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第47話

新選組屯所 土方の部屋-


総司は下向き加減に土方の言葉を聞いている。


土方「おまえが情報をもらすなどとは思っていない。しかし、その想い人とやらと会うのは、しばらく自重してくれんか?」


総司は答えず、じっと黙っていた。

可憐の父親が長州びいきだということは総司も知っていた。そのために別れようとさえ思ったのだが、友人礼庵の助けもあって、今でも会い続けていた。

そんな時、隊の情報がもれていることが発覚したのである。総司はまさか自分が疑われることになるとは思わなかったが、可憐の父親が長州人が出入りしている料理屋に頻繁に通っていることを、監察方がかぎつけたのである。


土方「それだけじゃないんだ。」


土方が身を乗り出すようにして言った。


土方「向こうは向こうで、新選組の幹部を捕らえたら、賞金を出すという手段に出ている。一番心配なのはお前なんだ。」


総司は少しむっとした。


総司「?…何故です。私がやられるとでも?」

土方「まともに向こうが来てくれりゃぁ、大丈夫だろうが…。どういうやり方で来るかわからないぞ。お前の想い人とやらを使うかもしれない。そうなりゃ、お前が何をしでかすか…」


総司は全身の毛が逆立つような怒りを覚え、立ち上がろうとした。


総司「それならばこうしてはいられません!あの人に何かあったら…」

土方「まぁ待て!想い人とやらの家は監察に見張らせているから大丈夫だ。…言わんこっちゃない…もう取り乱しているな、総司。」


総司は黙りこんで座りなおした。


土方「外に出る時は、監察の島田を連れていけ。そうでなければ外出禁止だ。それから女には会うな。いいな総司。命令にそむけば、一生その想い人に会えんと思え。」

総司「……わかりました。」


総司は身を切られるような思いで答えた。


……


翌日-


山崎から話を聞いた礼庵が総司の部屋を訪れた。


礼庵「…まるで、籠の中に閉じ込められた鳥だな。」


礼庵は総司の顔を見て笑いながら言った。


礼庵「ちょっと外の空気を吸いませんか?」

総司「そうしたいが…」

礼庵「島田さんを連れていったらいいのでしょう?ずっと中にいたらお体によくない。」


総司は、礼庵の言葉にうなずいて立ちあがった。


……


総司と礼庵、そして島田は屯所を出て、川辺に向かっている。

礼庵が、先頭に立って歩いている。


礼庵「散歩にしては、この3人じゃさまになりませんね。」


笑いながら言う礼庵のその言葉に、総司と島田が苦笑する。

礼庵が島田に振りかえる。


礼庵「…島田さんは、別に総司殿を疑っているわけではないのでしょう?」

島田「ええ。もちろんです。…ただ、命令ですから…。気の毒なのは沖田さんです。」


総司は一人離れて川辺にしゃがみこんでいる。

島田と礼庵、そんな総司をじっと見ている。

礼庵が腕を組んで、口を開いた。


礼庵「…可憐殿を想っているのでしょうね。」

島田「ええ…気が気でないと思いますよ。沖田さんを狙うとすれば、きっと可憐殿を使うでしょうからね。」


島田の言葉に、礼庵はうなずいて大きくため息をついた。

礼庵は総司に近寄り、総司の肩に手を乗せた。

総司は、はっとしてその手を見、礼庵を見上げた。


礼庵「…私が守ります。」

総司「…!」


総司は立ちあがって礼庵を見た。


礼庵「私が可憐殿を守ります。」

総司「礼庵殿…」


総司は真剣な目で自分を見ている礼庵に体を向ける。


礼庵「本当は、隊の人が守ったほうが確かなのでしょうがね。でも今は新選組の人間がそうするわけにも行かないでしょう。」


島田が近寄り、にっこりと微笑んで総司を見ている。


礼庵「私も気が気じゃない。可憐殿に惚れている人間の一人としてね。」


その礼庵の言葉に、総司はやっと微笑を見せた。


礼庵「疑いの方はすぐに晴れますよ。しばらくの我慢です。」


総司は、その礼庵の言葉にうなずいた。


総司「…あの人のことを頼みます。礼庵殿」


礼庵が、にっこりと微笑んでうなずいた。

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