第97話
新選組屯所-
総司は土方に呼び出され、廊下を歩いていた。
総司「なんだろう??最近はずっと部屋にいるようにしているし…何か怒らせるようなことをしたかな?」
総司は、土方の部屋の前につき名乗った。土方の返事がする。総司は中へ入った。
土方の視線が何か厳しい。総司は心の中で首を傾げながらも、土方の前に座る。
総司「土方さん…なんでしょう?急に呼び出して?」
土方「…総司、しばらく新選組から、離れないか?」
総司「!?…」
土方「しばらく隊の仕事から離れて…どこか空気のいい、静かな所で休まないか?」
総司はじっと目を見開いたまま、土方を凝視している。
土方「ずっと、休みが欲しかったんだろう?」
総司「…そういう休みじゃありません…」
総司は憮然としてそう答えた。しばらく二人は、にらみ合うようにして黙っている。
土方「なぁ…総司…。正直に言うが…このまま隊にいるとお前は、病に蝕まれていくばかりだ。静かな所で静養すれば治るかもしれないと、医者も言っている。…落ちついてからまた戻ってくればいいじゃないか。」
総司「いつになるかわからないじゃないですか。…もしかすると、隊を離れたまま死んでしまうかも…」
土方「総司!」
総司「だってそうじゃないですか!どうしたって、人は死んでいくんです!私の場合は、それが人より少し早まるかもしれない…それだけです!」
土方「……!」
総司「…人より命が短いかもしれないからこそ…」
土方「…総司…」
…間…
総司「私は江戸を出る時に、どんなことがあっても、近藤先生と土方さんについていくと決めたんです。絶対に離れたりしません。」
土方「……」
総司「でも…私のことが邪魔だとおっしゃるのなら…土方さんに従います。」
土方「!!…」
総司「私は足手まといですか?」
総司は、じっと土方を見つめている。鋭い視線の中に、何か哀しげな光がある。
土方は、心を鬼にして何かを言おうとするが、ふと胸がつまって何も言えなくなる。
総司「…!…」
総司が突然咳込んだ。
土方「!…総司!」
土方は総司を抱きかかえるようにして、背をさすった。総司は咳込みながら黙ってされるがままにしている。やがて、咳がおさまる。
土方「…大丈夫か?…」
総司は、うなずいた。
総司「…私を…捨てないで下さい。」
土方「!…総司…」
総司「隊にいさせてください…できるだけ迷惑をかけないようにしますから…」
土方「…違う総司…そういうつもりじゃないんだ…!」
総司の肩が震えている。
土方「すまん…総司…すまん…」
土方は総司の頭を抱くようにして、涙を堪えた。




