テニアは留守を任される
「と、言う訳で二人はチェシャと一緒にリディの所にいて欲しいの。私がサウジスカルから帰るまで」
リディ様、また思い切りましたわね。
あれ程メリル様を此処から出すのを躊躇われていましたのに。それとも、このタイミングだからこそ決断されたのでしょうか?
「メリル・・・戻って来るよね?」
「うん。用事を済ませてお姉ちゃんがお世話になってる人達に挨拶して帰って来るよ。お土産何が良いかなぁ」
「遊ぶ気満々ッスね? 心配しなくても嫌がったら俺が連れて帰って来るッス。心配ないッス」
それにしても急すぎますわ。
いくらメリル様のお姉様とは言え、余りに身勝手ですわね? 今までメリル様を放置していたにも関わらず、必要になったら強引に連れて行ってしまうのですから。
「メリル! 直ぐ出れそうです?」
「あ! お姉ちゃん丁度良かった。紹介するわ、この人がテニアで私の身の回りの世話をしてくれてる人。それでこちらがシャミ。私の婚約者。で、この人がテット。私の騎士」
「初めまして。メリルの姉のティファです。メリルがいつもお世話になってます」
・・・・・・話には聞いていましたけれど、メリル様とは全然似ておりませんわね? なんと申しましょうか・・・とても、お綺麗な方ですわ。それと、この方の顔、見覚えがありますわね? 私ティファ様とは面識はない筈なのですが・・・何処かで見た事がありましたかしら?
「あ〜あと・・・奥にチェシャもいるんだけど・・・」
「チェシャ?」
「ナシェス様ッス。メリル様からお話伺ってますよね?」
分かりやすいですわ。この人、チェシャの事嫌いですのね? 本当に嫌いですのね? なんだか、胸がスッとしましたわ。
「会わないよね?」
「・・・・ナシェス様には会う気はありません。チェシャさんは初対面ですので会っても構いませんが?」
「じゃあ俺チェシャ連れて来る! ちょっと待ってて」
「えー? 大丈夫かなぁ? チェシャああ見えて超一途だよ? またストーカーされちゃうかもよ?」
「大丈夫です。今度は私の背後にハイトさんが控えてますので! メリルもハイトさん舐めてると大変な目に合いますよ? あの人無害に見えてエキセントリックですので」
申し訳ありませんティファ様。私、ティファ様の仰ってる事がイマイチ理解出来ませんわ。エキセントリック、とは?
「なんだシャミ・・・一体なんの騒ぎ・・・・」
「初めまして。メリルの姉のティファです。チェシャさん?」
「ティーッ!!」
あら。硬直したまま動かなくなりましたわ。
コレ実は銅像でしたかしら?ツンツン。
「私の都合で数日メリルをお借りします。こちらも今、とても大事な時期だと伺ってます。そんな中、大事な役割を持つメリルを自分勝手に連れ出す事、どうかお許し下さい」
「・・・・・メリルとリディが了承したのなら問題はないだろう。謝る必要はない」
「ティファー? あ、こんな所にいたな? メリルちゃん達支度は・・・・・・・」
「必ず無事にメリルを此方へお返しします。傷一つ付けず貴方達の下に彼女を送り届けるとお約束致します。私の、命に賭けて」
この方・・・・私達の前で膝をつきましたわ。
このカスバールで最強と呼ばれた騎士だというのに。
「・・・メルロー、マッジン」
「「ハッ!」」
「・・・・え?ちょ、ちょっと? ハイトさん?」
これは、この方達なりの私達に対する誠意なのですわね?
騎士が自分の主人以外に頭を下げるなどカスバールではあり得ませんわ。
「我々も決してその誓いを破りません」
「サウジスカル騎士団の名に賭けて」
「必ずや笑顔のメリル様をお返し致しましょう」
これが、サウジスカルの騎士。
メリル様のお姉様が信頼する仲間なのですわね?
仲間を助ける為なら、どんな困難にも立ち向かえる人達。
「大袈裟だなぁ・・・少し旅行に行くだけだよ? 直ぐ帰って来るから。もぅ・・・・」
「だが、冗談ではなく道中気を付けろ。お前は常に狙われているのだからな?」
「チェシャもね? 私が居ない間、リディを頼むわよ? 絶対に死なせたりしないで」
そろそろ、不穏分子が動き出すタイミングですわね。
私もその一部でしたので、分かっておりますわ。
「私の事は心配しなくて大丈夫だよ? なんたって私とお姉ちゃんだからね? 私達本気出したら最強だよ? ね? お姉ちゃん」
「メリルは戦っちゃ駄目ですよ? 傷一つ付けませんから。頭のタンコブを除いては」
「え! ちょっと待って?まさか定期的に私の頭にチョップをかます気じゃないよね? その予告じゃないよね?」
「それはメリルの態度次第ですね? 貴女ハイトさんに対して態度が悪くないですか? 気のせいです?」
バレておりますわね。
メリル様ティファ様の婚約者様が姿を見せた時、思い切り睨みつけておりましたものね? いい加減諦めたらいかがです?
「そんな事ないわよ! 被害妄想も大概にして欲しい。別に私お姉ちゃんの婚約者なんてどうでもいいし!」
「メリル!言葉には 気を付けろ! 下手をすると寝首をかかれるぞ!」
「ちょっとチェシャさん? 初対面なのに中々失礼だよ? 僕がメリルの寝首をかくとでも? それこそ行き過ぎた妄想だよね? そう、思わない?」
「ち、近寄るな!」
「もういいから。切りがなくなるから。ハイト、ちゃんと本性を隠してくれ。安心させる為に誓いを立てたのに、これじゃ不安要素しか残されない」
本当ですわね? サウジスカルの騎士の方達も大変ですわね? まともそうな方がいらして安心しましたわ。
私達のメリル様をお任せしましたわよ。
「テニア、シャミ悪い。ここは、任せたッス」
「うん! テットメリルを守ってね?」
「仕事、サボらないでくださいませ?」
信じてますわテット。
だから、貴方も無事で帰って来て下さいませ。




