裏作業:彩女の森 後編
本日2話投稿しております
こちらは2話目です
「あなた達メルティーズは全員、メルに1度殺されてから復活してます。ですけどその時メルが復活させたのは体と記憶だけで、あなた達が持ってた能力はメルがまだ預かってる状態です。まあ、こんなことは今更説明しなくても分かってますよね?」
メルが全員に尋ねると、オニキスを除く6人が頷いた。
「オニキスも、あなたの能力をメルが預かってることは気付いてますか?」
「えっ?あ、うん……い、言われて分かった……」
まだ復活したばかりのオニキスは、メルに言われて初めて能力が失われていることに気付いたようだった。
「じゃあなんでメルがあなた達を復活させるとき、能力まで一緒に復活させなかったか……クリメイト、分かりますか?」
「げっ」
メルが教師を気取ってクリメイトを指名すると、クリメイトは嫌そうに顔を顰めた。
「……最初に復活させたアタシが反抗的だったから、でしょ?」
「大体正解です。クリメイトはメルのことを憎んでて、能力を持ったまま復活させるとまた戦いになりそうでした。だからメルはクリメイトを復活させる時、能力だけは預かっておいたんです」
「ね~ね~クリメイト、なんでオリジンを憎んでたの~?」
「……その頃は尖ってたのよ」
アンライプの無垢な質問に、クリメイトは赤くなった顔を背けた。
「次にメルが復活させたファンファーレも、クリメイトと同じ理由で能力を預かっておきました」
「……ちょっと待って、オリジンちゃん」
クローラが小さく手を上げ、メルの話を遮る。
「クリメイトちゃんはともかく、ファンファーレちゃんがそんなに凶暴だったなんて、お姉ちゃんには思えないわ」
「ちょっと、アタシはともかくってどういう意味よ」
「だよね~!ファンファーレ、いっつもニコニコしてて優しいもん!」
クローラの意見にアンライプも同調する。
「あ~、まあ、そうですね~……」
「オリジン。私の口から説明させていただきますわ」
口籠ったメルに代わり、ファンファーレがすっと立ち上がる。
「オリジンに殺される前、私はこの森に住む怪異達を精神干渉能力で無理矢理お友達にしていました。その行動の非道さを、森へいらっしゃったオリジンが指摘してくださったのですわ」
「言ったのメルじゃなくて常夜見さんでしたけどね」
「私はそれに対して激昂し、オヨロズをけしかけてオリジンを殺そうとしましたの。ですがオヨロズはオリジンに敗れ、命を落としてしまいましたわ。そして私はオヨロズを殺めたオリジンを逆恨みし、オリジンに強い憎しみを向けましたわ。森の怪異達の心を支配していたことも、オヨロズが死んでしまったことも、全ては私のせいだというのに……」
「そこまで自分を悪く言わなくても……もう済んだことですし……」
「その後私はオリジンに挑み、敗れ、そしてオリジンが私を蘇らせてくださいましたわ。ですがその時私がまだ精神干渉能力を有していたら、私は恥知らずにも再びオリジンに襲い掛かったことでしょう。ですから蘇った私に能力を与えなかったオリジンは、正しい判断をなさったのですわ」
私からは以上ですわ、とファンファーレが再び椅子に腰を下ろす。
ファンファーレの罪の告白めいた説明によって、場には重苦しい沈黙が舞い降りた。
「ま、まあ……ちょっと自分を悪く言いすぎてましたけど、大体ファンファーレの言った通りです。クリメイトもファンファーレも、能力を持ったまま復活するとすぐに2回戦が始まっちゃいそうだったので、復活させる時に能力は預かっておきました」
「ねぇオリジン、ちょっといい?」
スプリットが右手を挙げて発言の許可を求める。
「自分で言うのもなんだけど、私は2人ほど反抗的じゃなかったと思うんだけど……なんで私も能力返してもらえなかったの?」
スプリットの言うことはもっともだ。
スプリットはクリメイトのように反抗的ではなく、ファンファーレのように激昂してもいなかった。仮に能力を没収せずに復活させたとしても、即座に再びメルへと襲い掛かるようなことは無かっただろう。
「そう!問題はそこなんですよ!」
