第84話
総司の部屋-
土方が突然ふすまを開けて入る。
土方「総司っ!」
総司は、文机の前で座っている。
土方「ばかっ!横になって休んでろ!」
総司「…大げさだなぁ…。稽古中に、咳が止まらなくなっただけじゃないですか。」
土方「私の命令だ。ほら、寝るんだ!」
傍にはちゃんと床が引いてある。さっきまで中條がいたのだが、大丈夫だからと下がらせたところである。総司はしぶしぶと床に入った。横になってから、少し軽く咳をする。
土方「…薬は!?飲んだのか?」
総司「はい。飲みましたよ。」
土方「ちゃんと、毎日飲んでいるのか?」
総司「……」
土方「ばかっ!そういうことだから、こんなことになるんだ。」
総司「怒鳴らないでくださいよ。病人なんだから。」
土方「こういうときだけ、病人になるんだな。おまえは!」
総司がくすくすと笑った。
その時、近藤の声が外から聞こえてきた。
近藤「総司!」
総司は、げんなりとした表情して呟いた。
総司「もっとうるさい人が来た…」
近藤「総司!!!大丈夫か!!?」
ふすまを開いて入って来た近藤に、土方が苦笑しながら言った。
土方「…病人に怒鳴るなだとよ。」
近藤「あ…すまんすまん…。大丈夫か?もう咳はおさまったか?」
総司「大丈夫です、近藤先生。ご心配をおかけしました。」
近藤「ちょっとここのところ、一番隊に無理をさせたな。」
総司は(いつもなんだけどなぁ…)と思っている。
近藤「二日ほど休みをやる。よく休むんだぞ。」
総司「二日ももらえるんですか?」
総司が嬉しそうに起き上がろうとした。
近藤「ただし、外へ出たらだめだ。…休みにならん。」
総司「!?…近藤先生…」
近藤「とにかくゆっくり体を休ませるんだ。一番隊のものに交代で見張らせておくからな。」
総司は不服そうに体を戻した。
土方は気の毒に思ったが、心を鬼にして近藤と一緒に部屋を出た。
残された総司は、ぼんやりと天井を見た。
総司「またあの人に会う日が延びてしまったな…」
思わず呟いた。




