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第98話

新選組 近藤の部屋-


近藤、土方を前に腕組をして座っている。


近藤「総司が…捨てるなと言ったか…」


土方が、沈痛な表情でうなずいた。


土方「…総司は、幼い頃に家族から離されている…。たぶん、その頃の自分と同じように思ったのかもしれない。」

近藤「しかし、このままでは…。総司の命をどんどん縮めていってしまうぞ…。」

土方「…我々の元から無理やり離して…寂しい思いをさせて死んでしまうよりもいいんじゃないかと思うんだが…」


近藤が、目を見開いた。


近藤「歳!…それじゃ、総司がどっちみち早死にしちまうとでもいうのか?」

土方「いや、近藤さん…。私も総司に話すまでは、隊から離れた方が少しでも長生きするんじゃないかと思っていた…。でも、総司にあんな風に言われちまうと、無理やり引き離すのが酷なような気持ちになってな。あれは、独りきりにさせられたら、よけいに命を縮めてしまうかもしれん。そんな気がするんだ。」

近藤「……」

土方「あいつは…俺たちの腕の中で死にたいんじゃないかな…」

近藤「…歳…」

土方「まぁ、そう言いながら、総司の方が長生きするかもしれないじゃないか。…だから、近藤さん。ずっと俺たちと一緒にいさせてやろう。…それが総司にとって一番いいんだよ。」


近藤は、ため息をついて、うなずいた。


近藤「…そうだな…」


二人は、しばらく沈黙した。

やがて土方が「それじゃ…」と言って立ちあがった。


近藤「ああ…歳…今、総司はどうしている?」

土方「さっき床を引いて寝かせたよ。ぐっすり寝入っているだろう。」

近藤「そうか…」

土方「顔を見に行くくらいならいいんじゃないか?あれの寝顔は子供の頃から変わらんぞ」


土方はそう言い、苦笑するような笑みを見せながら部屋を出ていった。


近藤は、しばらくためらっていたが、やがて「うん」とうなずいて立ちあがった。


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