我が意を得たりと言わんばかりに、メルはビシッとスプリットを指差した。
「あなたの言う通り、スプリットは別に能力を預かる必要はなかったんです!じゃあどうして復活させる時に能力を返さなかったかって言うと、それは~……」
「それは……?」
「……単純に、前2人に能力返さなかったから、流れでスプリットにも返さなかっちゃったんですよね……」
「えぇ……?」
能力を没収されていた理由がただのメルのうっかりだと知り、スプリットが苦笑する。
「で、スプリットに能力返さなかったから、テクトニクス以降もずっと能力返さないままオニキスまで来ちゃったんですよね……ごめんなさい」
頭を下げるメル。しかし以外にもメルティーズ達から怒りの言葉は飛んでこなかった。
メルティーズ達のリアクションを総括すると、「無きゃ無いでまあ……」のような感じだ。
「話って言うのはそれ?私達に能力を返してないのを謝りたかったとか、そういうこと?」
「ああ違いますスプリット。本題はむしろここからで」
メルは一旦話を仕切り直すため、こほんと軽く咳払いをした。
「今日はですね。折角メルティーズも全員集まったことですし、そろそろみんなに能力を返そうかと思いまして」
「みんなにって……アタシとファンファーレにも?」
「はい。クリメイトもファンファーレも、能力が返ってきたからって今更暴れたりはしないでしょ?」
クリメイトとファンファーレが互いを見つめ合う。
「まあ、そりゃしないけど……」
「私もですわ。オヨロズもこうして蘇った今、私にはオリジンと戦う理由などありませんもの。ね、オヨロズ?」
「うむ……そうだな……」
「えっ、オヨロズいたんですか?」
メルがテーブルの下を覗き込むと、そこでは小さな柴犬のようなオヨロズが丸くなっていた。
「ああ……桜庭メル……挨拶が遅れてすまにゃふぇあ……」
「眠すぎて呂律が回ってない……!」
ファンファーレに声を掛けられて目を覚ましたらしいオヨロズは、メルに対して挨拶らしき言葉を口にすると、すぐにまた夢の世界へと旅立って行ってしまった。
「ま、まあとにかく!今となっては、メルがあなた達の能力を預かっておく理由も無い訳ですよ!だからそろそろみんなにお返ししようかな~って思ったんですけど……この反応は何なんです?」
メルはてっきりメルティーズ達が大喜びするものだと思っていたのだが、予想に反してメルティーズ達の反応は平淡だった。
お互いがお互いの様子を窺うように顔を見合わせ、やがて代表してクリメイトが口を開く。
「いや……いいわよ別に、今じゃなくて」
「ええぇっ!?」
メルの驚きの声が彩女の森に木霊する。
「なっ、なんでですか!?能力要らないんですか!?」
「要らないってことは無いわよ。あった方がそりゃ便利だとは思うし。でも別に今じゃなくても……」
「えっ、今だと何か都合悪いことあるんですか!?」
「アタシ達は別に不都合無いけど……だってアンタ、明後日にヤバい敵と戦うんでしょ?」
「えっなんでそれ知ってるんですか?」
御伽星憂依・アタナシア及び憂依が生み出す禍津神との戦いが控えていることを、メルはメルティーズ達に話してはいない。
「昨日魅影が来て言ってたわよ。世界が滅びるかもしれないから気を付けなさいって。そんなこと言われても気を付けようがないじゃないの」
「常夜見さん、いつの間にそんなことを……」
魅影が昨日彩女の森を訪れていたことなど、メルは全く知らなかった。やはり魅影は大概神出鬼没だ。
「オリジン、明後日世界を滅ぼすくらい強い怪異と戦うんでしょ?」
「まあ……はい。その予定です」
「だったらその怪異を倒すまで、アタシ達の力も持ってなさいよ。少しは足しになるでしょ?」
「それは助かりますけど……でも、いいんですか?クリメイト以外のみんなも?」
クリメイトの申し出は非常にありがたい。しかし他のメルティーズ達もクリメイトに賛同しているのかと、メルは全員の顔を見回す。
「勿論ですわ、オリジン」
最初に首を縦に振ったのは、クリメイトに次ぐ古参のファンファーレだった。
