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施設紹介

屋上に上がると、この国の発展がより良く分かった。


元はグラウンドであった土地は土を敷かれ、雑草が生い茂り、家畜が闊歩している。


その糞を回収し、隣の畑に撒く。


その奥では車が出入りしており、収穫した作物を倉庫に運んでいる。


また、反対側を見てみると、住宅街が広がっている。


プレハブ小屋のような物から、元々あった住居をそのまま活用しているのもある。


人々が服を干し、談笑し、子供がチョークで道路に落書きをしている。


「どう?凄いでしょ?」


「ええ、本当に。水源はどうしてるんですか?」


「この近くの山からひいてきてるんだ。勿論、バリケードを作って、兵士もいっぱい置いてあるからゾンビの出汁は飲まないようになってる。」


「……その、兵士というのは?」


「ここの住人。兵役とかを課しているわけじゃないんだけど、集まるんだ。」


「志願ですか。」


「まあ、そういうこと。最近はあんまり死ぬ人もいなくなってきたよ。」


「それでも、0ではないんですね?」


「まあ、ね。遠くの土地に生存者を探しに行ったり、ガソリンを取りに行ったりとか、そういう時に犠牲者が出ることもあるんだ。」


「そうですか……。」


「じゃあ、次はあの建物に行こうか。」


優衣が指を差した先にあるのは、体育館だ。


「あそこには何が?」


「兵士の養成所だよ。」




「たるんでいるぞ貴様ら!」


「すいません!」


「いいか、良く聞け!これはお前たちの生存率を上げるためにやっている事だ!これをしっかり習えば、弾が切れた時でも何とか切り抜けられるかもしれない!お前たちを生かすために教えているんだ!」


「はい!」


「いい返事だ!もう一度やってみろ!」


熱気が籠もる体育館では、5名ほどの兵士を一人の青年が鍛えていた。


「紹介するよ。あれが、我らが鬼軍曹、藤堂巧。空手の達人なんだ。」


「誰が鬼軍曹だ。」


優衣が後ろから頭を小突かれる。


「痛いッ!」


「お前たちは、新たな入国者か?」


「はい。」


「そうか。俺は藤堂巧だ。もし志願するのなら、みっちりしごいてやるぞ?」


「お手柔らかにお願いしますよ。」


笑顔で握手を交わした時、体育館の扉が開いて、女性が現れた。


「皆ー!休憩の時間だよ。ほら、冷たい水持ってきたから飲もうよ!」


兵士が全速力で走っていく。


「あの人は、朝霧葉月さん。マネージャーみたいな感じの人。そして……。」


優衣が小指を立てる。


「巧さんのコレ。」


「馬鹿野郎。」


優衣がまた頭を小突かれた。




「次はココ!弓道場だよ。」


「弓ですか。」


「矢は何回か使い回せるし、音があんまりしないから重宝するんだよ。」


ここでも数名の兵士が訓練していた。


しかし、どの兵士が放つ矢も的には命中しなかった。


「だらしがないですね。……こうです。」


教官らしき女性が矢を番えて、放つ。


その矢は見事に的のど真ん中に命中した。


兵士たちが歓声を上げる。


「弓の教官は三好佑季さん。弓を使わせたら右に出る者はいないって感じだね。そしてこの人はなんと、あの徹さんのコレ……。」


直後、優衣の真横を矢が飛んで行った。


「失礼、少し手元が狂ってしまいました……。さて、もう一本行きましょうか?」


優衣が全速力で弓道場から脱出し、僕達もそれに習った。




「そしてココが皆大好きな場所、食堂だよ!ここで配給の食料をもらうんだ。月に一度、料理も振る舞われるんだよ。」


「おっ、お客さんかな?」


厨房の奥から、髪を後ろで一つに結んだ女性が現れる。


「じゃあ、紹介するよ。ここの料理長兼管理人の拝賀小夜さんだよ。」


「新しい人かい?よろしく頼むよ。」


ここで紹介は終わりかと思われたが、優衣がすっきりしない表情をしているところを見ると、まだ終わっていないらしい。


「誠治さんは?」


「ふふ、そこで芋の皮を剥いてるよ。」


耳を澄ますと、厨房の奥から何やら呪文のような声が聞こえる。


「ったく、なんで俺がこんな……。」


「誠治さーん?」


「ああん!?何だよ!」


「新しい住人だって。」


そう言われてノソノソと厨房から顔を出したのは三白眼の青年だった。


鋭い眼差しに射抜かれる。


「よろしくお願いします。」


リクは頭を下げる。


「お前、野菜の皮剥けるか?」


「い、一応……。」


「よし、お前ここの担当だ。あーやっとこれで皮剥きから解放されるぜ。」


「えっちょ……。」


リクが狼狽えていると、小夜が間に入った。


「駄目だよ誠治。ここの担当は君なんだから、勝手に変えられては困る。それに……。」


「何だよ。」


「離れたくないんだよ。」


二人の間に微妙な空気が流れる。


「もしかして……。」


「うん、爆発しろっ!て奴だね。」


何ともいえない気分のまま、食堂をあとにする。

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