第4章 紫色のタルト(浦川アイク編)後編
六郭星学園寮 莉緒・アイクの部屋
課題発表が終わった直後。私たちはパソコンの電源を立ち上げた。
真瀬志奈
「メールを確認しましょう。」
浦川アイク
「ああ…………。」
私たちはメールの受信箱を見る。声優さんからメールの返信が来ていた。
真瀬志奈
「来てますね…………開けてみます。」
私はメールを開く。
「お疲れ様です。本日は楽曲の提供をしていただきありがとうございます。検討を重ねた結果、満場一致でこの曲を歌うことになりました。この楽曲に携わっていただき、素敵な歌詞を書いていただいた、浦川さんにもお会いできればと思います。今回はありがとうございました。またこのような機会があった際にはぜひお願いしたいと心から思っております。声優歌唱祭でお会いできるのを楽しみにしております。改めて、楽曲の提供をしていただきありがとうございます。」
浦川アイク
「これは…………!!」
真瀬志奈
「やりましたね!声優さんが認めてくれましたよ!」
浦川アイク
「……………………。」
真瀬志奈
「浦川さん…………?どうされましたか?認めてもらえたんですよ。」
浦川アイク
「ああ。…………嬉しい。心から嬉しいよ。俺たちの…………楽曲が認めてもらえたんだ…………!」
真瀬志奈
「はい…………。頑張りましたね。浦川さんのおかげです。ありがとうございます。」
浦川アイク
「礼を言うのはこっちの方だ。真瀬が信じて、歌詞を任せてくれたおかげだ。」
真瀬志奈
「浦川さん…………はい。お互いの頑張った証ですね。」
浦川アイク
「…………そうだな。2人の頑張った証…………。みんなに届くと良いな。」
真瀬志奈
「きっと届きます。浦川さん。声優歌唱祭を楽しみにしましょう。」
浦川アイク
「ああ…………心から楽しみだ。」
声優歌唱祭を楽しみにし、私たちは六郭星学園の卒業式の日を待つ。
六郭星学園 大講堂
SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
遊馬雄三
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
1人1人名前が呼ばれていく。
遊馬雄三
「浦川アイク。」
浦川アイク
「はい。」
遊馬雄三
「初杉ジロウ。」
初杉ジロウ
「はい。」
遊馬雄三
「薮本マサキ。」
薮本マサキ
「はい。」
仲の良かったみんなが呼ばれていく。
そして私も呼ばれる。
遊馬雄三
「真瀬志奈。」
真瀬志奈
「はい。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
遊馬雄三
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
初杉ジロウ
「みんな、同じ大学に進学するんだね。」
薮本マサキ
「そうだね。まさか期末テストの上位50位の生徒が同じ大学に進学するなんて…………。」
浦川アイク
「ああ…………不思議なことだ。」
大学もみなさんと、同じ大学になった。これからもお会いできるのが救いだ。
来年度もよろしくお願いします。
浦川アイク
「いよいよ、声優歌唱祭の日だ。今からが楽しみだ。」
薮本マサキ
「2人は関係者席で聞きに行くんだよね。羨ましいよ。」
初杉ジロウ
「一般の席で曲を楽しみにしているからね。」
浦川アイク
「ああ。期待してくれ。…………きっと…………な。」
そう言って、私たちは準備をして、声優歌唱祭の会場に向かう。
声優歌唱祭 会場
会場に着いた私たち。声優さんの楽屋に呼ばれ、挨拶をすることになった。
楽屋に行くと、今回の楽曲を提供した声優さんに挨拶をする。
真瀬志奈
「今回はこのような仕事をお願いいただきありがとうございます。」
声優さんは私に一礼すると、浦川さんに握手を求める。
浦川アイク
「はじめまして。浦川アイクと申します。本日はこのような機会をいただきありがとうございます。」
そう言って、浦川さんは声優さんと握手をする。
浦川アイク
「ありがとうございます。…………嬉しいです!」
浦川さんの表情から、嬉しさが伝わる。私たちは少し雑談をしたあと、声優さんにお礼をして、楽屋をあとにした。
会場の関係者席についた。後ろには莉緒と春井さんがいる。
真瀬志奈
「莉緒たちも来ていたのね。」
春井リカコ
「ええ。楽曲を提供したのよ。あたり前じゃない。」
真瀬志奈
「そうですね。…………そろそろ始まります。」
そう言うと、声優歌唱祭が始まる。
声優歌唱祭が始まったと同時に、声優さんたちが登場する。
それと同時に、会場の観客が熱くなる。
まずは声優さんたちが登場し、6人で歌う。見事な歌の領域で観客も大盛り上がりだ。
そして、声優さんたちが歌ってきた名曲やキャラソンもそれぞれ歌う。それに答えるように、観客もボルテージを上げる。
そのあと、声優さんの新曲のコーナーが始まる。僕たちの楽曲が歌われるのもこのコーナーだ。
真瀬志奈
「始まるわ…………。」
真瀬莉緒
「うん…………。」
歌唱祭МC
「それでは次の曲です。お願いいたします!」
男性声優
「それでは…………。…………響け。この曲の想いを…………!!」
私たちが演奏した楽曲が流れる。
演奏を終えると、私の目には少しだけ涙が零れ落ちる。
真瀬志奈
「浦川さん…………。」
浦川さんは会場の外に出たみたいだ。
真瀬志奈
「探しに行きますか。」
春井リカコ
「アイクなら…………外にいるわ。行ってあげて。」
真瀬志奈
「はい。…………では。」
私は会場の外に向かった。
声優歌唱祭 会場外
真瀬志奈
「浦川さん…………。」
浦川さんの姿を見つけ、声をかける。
浦川アイク
「真瀬…………いや…………志奈。」
真瀬志奈
「浦川さん…………!」
初めて下の名前で呼んでくれた。浦川さんは重たい口を開く。
浦川アイク
「俺は…………志奈。頑張っている、きみが好きだ。今回は同じ大学に入れたが、今後も…………大学卒業後も…………お付き合いできませんですか?」
真瀬志奈
「浦川さん…………。」
私の答えはもうとっくに決まっている。
真瀬志奈
「浦川さん…………私で良いんですね。」
浦川アイク
「ああ。…………良いのかい?」
真瀬志奈
「はい…………アイク。」
浦川アイク
「志奈…………!」
真瀬志奈
「アイク!これからも…………よろしく。」
浦川アイク
「ああ…………!ああ…………!」
私と浦川さんは見つめ合い、手を繋いで会場に戻った。
虹谷サイ
「くそ…………ぼちぼちか。あとは…………もう少ないな。もう限界が近いな。急いでほかを当たろう。」
浦川アイク編 完