「私の力がオリジンのお役に立てるのなら、どうぞ存分にお役立てくださいませ。お友達の力になれることは、私にとって最大の幸せですわ」
「えっ、メルってファンファーレのお友達なんですか?」
「え、っ……」
サーッ、とファンファーレの顔から血の気が失せる。
「そ……そうですわよね……私は逆恨みでオリジンを殺めようとした女ですもの……そんな私が、オリジンのお友達になんてなれませんわよね……」
「あ~違うんです違うんです!ファンファーレがメルのことをお友達だと思ってくれてるとは思ってなかっただけで!メルはファンファーレにお友達って言ってもらえて嬉しいです!ホントに!ホントに!!」
放っておくとその内自傷行為に走りかねない雰囲気のファンファーレを、メルは必死に宥める。
クリメイトやスプリットの協力もあり、5分ほどかけてファンファーレのメンタルは回復した。
「ふぅ……じゃあファンファーレも、能力はメルがまだ持ってていいんですね?」
「ええ。オリジンの勝利に貢献させていただきますわ」
「ありがとうございます。スプリットは……」
「私もいいよ~」
スプリットが右手をひらひらと振る。
「世界を守るなら、少しでも強い方がいいでしょ。私の能力もしばらく貸しといたげるから、その代わり絶対勝ってよ?」
「はい。勝ちますよ、絶対」
続いてメルはテクトニクスに視線を向ける。
「例え能力がなくとも、私の尊さ美しさ麗らかさには微塵の陰りもありませんわぁ!ですからオリジン、あなたはこの世界を守り、あなた自身の美しさをこの世界中に轟かせなさいな!」
「美しさを轟かせるかは別として、ありがとうございますテクトニクス。ってうわぁ!?」
いつの間にか横から顔を覗き込んでいたクローラに、メルは大きく仰け反った。
「オリジンちゃん、お姉ちゃんの力も使ってくれるの?」
「は、はぁ……貸してくれるなら、使うと思いますけど……」
「まあ、お姉ちゃん嬉しいわ!お姉ちゃんの力がオリジンちゃんの役に立てるなんて!」
「わぷっ!?」
感極まったようにクローラがメルを胸に抱きしめる。
「頑張ってね、オリジンちゃん。オリジンちゃんならきっとこの世界を守れるわ」
「は、はい。頑張ります」
「オリジンちゃんが勝てたら、お姉ちゃんご褒美にいっぱいなでなでしてあげる!」
「ど、どうも……」
ご褒美の是非はともかくとして、少なくともクローラもメルに力を貸してくれる意思があるのは確かだった。
「ね~ね~オリジン~」
アンライプが両手で頬杖を突き、メルに声を掛けてくる。
「オリジンはあたしに勝ったんだから、世界を滅ぼす程度の怪異なんかに負けないでしょ~?」
「当たり前です、負けるわけないじゃないですか」
「もし負けたりなんかしたら、死ぬほどザコって呼んでやるんだから!キャハハッ!」
「だったらメル、いっぱい頑張らなきゃですね」
最後にメルは、連れてきたばかりのオニキスに目を向ける。
「ごめんなさいオニキス、メルが何の話してるか全然分からないでしょ?」
「う、ううん……い、今、クリメイトに教えてもらったから……」
「あら。ありがとうございますクリメイト」
どうやらメルがメルティーズ達と話している間に、クリメイトがオニキスに概要を教えてくれていたらしい。ありがたいことだ。
「せ、世界を守るために、戦うなんて……オリジン、すごいね……」
「そんなことないですよ」
「わ、私も、まだ能力返してくれなくていいよ……」
「えっ、いいんですか?」
「う、うん。どうせ、遠くにある物を取りたくて、立つのが面倒な時に、たまに引力を使ってたくらいだし……」
「結構面倒臭がりなんですね、オニキス」
「ひ、ひひっ……オリジン、世界を守るの、頑張ってね……」
メルは力強く頷き、最後にもう1度クリメイトに顔を向ける。
「そんな訳で、アタシ達はみんなアンタを応援してるわ。ま、せいぜい頑張りなさい」
「……ありがとうございます!」
メルはメルティーズ全員に向かって、深々と頭を下げた。
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