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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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フェルナンディは不思議に思う

人間とは、とても不思議な生き物だと思う。


[帰ったぞ。何呆けている?]


「あ、フェルナンディ。お疲れ。どう? 何か見つかった?」


[また東方面に寄生された人間を見つけたぞ? 恐らく私の同種に触れたのだな。どうする?]


「う〜ん。私が行くわ。早い段階で体から出してしまわないと、寄生している方に自我が生まれてしまうからね」


そうだな。

そうなると私達は、寄生した宿主からさっさと出たくなるからな。それが、人が私達を寄生させた後、狂う原因の1つらしい。ん? 同じ生き物が処分されそうなのに止めない事を不思議に思っているのか? 止めないぞ?


そもそも私達に仲間という概念は無い。


私達は個々の生命体だ。

生き物に寄生しなければ生命体とも呼ばれない存在だ。


宿主から解放され宿主に成りすまして寿命を全うするまで生きていく。ただ、それだけの生き物だ。

それ以上でもそれ以下でもない。


私達は、宿主の意識を持った人間になっても、自分の存在の始まりを忘れたりはしない。


つまり、その存在の在り方を嘆いたりはしないのだ。


「お腹空いたんじゃない? ご飯出来てるよ?」


[そうか。人の姿になってもいいのか?]


「今日は誰も来ないからいいよ。チェシャはもうご飯食べて部屋に戻ったし」


メリルは不思議な人間だと思う。

彼女は宿主を殺さずに私をチェシャから解放した。


そして、私も殺さなかった。


私はチェシャから解放された後、カスバール全土を飛び回りながら色々な物を見て来た。そして、ナシェスと呼ばれていた者の思考でそれらを見た。そして感じた事は"つまらない"だった。どいつもこいつも、つまらないのだ。


そう結論付けた時、メリルの事を思い出した。

会えば今度こそ殺される可能性があったが、私を構成しているものは、それよりも退屈な日々を送る事の方が苦痛だったらしい。


「フェルナンディ? あれ? 何? 髪型変えたの?」


「身体は変化させられないからな。髪の色も変えてみた」


「へぇ? いいんじゃない? チェシャに見えない。見分けがつくっていいね? 」


私の本体もメリルも私を側に置く事を結局許してしまうのだから、本当に面白い。しかも、私をも巻き込んでメリル達はこの国を変えてしまうつもりらしい。


「それで? メリルも様子が変だが? 私が飛び回っている間に何か面白い事が?」


お前さっきから顔が変だぞ? 口がへの字になっている。

怒っているわけではないけれど、何か気に入らなそうに見える。なんだなんだ?


「・・・・いや。文句を言いたい相手がいるんだけど、自分も相手に同じ事した事があるから言い返せないんだよね。でも、納得出来ないんだよね」


「ふぅむ? 全く分からん! 自業自得という事か?」


「ムキィ!! それはそれで腹が立つ! 私は悪くないと思う!」


それならば文句言えるのではないか?

言えないのなら後ろめたい事があるのだろう?


人間は何故、素直に事実を認めようとしないのだろうな?

思っている事とは逆の事を言葉にしたり行動したりする。


何故、人間は相手を騙そうとするのだろう?


「本当にうざい。ッスッスうざい」


「・・・ずっと気になっていたのだが」


「ん? 何よ」


「メリルは何故いつも嘘をつくのだ? 私には嘘をつかないだろう? 人は何故、人同士で嘘をつく?」


なんだ? 意味が分からなそうな顔をしているな?

・・・・・もしや、私は勘違いしていたのか?


「違うか。分からないのか? 人間は、自分の感情に疎いのだな?」


「フェルナンディ? ごめん、全然分からない。なんの話なの?」


そうか。


お前達はわざと嘘をついているのではないのだな?

これは勉強になったぞ? そうか、成る程!


「ふむ! また一つ私に新しい知識が増えたぞ! ご飯を食べる!」


「うん? 行ってらっしゃい?」


ッスッスうざいと言っていたから、メリルはきっとテットと揉めたのだな。


あの者もいつもメリルに嘘をついているから、喧嘩になるのだろう。しかし、それもきっと本人達は自覚が無いのだな?


「何故素直に側にいたい、いて欲しいと言えないのだろうな? 簡単な事ではないか」


ここの人間はきっと皆、自分を欺いている。


死にたいと思いながら実は生きたくて。

平気だと言いながらとても苦しんでいる。

相手を憎いと思いながら本当は愛していて。

嫌いだと言いながら実はとても好いている。


面倒な事はしたくないと口にしながら、彼女はこの世界をどうにかする為に足掻いているのだ。意味がわからない。


「ん?」


なんだ? 今、微かだが、妙な気配がしたな?

同種のものに近いが、それよりも弱い。


別の生物の気配だろうか?


「どうしたのです? 何か、気になる事でも?」


「・・・・いや。この魚美味い」


「シャミと同じ事を言うのですね? チェシャはそんな事、口にしませんのに。本当に、同じもので出来ているとは思えませんわね?」


後でメリルに報告しておくか。

私にも感じ取れないものはあるだろう。


私達と同じ、しかし私達とは違う()が、一体どんな生き物なのか。私にも全くわからない。


「そうだな。最近やっと私の()が出来上がって来た気がする。体は宿主と同じでも、進化は進むのかも知れない。私はもう、チェシャと同じものとは呼べないのかもな?」


「それは良かったですわ。チェシャが二人もいたら困りますもの」


人間とは解しがたい生き物だ。


皆、裏腹に生きている。


だが、見つめている先は皆同じなのだから不思議だ。


ここの人間達は皆、メリルに惹かれている。

私も、彼女に惹かれているのだろう。


ふと、その時唐突に思った。

もし万が一そのメリルが消えてしまったら、この者達はどうなるのだろう。私はその時どうするだろうかと。

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