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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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ケルベナは恋に憧れる

「・・・・あっと言う間に、仕事が片付いてしまった」


呆然としているが、私達にしたら大した仕事量ではなかったぞ? 要領が悪いなリディ。


「そうですね? それはリディ様が臣下をまともに動かせていない証拠です。貴方は人をちゃんと動かせていない。こんな仕事は貴方ではなく他の者にやらせなさい」


「・・・・似たような事を、メリルにも言われた事がある。大事な事だからと目を通していたのだが、駄目だったろうか?」


いや、駄目ではない。

国の事を把握するのに、その内容を把握する事は勿論必須事項だ。やり方の問題だ。


「それならば内容を纏めさせ毎日報告させれば宜しい。貴方はそこから特に気になった案件だけを抜き取ればいいのです。確認しながら処理していたら、この量の仕事など終わりません。貴方の此処でのお仕事は内容が纏まった国事や行事の決め事に目を通しサインして許可を出す事です。それ以外はやらなくて良い。それが一番重要なお仕事なのですよ?」


「そ、そうなのだが・・・・」


信用していないんだな?

まぁ、気持ちは分からんでもない。

実際サウジスカルでも、自分の都合の良いように改ざんされた認許を惚けた顔して出す輩は沢山いたからな? 端から破り捨てたがな?


「許可するのはリディ様です。その中身を見極める力を付ければ、いらぬ心配をする必要などございません。明日からこの仕事は宰相にお譲り下さい。彼も手に余れば部下に割り振ります。それでも追いつかねば優秀な人間を探し、雇うでしょう? そうやって仕事は回って行くのです。これだけ人が居れば何人かは良からぬ事を考える者が現れるでしょうが、そんなものは、その都度処理されれば良い。最初から完璧な臣下など存在致しません」


このやり取り、久々だな?

セルシス兄様はそこそこ優秀だから直ぐに父の仕事を引き継げたが、リディは土台がないからな。


教えなければならない事てんこ盛りだな?


「そ、そうか。私は無駄な事をしていたのだな?」


「いいえ? 貴方がしていた事も国を動かす上で大事な仕事です。その内容を把握出来たのですから無駄ではありません。仕事の内容も良く分かってらっしゃるのですから、仕事の割り振り方も、それにどれだけの労力と時間が必要かも知れたでしょう? では、それに見合う指示を臣下に与えて下さい」


「そろそろ休憩しましょう。リディ様もこう立て続けに執務室に拘束されては参ってしまいます」


「いや、私は大丈夫・・・・」


「そうですね? 私はミルクティーが飲みたいです」


「私はストレートにして下さい。デズロ様情報では、アトレイア様のお茶はとても美味しいのだとか?」


リディ。

なんだその嫌そうな顔は。

話は聞いていたが、父親と仲が悪いのか?

いや、一方的に嫌っているのか。


「わざわざ、あの方に入れさせなくとも。使用人に用意させますので・・・」


「「え? 美味しいお茶が飲みたい」」


「・・・・・・分かりました。少し、お待ち下さい」


カスバールには初めて来たが、国土が回復して来てるとはいえ私達から見たらまだまだ荒れ果てている。


これでは人が安心して暮らすには程遠い。

家がなく外で生活を強いられている者も多くいるようだ。

犯罪も多く人が襲われる頻度も高い。


「で? ケルベナはリディの事どう思った?」


「飲み込みが早いからこのまま行けば問題はないだろうが、私達がずっと此処に居るわけにはいかないからな。リディをちゃんと補佐出来る人間が必要だ。私達が彼に皇としてのノウハウを教えるにも、時間が短すぎる」


私達はあくまでメリルの代わりに此処に来た人質だからな? 人質はあまり目立つ事はしてはならない。

目立ってはいけないんだぞ?


「面倒だな。サウジスカルから数人派遣するか? 裏から私達がこの国動かしちゃうか?」


「暇だからってふざけるなよ。間違っても兄様に此処で死んでもらっては困る。私達はセルシスの剣と盾だろ?」


「ケルベナは真面目だな。真面目ぶってるな? 内面はふざけきってるのにな?」


「エル兄様程ではない。で、いつ動くと思う?」


リディには伝えてないが、メリルがカスバールを出る途中刺客に襲われたという情報がある。しかも、メリル本人も命を狙われたようだ。


つまり、メリルの能力目当てではなく、メリルを邪魔だと思っている者が今回の犯人なんだが、疑わしい人間が多過ぎて検討が付かない。リディがここの人間を信用しないのも頷ける。


「どうだろうな? そもそも、メリルを襲った者は本気でメリルを殺す気があったのだろうか? 」


あったんじゃないか?

ティファ達が何とか凌いでサウジスカルに到着したらしいぞ?何が言いたいんだ?


「・・・・本気でメリルに勝てると? 彼女の魔力はデズロ様に匹敵するらしいぞ? 本当にそれが目的だったのか?」


「・・・・わざと襲わせて見せたと? 何の為に?」


「さぁな? だが、犯人はこの宮廷内の人間で、メリルやリディに近い者ではないかと私は予測している」


本当に敵だらけだな?

だからリディに何も伝えなかったのか。


「それは、俺の予想してる人物と同じだと思うか?」


「恐らくな? だが、確信はない。悟られるなよ?」


俺達の勘の良さも大概だな。

自惚れではなく大樹に振り回された我が国が沈まなかったのは俺達の一族のお陰だと思うぞ。


「さて。取り敢えず私達は記念すべき初喧嘩の仲裁にでも入るとするか」


「・・・エル兄様は性格に難ありだな。だから、婚期を逃したのでは?」


「お前、人の事言えないだろ? セルシスでも結婚できたんだ、私に出来ない筈がない」


いや、セルシス兄様は俺達兄弟の中でも一番人間らしい感性を持ち合わせている。貴方は一生結婚できない。父様も実は諦めている。因みに俺が結婚しないのは、密かな願望があるからだ。笑われるから絶対口には出さないが。


「お前も、いい加減諦めろ。本気で恋したいなどと、どこぞの乙女みたいに夢見てると一生結婚出来ないぞ?」


何故バレた。

一度だって口に出した事ない筈なんだが?

いや、俺はちゃんと恋愛して結婚する。

嫌なんだ、政略結婚なんて冗談じゃない。


「父様と母様の事はもう気にするな。あの人達はアレで幸せなんだ。ちょっと歪んでるが、愛があるのは事実だろ?」


「そうだな。だが、自分に関してはお断りだ。私はまともな相手と添い遂げる。どうぞ俺の事はお構いなく」


「・・・・本当に、お前誰に似たんだろうな? ピュアか?」


そうではない。

兄様達が適応し過ぎなんだ。少しは反発しろ。

自由奔放にも程があるだろ俺達の両親は。


リディ、親になんて夢みるものじゃないぞ?

本当がっかりするからな?

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