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裏作業:彩女の森 前編

本日2話投稿しております

こちらは1話目です

 「こんにちは~」


 糸繰村での配信の2日後。

 メルが彩女の森にやってくると、メルティーズ達は総出でログハウスの建築に取り掛かっていた。


 「あ~!オリジンじゃ~ん!」


 真っ先にメルの来訪に気が付いたアンライプが、作業を中断して小走りでメルに駆け寄ってくる。


 「こんにちはアンライプ。彩女の森はどうですか?楽しく暮らせてますか?」

 「うん、楽しいよ!他の皆もやさし~し!」

 「ですか。それはよかった」

 「きゃっ!も~、いきなり撫でないでよ~!」


 メルが水色の髪を優しく撫でると、アンライプは文句を言いつつも頬を緩ませた。


 「あっ、オリジン。おひさ~……って程でもないか」

 「オリジン、今日も美しいですわね!言うまでもなく私ほどではありませんけれども!」

 「いらっしゃいオリジン。お会いできて嬉しいですわ」


 メルとアンライプのやり取りを聞きつけ、他のメルティーズ達も続々とメルの周りに集まってくる。


 「今日は何しに来たのよ?また新しいメルティーズを連れてきたの?」


 メルティーズの取り纏め役を務めているクリメイトが、代表してメルに尋ねてくる。


 「半分正解です。これでメルティーズが彩女の森に勢揃いですね」


 メルが右手を翳すと前方に白い光が集まり、それが徐々に人の形へと変化していく。


 「あれ……こ、ここは……」


 そして人型の白い光は、オニキスへと姿を変えた。


 「こんにちは、オニキス。気分はどうですか?」

 「お、オリジン……?わ、私、どうして……」

 「メルに殺されたメルティーズは、メルに殺されてもまた復活できるんです」

 「あ……そ、そういえば、そんなこと言ってた……そっか、こ、こういうことか……」


 自らが置かれた状況を理解し、うんうんと頷いたオニキスは、続いて周囲をぐるりと見回す。


 「うわっひゃあっ!?」


 そして自分を取り囲む6人のメルティーズの存在に気付くと、珍妙な悲鳴と共に2mほど跳び上がった。

 驚いただけで2mも跳び上がれる身体能力は、流石メルティーズと言ったところだ。


 「あ~!オニキスじゃ~ん!」


 最初にオニキスに駆け寄ったのは、彩女の森では新参者のアンライプだ。


 「オニキスもオリジンに殺されちゃったの~?キャハハッ!オリジンに負けちゃうなんてざ~こざ~こ!あたしとおんなじ~!」

 「あ、アンライプ……ひっ、ひひっ……」


 嬉しそうに周りをぴょんぴょんと飛び回るアンライプに、オニキスはどうしたらいいか分からず引き攣った笑いを浮かべている。


 「こ~ら、いけませんよアンライプ」


 ファンファーレがはしゃいでいるアンライプを窘める。


 「ごめんなさい、オニキス。あなたが来るまではこの子が末っ子のようなものでしたの。ですから自分にも後輩ができてはしゃいでしまって。許してくださるかしら?」

 「あっ、ひゃっ、は、はい……」

 「アンライプちゃん。オニキスちゃんに雑魚だなんて言ったら、めっ!ですよ」


 クローラがアンライプを引き寄せ、それからオニキスの黒い瞳を覗き込んだ。


 「えっ、あ、あの……?」

 「……アンライプちゃんを怒らないでいてくれるのね」

 「えっ……?あ、はい……」

 「オニキスちゃんは優しいわね。流石は私の自慢の妹の1人だわ」

 「えっ?は、え……妹……?」

 「けれどアンライプちゃん。オニキスちゃんが怒っていなくても謝らなきゃダメよ?」

 「は~い……オニキス、ザコとかいってごめんね」

 「あっ、はい……き、気にしてないです……」

 「よく謝れたわね、偉いわ~アンライプちゃん!」


 クローラがアンライプを自らの胸に押し付けるようにして抱き締め、水色の髪を撫で回し始める。


 「きゃっ!?く、クローラ、くるしい……!」

 「アンライプは他の子よりちょっとだけ体温が高いわね。あったかくてお姉ちゃん好きよ」

 「や~あ!クローラは撫でる力強くてや~あ!」

 「まあ……ふふっ。クローラ、私もご一緒してよろしいですか?」

 「ふふっ、それじゃあファンファーレちゃんには左側を分けてあげるわ。それとクローラお姉ちゃんって呼んでくれてもいいのよ?」

 「や~あ!2人掛かりはもっとや~あ!」


 ファンファーレとクローラがアンライプの頭をもみくちゃにしている側で、今度はテクトニクスがオニキスの近くに進み出る。


 「ようこそいらっしゃいましたわオニキス!歓迎いたしますわぁ!」

 「あっ、ど、どうも……」


 テクトニクスの大声に肩を跳ねさせながら、オニキスは差し出されたテクトニクスの両手をおずおずと握り返す。

 するとテクトニクスはオニキスの腕をぐいっと引き寄せ、唇が触れてしまいそうなほどに顔と顔を近付けた。


 「うひぇっ!?な、何……?」

 「流石は私の妹的存在。あなたの美しさもまた、この世界の上位0.01%に食い込むことは間違いありませんわ」

 「えっ、う、美しさ……?」

 「で、す、がぁ……やはり残念ながら私の美しさには遠く及びませんわぁ!私の尊さ美しさ麗らさは、私の妹的存在であっても脅かすことはできないのですわぁ!!お~っほっほっほっほっほっほ!!」


