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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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東の沼地

瘴気が濃いのぉ?


だが、最近は土壌の穢れが大分減った。

村の者も安心しておったの。


「老師様!大変大変! 宮廷からお医者様がやって来たよ?」


「宮廷から?こんな辺境の地の端へ? また、何故急に? 」


「それが、この村に病人がいる筈だって。この村に病人なんて居ないんだけど・・・今、お父さん達が対応してるんだけど・・・」


ほぉ? それは興味深いのぉ?


私がここに戻って宮廷の人間が此処に人を寄越したことは一度もない。それが、今このタイミングでか?


確か今は、ベルシャナの孫のリディがこの国を治めておると聞いておるが。どんな御用かのぉ?


「ですから、病人などおりません。誰の事を仰っているのか分からなければ連れて来れませんよ」


「え〜? まだ症状が全く出てないって事? 面倒だなぁ」


ん? 宮廷の医療官にしては、若い女子じゃな?

と、いうか幼すぎるなぁ? 儂の好みではないわい。


「あ、老師様」


「ん? 誰? この村の村長さん?」


「いやいや。私はしがない村の魔術師ですわい。あなた方は宮廷からいらっしゃったとか? どの様なご用件なのですかな? わざわざこんな所まで足を運ぶくらいじゃ、それなりの事情があるのでしょう?」


少し前、一部の地域で発生した人が獣化する伝染病は収束したと聞いているのぅ? では、他の疫病の調査だろうな?


「貴方は医療魔術を?」


「少しな。医療というか、穢れを清める魔法を扱う。若い頃聖職者として働いておったのでな?」


「え? カスバールで聖職者? 珍しいね? この国は神を祀る風習はないのに」


一部では祀っておったぞ?

神に縋りたくもなる状況だったじゃろう?


「実は、ちょっと特殊な病なの。小さな虫みたいなのが体に寄生してしまうもので、一度体に入ってしまうととても厄介なのよ。早く見つけて処置しないと危ないんだけど」


なんじゃと!?

そんな馬鹿な。あの沼には誰も近付かぬ様、結界を張った筈じゃぞ? もしや、別の場所にあったのか?


「最近東の沼の近くに近付いた者は居ないじゃろうな?」


「え? いや、実は・・・あの近くには大きな山桃がなる木があるんで、今の時期はそれを採りに行ってるんです。勿論、奥までは行きませんよ?」


「東の・・・沼?」


馬鹿者が! あれ程あそこには近付いてはならないといったものを・・・アレが体に入り込んでしまえば、儂にはどうにも出来んのだぞ?


「お爺ちゃん。もしかして、私達が探しているのが何だか知ってる?」


「恐らくな。だが・・・見つけてどうするつもりなのじゃ?」


「え? その虫を体から出すんだけど? じゃないと寄生された人が大変な事になる」


アレを取り出せるという者など今まで見た事も聞いた事もないぞ? しかも、こんな若い女子にそんな事出来るのか?

しかし、迷っている時間はなさそうじゃな。


「今すぐあそこに近付いた者、全員を集めるのじゃ」


「老師?」


「症状が出る前に急ぐのじゃ! 」


「は、はい!」


さて、儂はどうするかのぉ。

今更ベルシャナの手の者が儂を殺しに来たとも思えんが。


そして、さっきからこの娘、儂の周りをグルグル回って何なんじゃろな?


「メリル様? さっきから何してるんすか? 初対面の方に失礼ッス。宮廷の品位が問われるッス」


「あん? こんな明らかに疑わしい魔術師使い、怪しまない方がおかしいよね? 寄生虫の事も知ってるみたいだし?」


「無駄に長生きしておるのでな? それに、昔はよく東の沼に宮廷の人間が通っていたろう? 流石に不審に思い調べたからの?」


おや? この者達何も知らないのか?

そうか、当時宮廷に勤めていた者はもう残ってはいないか。それはそうじゃろうなぁ。


「そもそも、最初に寄生虫の被害に遭ったのはこの村の人間だからの? 儂も当時此処に居たから覚えておる」


「あれ? ん? もしかしてお爺ちゃん・・・お母さんの事知ってる?」


お母さん? なんじゃそれは、誰の事を言っている?


「当時まだ若かった宮廷薬室長。マリオーネって知らない? その人、私のお母さんなんだけど?」


「・・・・・なんと! お前さん、マリオーネの娘なのか?」


「あ、やっぱり! お母さんその話を宮廷の魔術師に聞いたって言ってたから。そっか、生き延びてたんだね?」


これは驚いた。

まさか古い友人の子供とこんな所で出会うとは!


あの頃のマリオーネはキレキレじゃった。

今も元気にハッスルしておるじゃろうか?


「と、言うことは虫を取り出せると言うのも事実なのじゃな? マリオーネは研究熱心な娘じゃったからの?」


「そうだよ? 試行錯誤して今ではそれがとても役立ってる。ありがとうね! お爺ちゃん」


「儂は話をしただけじゃがな? それが今に生かせているのならば良かったのぉ。それで? ()()()は今誰が所持しておるのだ?」


「・・・・・・・ナシェスが。色々事情があって」


そうか。

ベルシャナに娘が産まれなくて良かったな。

奴は女性を好んで寄生するでの。


「でも、次に誰が継承するかで揉めてるの」


「メリル様・・・ちょっと?」


「ナシェスが継承したのであれば次はないであろうな? 彼は若い。きっと彼の代でディムレムは解放されるじゃろう」


結局お前のした事は無駄に終わったなベルシャナ。

じゃが、自業自得だぞ?


お前は与えられた役割を放棄し、人々を無駄に苦しめた。

儂はお前に同情などしない。


「・・・・貴方。始祖の事知っているのね? しかも詳しい。もしかして、ベルシャナがその蟲を寄生させる場所に居たの?」


おや? もしや、これはまんまと誘導されたのか?

ふふふ。そうかお主達、それも知らなかったのじゃな?


「まぁ、その話はまた後でじゃな? ほれ、さっさと患者を探さねばな?」


もう、奴等とは関わらないと思っていたが。

そうか、マリオーネは生き残ったか。


・・・ここまで国土を回復させた、新しい皇帝のぅ?


「まだまだ死ぬには勿体無いの。もう少し余生を楽しむか」


あそこを去ってから随分経っている。

久しぶりに遊びに行くのも、悪くないのぉ?

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