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第79話

新選組屯所前--


総司と九郎がつくと、中條が門から出てきていた。


中條「沖田先生!…今、お迎えにあがろうと思っていたんです。」


中條はそう言ってから、総司の後ろにいる九郎に気づいた。


中條「あ、九郎さん!…送ってきてくださったのですか!」


九郎は、少し照れくさそうに頭を掻いた。


総司「途中でだんごもつきあってもらったよ(笑)」

中條「え?九郎さんがだんごを?」


中條が意外そうな顔をした。総司がくすくすと笑った。


九郎「では、某はこれで。」


九郎は深深と二人に頭を下げると、立ち去ろうとした。


総司「九郎殿…少し汗をかいて行きませんか?」

九郎「…は?」


中條も不思議そうな表情で総司を見た。


総司「…うちの者に剣の稽古をつけてやって欲しいんです。」

九郎「ええええええええっ!?」


九郎は、とたんにとびずさった。


九郎「めめめめめっそうもないっ!某の腕など、相手になるようなものでは…」

中條「それはいいですね!…僕、稽古に出られる人を集めてきます。」

九郎「おおおおおおい、中條っ!!こらーーーっ!」


九郎が飛ぶように中條に組みついた。そして、中條をひきずると、総司に背を向けるようにして中條に言った。


九郎「(必死に小声で)ばかやろう、おめえ…。何考えてんだ!俺に恥をかかせる気かっ!?」

中條「大丈夫ですよ!九郎さんの腕は僕が目の前で見てるんですから…」

九郎「俺のは自己流でめちゃくちゃ剣法なんだぞっ!…笑い者になるに決まってんじゃねぇか!」

中條「勝てば笑われませんよ。」

九郎「おめえええええええっ!!」


二人がもめているのを、総司は苦笑しながら見ていたが、やがて九郎に話しかけた。


総司「さぁ、入って下さい。すぐに用意をしますから。」


九郎は顔色を変えて、中條をつき離し思いっきりとびずさった。


九郎「某は未熟ゆえ、もう少し修行してからお願いいたす!それでは、仕事があるので失礼いたします!」


そういい終わるか終わらないうちに、九郎は背を向けて走り去った。

中條が追いかけようとしたが、総司は笑いながら止めた。


総司「本人が嫌がっているのなら仕方がない。またあらためてお願いしましょう。」

中條「はあ…」

総司「…あなたにおみやげがありますよ。心配をかけたお詫びです。」

中條「え?」


中條は驚いて総司を見た。


総司「饅頭です(笑)一番隊の皆にも買ってきました。大部屋に参りましょうか。」

中條「…はい…!」


中條は嬉しくなり、総司から饅頭の包みを受け取ると、走るように大部屋へ向かった。

饅頭が嬉しいわけではない。

総司が、久しぶりに大部屋に来てくれることが嬉しかったのである。


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