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第27話

近藤の部屋-


総司は近藤の部屋へ、障子を蹴飛ばさんばかりの勢いで飛び込んだ。


総司「近藤先生!」


見ると、近藤が驚きのあまり、目を見開いてこちらを見ている。


近藤「どうした?総司…?」


総司は近藤の無事な姿を見て、その場へ座り込んだ。


総司「…先生…ご無事で…」


総司は息を弾ませながら言った。その時思わず咳が出た。


近藤「総司!…大丈夫か?」


近藤が立ち上がり、総司の傍に寄った。

総司は咳き込みながら「大丈夫です」とやっとの思いで答えた。


総司「とっさに走ったので…。すいません。…先生が襲われたと聞いたので、思わず…」

近藤「私は大丈夫だ。…心配をかけてしまったな。」


近藤は総司の背中をさすりながら、微笑んで言った。

総司は首を振った。


……


近藤がいつもの場所へ座り、その前に土方、そして総司が少し2人から離れて座っている。


近藤「歳さん達も襲われたとは…。二人一緒でよかった…。」

土方「総司の奴は、私がいるせいで襲われたとかいいやがるんだ。」


土方がそう言うと、総司は首をすくめてみせた。近藤が笑った。


近藤「確かにそうだな。…新選組の重鎮が二人並んでいたら、襲わずにはいられんだろう。」

土方「笑い事じゃないぞ。近藤さん。…どうも襲ってくるのは大した奴らじゃないようだが、うるさくてかなわない。その賞金を出すといっている奴を捕まえて、早いことやっちまわないと…」


近藤が短くうなった。そしてふと顔を上げた。


近藤「私をかばって斬られた隊士は…どんな様子か聞いていないか?」

土方「外科医の所に行ったままだ。…まだ何も聞いていないが…」

近藤「じゃぁ、生きているのだな…。なんとか助かってくれればいいが…」


近藤が心底から心配しているのを、総司は感じた。

対して土方は、逃げた隊士の処分のことを考えているようである。


土方「逃げた隊士も早く捕まえないと…逃げ切られたら、隊士達の士気にも影響する…。」


総司に嫌な予感が走った。


土方「総司、逃げたのが見つかったら、お前が介錯をしてくれ。」

総司「…そう来ると思いました。…私はお断りします。」

土方「おい、早々と断るなよ。」


そう土方が苦笑した時、ふと何かを思いついた表情をした。

総司に再び嫌な予感が走った。


土方「あの棒振り男…介錯はまだやったことがなかったかな。」

総司「!…中條君にやらせるのですか!?」

土方「いい機会だ。奴の腕を見せてもらおう。」

総司「……」


総司は言葉に詰まった。新人隊士が介錯をすることは、隊の定例でもある。…が、敵にも優しさを見せる中條が、介錯を滞りなくこなせるかどうかは不安だった。もしそこでしくじって、土方の機嫌を損ねたら…それこそ、彼自身もどうなるかわからない。


近藤「私もその男の話は、歳さんから聞いている。一緒に見せてもらおう。」


近藤がにこにことして総司を見ていた。

総司は困り果てた表情でその場に固まっていた。

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