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掃討班とゾンビ

投稿が遅くなりました。

すいません。

掃討班は廊下に出るとすぐにゾンビと遭遇した。


しかし、すぐに物資調達班が来るのが解っている以上、ここで戦闘を起こすのはまずい。


巧は後続に手で戦わないように伝えると、ゆっくりとゾンビの横を通り過ぎた。


戦うなら、囲まれない様ななるべく一方通行なところが望ましい。


そうなると廊下がいいだろうが、バットなどを振り回すには少々狭すぎる。


できればもう少し広い所がいい所ではあるが。


階段を登り始める。


階段をあがるときの音は消すことができず、ゾンビが数体集まってきた。


それらは全て上の階からゆっくりと降りてきた。


先程廊下での戦闘は好ましくないと言ったが、この戦闘は避けられないようだ。


それも致し方ないと思い、巧が声を出す。


「やるぞ。」


その言葉をその場に居た全員が聞き、気を引き締めた。


巧が先頭のゾンビの左頬を殴り、よろめいた所を頭を掴んで壁に打ち付けた。


グシャ、と音がしてゾンビの顔面が砕ける。


巧はそのまま前進し、顔面を砕かれたゾンビを真二がバットで息の根を止める。


よく、頭が割れる表現を『ザクロのよう』と例えることがあるが、割れた頭部を見て、改めてそう思う。


床に血と脳漿の花を咲かせているその姿は果実が落ちて割れてしまったかのような印象を受ける。


どちらかというと、トマトに近いような気もする。


しかし、あそこまで柔らかくは見えない。


とすると、やはりザクロが丁度いいと思えてくる。


階段を駆け上がり、少し広い場所に出る。


そこは、北、東、西から廊下が終結する地点であり、その三方向からゾンビが迫っていた。


誠治が東、龍と真二が西、巧が北へ移動する。


そしてその陣の中央で佑季が矢をつがえる。


「全員攻撃開始だ!派手にやれ!」


「了解!」


誠治が靴を履きかえる。


先程生徒玄関に行った時に見つけた、野球部のスパイクだ。


東側からは十数体のゾンビがやってきた。


「こっちは他より数が多い!援護をくれ!」


誠治は後方に向けて言う。


すると、自分の真横を矢が通り過ぎて、一番近いゾンビが引っ繰り返った。


「気が散るので黙っていただけませんか?」


佑季がまるで誠治も獲物として認識しているような冷たい声で言う。


「……可愛げのねー奴。」


その直後、自分の頬の数センチ横を矢が擦り抜けた。


誠治は大きな溜息を一つつくと、再び接近してきたゾンビを穴あけパンチで殴る。


誠治は二つの穴あけパンチをまるでボクシンググローブのように保持しながら、ゾンビの腹を突き、顎をかちあげた。


そして倒れたゾンビのそばにより、頭を踏みつぶす。


何度も、何度も。


廊下でスパイクを履くというのは非常に歩きづらかったが、それでも、転んでしまうような程ではなかった。


そして廊下の壁にも取れかかるようにして寄ってくるゾンビの腹を殴って倒す。


倒れたゾンビが立ち上がろうと顔を起こすが、そこを矢で射抜かれる。


そして瞬く間に十数体のゾンビを倒し尽くした。


「はぁ……キツイな……。」


疲労で足が少し重くなったように感じる。


だが、廊下の向こうからヨタヨタとゾンビがやってきた。


「休憩ぐらいくれ。」


そう呟くように言うと、ゾンビの顔面に渾身の右ストレートをお見舞いした。


「アーウーうるせぇんだよ!ッゼェなぁ!」


半ばキレ気味にゾンビを殴り続ける。


今の誠治にはゾンビがサンドバックに見えて仕方がなかった。








一方西側。


こちらは比較的数が少なく、数体のゾンビが手を突き出しながら近づいてくるだけだった。


龍はバットを構えて立ち止まる。


無意識のうちに右手の親指と人差し指を擦り合わせていた。


いつだってそうだ。


全校生徒の前でスピーチをしたりするときも、いつもこうやって指を擦る。


いつの間にかついていた癖だ。


無くて七癖という諺が示す通り、どんな人にも癖はある。


そう割りきっていたのだが、いざこの時にこの癖が出たということは、相当緊張してるのだろうと自分を分析する。


大丈夫、一人じゃない。


荘田先輩もついている。


大丈夫、大丈夫。


もう一度、グリップを握る手に力を込める。


「うおおおおあああッ!」


バットを横に振ると、ゾンビの首にめり込んだ。


メキッという嫌な音と、骨が折れる今まで感じたことのない感覚を感じさせながら、ゾンビが壁に叩きつけられた。


いける。


確かな手応えを感じた。





そして北側。


巧は試合前と同じように、体の筋肉をほぐしていた。


肩を回し、足の腱を伸ばして、準備をする。


一通りの体操が終わると、巧は正面に向かってくるゾンビを見据えた。


試合の時は、相手の目を見ていた。


目を見れば、相手の意気込みから、狙ってくるところまで知ることができた。


そういった洞察力と、相手との駆け引きが、空手の醍醐味だと父は教えてくれた。


だが、ゾンビは目が白濁しているため、行動をうかがい知ることは出来ない。


つまり、洞察力は使うかもしれないが、駆け引きというものはほぼ無い。


目の前のゾンビに突きを繰り出しながら、その物足りなさにに肩を落とした。


これでは試合ではない。


唯の作業だ。


解っていても、体があの興奮をもう一度求めている。


そして、その興奮を得るために、様々な技を繰り出す。


しかし、どれだけゾンビをもう一度殺しても、満たされた気分にはならなかった。

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