第2章 セレストな心(初杉ジロウ編)中編
六郭星学園 音楽室
初杉ジロウ
「なるほど…………これが、声優歌唱祭の…………。」
真瀬志奈
「はい。いかがですか?」
大運動会から数日。私は楽曲を初杉さんに聞いてもらった。
初杉さんの感想は…………。
初杉ジロウ
「ここは…………ううん。なんでもない。この曲ならきっと喜んでくれるよ!」
真瀬志奈
「…………本当ですか。ありがとうございます。」
何かを言いかけていたけど…………なんとなく、聞くのをやめた。
初杉ジロウ
「それじゃあ、練習しよう。素敵な曲にしよう!」
真瀬志奈
「それもそうですが…………。今日は学園の掃除があるじゃないですか。」
初杉ジロウ
「そうだった…………。よし!頑張って清掃をするか!」
真瀬志奈
「はい。行きましょう!」
私たちは中庭に向かった。
六郭星学園 中庭
中庭に行くと、各クラスの代表者が集まっていた。中には学園で有名な生徒もいる。
全員揃ったのか、成瀬実先生が挨拶をする。
成瀬実
「みなさん。本日は代表して、清掃行事に参加していただきありがとうございます。一生懸命に清掃をして、学園を綺麗にしましょう!」
生徒のみなさんは「はい。」と返事をし、清掃を始める。
女子生徒
「不知火さん!頑張りましょうね!」
女子生徒に人気なのは不知火カイル(しらぬい かいる)さん。モテ男で性格もとても優しい。
不知火カイル
「ありがとう!頑張ろうね!」
不知火さんはしっかりとお礼を言う。
その隣では、ハイテンションな性格の土原ガク(つちはら がく)さん。
土原ガク
「ほっほーい!!頑張るぞー!!」
やる気満々だ。そのハイテンションに圧倒される。
不知火カイル
「さすがだね。…………一生懸命さは。」
土原ガク
「ありがとー!!カイルも頑張ってねー!!」
不知火カイル
「ああ。ありがとう。」
お互いに健闘を称えている。
その間で黙々と掃除をしているのは、柊木アイ(ひいらぎ あい)さんだ。
柊木アイ
「ふぅ…………。疲れた…………。」
土原ガク
「アイくんー!!頑張っているね!」
柊木アイ
「うん。土原くんもお疲れ様。」
笑顔で話を聞いている。柊木さん優しい方だな。
初杉ジロウ
「頑張ろうね。勝負とかはないけれど、頑張りで負けないようにしよう!」
真瀬志奈
「そうですね。頑張りましょう!」
そう言ったとき…………。
ギギ……ガガ……
真瀬志奈
「えっ……!?」
この耳鳴りは……!?
ギギ……ガガ……
苦しい…………!
私は思わずしゃがみ込んでしまう。
初杉ジロウ
「志奈さん!?」
そのまま意識が遠のく。
六郭星学園 保健室
真瀬志奈
「……………………ん?保健室?」
目が覚めると保健室だった。
柳原悠香
「ああ…………良かった。」
隣には柳原先生が座っていた。
柳原悠香
「急に倒れましたから、心配しましたよ。お身体大丈夫ですか?」
真瀬志奈
「はい…………今は大丈夫です。」
柳原悠香
「良かったです…………。歩けますか?部屋まで送ります。」
真瀬志奈
「ありがとうございます。…………では、お言葉に甘えて。」
私は柳原先生に寮の部屋まで連れて行ってもらった。
六郭星学園寮 志奈・ホノカの部屋
真瀬志奈
「ありがとうございました。」
柳原悠香
「お大事になさってください。」
柳原先生は学園の方に向かって行った。
ドアを開けて部屋に入ると、夏目さんがいた。
夏目ホノカ
「あっ…………大丈夫ですか?急に倒れたみたいですから…………。」
真瀬志奈
「夏目さん。ご心配をおかけしました。」
夏目ホノカ
「ジロウくんも心配していました。今度、声をかけてあげてください。保健室には入れませんでしたから。」
真瀬志奈
「ああ…………そうでしたよね。…………初杉さん。」
私は初杉さんにお詫びをするために、男子寮に向かう。
六郭星学園寮 莉緒・ジロウの部屋
真瀬志奈
「初杉さん。真瀬です。」
ドアが開く。開けてくれたのは莉緒だった。
真瀬莉緒
「ああ。姉さん。大丈夫かい?」
真瀬志奈
「大丈夫。…………でもあなたが、初杉さんのルームメイトなんて今でも不思議ね。」
真瀬莉緒
「まあ、会う機会が少ない分不思議に思うよ。…………ジロウなら中庭にいるはずだけど…………。」
真瀬志奈
「中庭ね。ありがとう。行って来るわ。」
私は中庭の方へ向かう。
六郭星学園 中庭
中庭に行くと、誰もいない。
真瀬志奈
「あれ…………?初杉さんは中庭にいるって聞いたけど…………?」
辺りを見渡すと、ギターの演奏音が聞こえる。
真瀬志奈
「ギター…………?それもかなり上手な…………。」
木陰から聞こえる。私は木陰を覗いてみる。
初杉ジロウ
「……………………。」
真瀬志奈
「初杉さん…………?」
初杉さんがギターを弾いている。それもかなり上手な演奏だ。
真瀬志奈
「初杉さんは得意な楽器はギターじゃなかったような…………?」
もしかして…………初杉さんはギターも弾ける…………?
真瀬志奈
「初杉さん…………。」
お詫びはまた今度にしよう。
私は気づかれないように、中庭をあとにすることにした。
私は初杉さんの知らない一面を知ったかもしれない。




