アトレイアと始祖
「アトレイアはさぁ・・やれば出来るのにね?」
「また。唐突になんだ? あと、お前大丈夫なのか? あまり私の所に来ると、エルハドがヘソを曲げるぞ?」
サウジスカルに各国の親善大使代表として来たのはいいが。お前達は、いつまでも何揉めてるんだ。
私を巻き込むな。
お前達男同士で何やっているんだ全く。
だんだん面倒になって来たぞ私も。
「いや、だってさ? ベルシャナ程でないにしても剣の腕も立つし魔法も使えるでしょ? ただアトレイアは、優しすぎるというか、気が弱いんだよねぇ?」
「大きなお世話だ。後お前達に言われても説得力はないぞ?」
明日にはここ出る。
こうやってデズロと話が出来るのも最後になるかもな。
デズロには、本当に助けられた。私はデズロのお陰で今も生きていられるのだろう。
「ん? 何? 何かして遊ぶ?」
「・・・・・もし、今テリアーゼと会えるとしたら会いに行くか?」
私が始祖を取り込み精霊の下に行けばあの姿は保てなくなるかも知れない。メリルは言わないと言ったが・・・。
「うーん? どうかな? っていうかテリアーゼはこの世にいないからそんな事考えた事ないね?」
「そう、なのか?」
「うん。アトレイアは・・・駆け出して行きそうだね?」
そうだな。きっと今でもそうだろうな。
私は諦めが悪いのかもな。現実を、受け入れるのにも時間がかかった。しょうもない人間だ。
「でも僕今は新しい恋人が出来たから! 会ってもどうしようもないし? ってか会えないけどさ?」
「そうか・・・・・・ん? おい、お前今恋人が出来たと聞こえたが?」
「うん? 言ったね? そうなんだ! 僕この歳でなんと! 新しい恋始めましたーー!! エヘン!」
そうかそうか。
お前、やっとか。
やっと前に進んだんだな?
「ちょっと何その生暖かい目。やめてよ。純粋に驚いてよ。普通に受け止めないでよ! 僕反応に困るでしょ?」
そんな事言われてもな? 話を先に、進めていいか?
「じゃあ大丈夫だな? お前、エルハドと直ぐにカスバールに来い」
「唐突だね? しかも中々強引だね? アトレイアにしては珍しい。もしかして、僕達に関わる事?」
「恐らく。カスバールの精霊が目覚めた事は、知っているな? その精霊だが首都のセスターゼスの西の丘にいる。お前、カスバールを出る時テリアーゼの体の一部を持ち出しているな?」
「・・・・・うん。それが何?」
「それを、何処かに埋めただろう? 恐らくそこが精霊が今いる場所だ。そして、その精霊の姿はテリアーゼだった」
「ーー!!」
流石に驚いているな。
これはちゃんと最初から説明した方が良さそうだ。
どうするか決めるのは、デズロ達だからな。
「・・・・そう。確かにそれだと色々辻褄は合う。ただ、何故アトレイアに寄生させる必要があるんだろう? そもそも最初の候補はナシェス・・チェシャだよね?」
「恐らくだが、ナシェスはもう始祖を寄生させる事は出来ないのだと思う。ただ、カスバールの大地が精霊の苗床に選んだのは紛れもなくチェシャだった。ベルシャナの妨害で、チェシャは始祖を寄生させられなかった。それでも、精霊の誕生は予定通り行われた」
「それが、この世界の理。始祖の意思など御構いなしってことかな? 酷いねぇ」
そうだな。罰を与えるのであればその役目をちゃんと全うさせて欲しい。
「テリアーゼの精霊があそこにいられるのは始祖の一部とチェシャが精霊として生まれ変わる時与えられた力を使ったからだと思われる。結果それは成功し、新しい精霊は誕生した。だが、そこに始祖を取り込む方法は私には分からない。始祖を取り込んだ私がどうなるのかもな。だから、その前に会いに行ったらどうだろう?」
もしかしたら姿は見えないかも知れないが。
それでも行く価値は、あると思うぞ?
「そっか。でも、僕はいいや」
「・・・・いいのか?」
「うん。僕の愛したテリアーゼはもういない。そこにいる精霊は姿はテリアーゼで彼女の記憶はあるかも知れないけど、それだけだもん」
・・・驚いた。
お前なら直ぐにでも会いに行くと言いだすかと思っていた。エルハドを置いてでも。
「・・・サウジスカルの前の精霊は、訳あって記憶を残したまま人間になったんだけど」
「ああ。エルハドを守っていたマチ湖の精霊か? メリルから少し話は聞いている」
本来精霊の代替わりで精霊が人間になるには全ての記憶は失くなるらしいのだがな?
「精霊には喜怒哀楽の感情はないらしいよ? つまり、自分の地を守る、愛しむ事しかしないらしい」
・・・まぁ、そうであって欲しいな?
だが、サウジスカルに聳え立った大樹はそうではなかったな? それは・・・。
「僕ね、多分会いに行っても彼女は見えないと思う。だって僕、生きてる人間にしか興味ないから」
「・・・・デズロ」
「大樹は、根付く前に人に触れて穢れてしまったからね? 相当苦しんだと思うよ? 本来なら精霊があれ程苦しむ事はないんだ。だから、僕、ここに呼ばれたんじゃないかな?」
「・・・そうだな。きっと・・・お前でなければいけなかったのだな・・・余計な事を言ってすまなかった」
ではもし、私が彼女の代わりに精霊になれる事があるとするなら、それはとても幸せな事かもしれないな?
「・・・・・ナシェス? 」
「すまない父様。急だが・・・今すぐ役目を果たして欲しい」
「・・・彼女がそうなのか?」
「アトレイア私を受け入れろ。そして、全てを終わらせる」
ああ。
やっと私は成し遂げられるのか。
「ああ。よく、帰って来たな?」
貴方にも、見せたかった。
カスバールの・・・美しい夜明けを。
ベルシャナ様、貴方にも。