 オニキスの手を放し、ダンスでもするかのようにくるくると回りながら森中に笑い声を響かせるテクトニクス。


 「えっ、えっ?な、何?なにぃ……?」

 「あ~……ごめんね?あの子ちょっとぶっちぎりで頭おかしいんだ」


 テクトニクスの奇行に困惑するオニキスに、スプリットがフォローに入る。


 「テクトニクス、何かにつけて『でも私の方が美しいですわぁ!』とか言い出すけど、悪気がある訳じゃないんだ。根はいい子なんだよ、根だけは……」

 「あっ、は、はい……」

 「だからテクトニクスに変なこと言われても気を悪くしないで。それが難しかったら慣れて」

 「あっ、わ、分かりました。が、頑張ります……」

 「ん。よろしくね」


 オニキスはスプリットとも握手を交わす。

 最後にクリメイトがオニキスに近付いた。


 「わちゃわちゃしすぎててビックリするかもしれないけど、きっとアンタもすぐ馴染めるはずよ。ここでの生活で困ったことがあったら、何でもアタシに相談しなさいよ!」

 「あっ、は、はい。よろしくお願いします……」


 オニキスが他のメルティーズ達と一通り言葉を交わし終えたところで、メルが改めてオニキスへと歩み寄る。


 「ところでオニキス。あなたが住んでた洞窟から、一応これを持ってきたんですけど」


 メルがそう言って取り出したのは、石を削って製作された、蜘蛛や熊や蛇などを模した像だ。いずれもオニキスが作ったものである。


 「メルが勝手に触ったらイヤかなとも思ったんですけど、あの洞窟に置いてくるのも寂しいかなって思って……」

 「わ、わぁ!あ、ありがとう……!」

 「作ってる途中のやつも持ってきましたよ。これ」

 「ありがとう……!」


 メルから受け取った石の彫刻達を、オニキスは愛おしそうに腕に抱く。


 「へぇ~。それアンタが作ったの?」

 「うぇっへゃっ!?」


 背後から彫刻を覗き込んだクリメイトが声を掛けると、オニキスがまたしても驚いて跳び上がる。


 「危なっ!?」


 飛び上がった際にオニキスが取り落とした彫刻達は、地面に激突する前に辛うじてメルが全て受け止めた。


 「わぁ~、すっごくよくできてるわね。オニキス、アンタ器用なのね」

 「まぁ……可愛らしいクマさんですわね」

 「へぇ~、これオニキスが作ったの?凄いじゃん」

 「このクオリティ……私ほどではないですが美しい彫刻ですわね!」

 「あら上手ね。今にも動き出しそうだわ」

 「え~これオニキスが作ったの~!?オニキスすご~い!全然ザコじゃな~い!」

 「い、いや、そんな、褒められるほどのことじゃ……ひひっ、ひひひひっ!」


 メルティーズ達から口々に彫刻を褒められ、オニキスは顔を真っ赤にしながら嬉しそうに笑っていた。


 「これだけ手先が器用なら、建築でも活躍できそうね。ねぇオニキス。今アタシ達、あのログハウスを建ててる途中なの」


 クリメイトがオニキスに、建設中のログハウスを指し示す。


 「アンタの力も貸してもらえないかしら?アンタがいれば、きっともっと作業が早くなると思うわ」

 「あっ、う、うん。私でよければ……」

 「そ?ありがと」


 ところで、とクリメイトがメルに顔を向ける。


 「アンタさっき、アタシが新しいメルティーズを連れてきたのか聞いた時、『半分正解』って言ってたわよね?」

 「言いましたね」

 「半分ってことは、他にもう1つ目的があるってことかしら?」

 「鋭いですね。座ってお話してもいいですか?」

 「いいわよ。最近おっきいテーブルを作ったから、そっちに行きましょうか」


 クリメイトに先導される形で、メルとメルティーズは建設途中のログハウスに移動する。

 ログハウスの1階部分には、クリメイトが言っていた通り、10人で囲んでも余裕があるほど大きなテーブルが設置されている。

 テーブルの周りには10脚の椅子が用意されており、メル達は全員着席した。


 「セイロン、みんなにお茶を淹れて差し上げて?」


 ファンファーレの指示によって、ティーポットの怪異であるセイロンが、メル達8人の前に温かい紅茶を用意する。


 「それで、もう1つの話って何よ?」

 「そうですね……少し長くなっちゃいますけど、まずは今のメルとあなた達メルティーズの状況についておさらいしましょうか」


 メルは紅茶を1口含んでから、ゆっくりとした口調で話し始めた。

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