お陰でデッキブラシが手放せない日々が続いていたので、そろそろメリルの所に御礼参りに来ました」


歪んでいる。

お前達姉妹は絶対に歪んでいる。


主に、愛情表現の示し方が。


「本当に良かった。メリル、最後に皆の苦しむ姿を君に見せてあげる事が出来る。苦痛に歪んだ君の顔をもう一度僕に見せて欲しい」


「貴方の顔は覚えています。メリルが傷ついたあの日、あの場にいましたから。私とした事が大失敗です」


「・・・・お姉ちゃん・・・」


「我が家では、メリルに手を出した者は相手が誰であろうと再起不能にしばき倒すという掟があります。母の掟は絶対です。よって貴方はどんな理由があろうと今ここで私が処します」


・・・・おい。

そんな掟始めて知ったぞ?

それは、何処から何処までの事を言っているんだ?

皆、内心ドキドキしているぞ。


あとティファ。

気持ちは分かるが、もう少し怒気を抑えて欲しい。


皆、怖くて動けない。

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