宰相達は疑問に思う
皆様御機嫌よう。
私はカスバール国の宰相を務めている。
早速だが、愚痴を聞いて貰えるか?
「宰相様! また新たな地形変動が起こりました! 住民の避難が追いつきません!」
「落ち着け。とにかく今一番被害が大きい場所を探すんだ」
最近やっと落ち着いていたと思えばいきなりの大災害だ。
私は泣きたい。しかも、いつの間にやら陛下が居なくなっていたのだ! どうなっているんだ! こんな緊急時に!
「ヒューズ! すまない、遅くなった」
「陛下! 今まで何処に行ってらしたのです!」
「慌てるな。これは厄災ではない。カスバールが元の姿を取り戻そうとしているんだ。この国に本来あるべき物が戻って来た。私は、そこへ行っていたんだ」
本来あるべき物? 何ですかそれは。
「詳しい話は後だ。メリル。上から見てどう思った?」
「見たところ人が住まう場所の被害は無かったと思うよ。精霊もそこは気を使ってくれたみたいだね。ただ、山やら川やら植物やらが邪魔で人の行き交いが出来なくなる可能性があるから、それを取り除く事が先決だね。東側が特に目立ってたから、そちらと、あと勿論この辺りも整備しないと。この宮廷で魔法が使える人間はどれぐらいいるの?」
「今は恐らく50人程度、その内まともに魔法が使える者は20人程度だと・・・・」
「元々アースポントの要因だからね。この宮廷はまともな兵士が少ないから少数精鋭で動かないと。チェシャ、シャミ」
ちょっとメリル様。
宰相の私を差し置いて勝手に事を進めないで欲しい。
少しぐらい私の意見を取り入れて欲しいんだが?
「貴方達はリディの側にいて。ラフィネラも連れて出たい。人が足りな過ぎる」
「お待ち下さい! ラフィネラは陛下の側近ですぞ?」
「構わない。直ぐに向かってくれ。住民が閉じ込められた場所を見つけたら早急に対処して欲しい。各領地ごとに問題のある場所を調べさせこちらに知らせるよう伝えよ。宰相」
貴方もですか! ああそうですか!
デズロ様の言う通り老人は必要ないですかね?
「かしこまりました。では、各地の領主に早急に連絡致します。しかし、どうやって知らせましょう」
「文を用意してくれれば魔法で一斉に各地に飛ばせるから、私のお父さんに渡してくれる? それぐらいの魔力ならお父さんでも出来るから。操作系が得意なの」
そうなんですか。
テゼール殿は魔法があまり使えないと聞き及んでおりましたからな。それは助かる。
「コレを乗り切ればカスバールは少なくとも、極端な飢餓や厄災に見舞われる事は無くなる。魔力がこの地から無くなる事も。だから・・・・」
「誰も死人を出したくないんでしょ? 分かってる」
「帰って来たばかりなのに忙しないっすね〜! ちゃちゃっと行ってちゃちゃっと帰って来ましょう。リディ様ついでにチェシャにご飯食べさせておいて下さいね?」
なんだろう。
この者達は前からこんな感じだっただろうか?
何故、こんなにも生き生きした顔をしているのか。
「さぁ! ひと働きしますか!! 行くわよ!」
「行ってらっしゃ〜い!」
それに、今信じられない言葉が耳に入って来たような?
「カスバールが、何と申されました?」
「この国が長年こんなにも荒廃し続けた理由が判明した。そして、今日。カスバールはその原因が取り除かれた。つまり今日から、カスバールが急に沈む心配をしなくて済むと、言う事だ」
そんな馬鹿な。いつの間にそんなに話が進んでいたのだ?
まさか、デズロ様達が来た時既に?
「内容が内容なだけに今迄お前達には知らせなかった。宮廷内の揉め事も多かったからな。ヒューズ」
「何でしょう?」
「私が、何故この話を今迄しなかったか、察しはついているんだろう? 国土の問題が解決しても、この宮廷内の問題は解決していない。お前には宮廷内を新たに整理してもらいたい」
これはまた、嵐の予感だな。
しかし、前と違ってリディ様が心強く感じられるのは、少しお変わりになられたからか。
「同時に兵士や魔術師の召募を続けてくれ。勿論前のような問題が起きないよう目の届く範囲でな」
やはり、私達の中にリディ様が信用出来ない者がいるのですね。私にそれを話されたという事は、私は一応そこから除外されたのか。成る程。
「この処理が終わったら、私はまたあの場所に行かねば。精霊は誕生したらしいが、実際会う事が出来なかったからな」
後から詳しい話を聞いて俄かに信じられなかったのは、私が頭が硬いせいではないと思う。
誰が想像出来るというのだ。
カスバールがこんなにもひっ迫した原因が、我が国の精霊が誕生出来なかった所為などと。
きっとこれを知ったら皆ひっくり返るぞ。
「・・・・・・・・・まさかな。そんなはず」
ふと、私の頭の中で嫌な考えが湧いて出た。
こんな事、誰も知らなかった筈だ。
今まで誰も。だが、何故かあの方の言葉を思い出した。
あの方が度々口にしていた、あの言葉。
"我々は、神に見捨てられたのだ。ならば望み通りにしてやろう"
本当に、誰も知らなかったのだろうか?
もし、もっと早くに気付いた者がいたとしたら?
この時、私はその考えを無意識に握りつぶした。




