第2章 黄緑色したマスカット(浦川アイク編)中編
六郭星学園 音楽室
浦川アイク
「ほお。これが、真瀬の作った楽曲か。」
翌日の放課後。私は浦川さんに楽曲を聞いてもらった。
真瀬志奈
「こういった感じの楽曲ですけど、どうでしょうか?」
浦川アイク
「そうだな…………。楽器を貸してみろ。」
浦川さんは楽器を借り、演奏を始める。
ところどころ、苦手な部分があるのかぎこちないところがあるがそれ以外は完璧だ。
真瀬志奈
「練習あるのみですね。頑張りましょう!」
浦川アイク
「ああ。ぎこちないところがあるのはすまない。ただ、張り切るだけだ。」
真瀬志奈
「はい。全面的にサポートさせていただきます。」
私は浦川さんの苦手な部分を徹底的にレクチャーする。
レクチャーをしていると、いつの間にか日が暮れ始めていた。
真瀬志奈
「浦川さん。そろそろ切り上げましょう。また後日…………。」
浦川アイク
「いや…………まだ…………。まだ、ここだけでも…………。」
真瀬志奈
「浦川さん…………。」
浦川さんはストイックな人なのか、熱心に練習に励んでいる。
真瀬志奈
「…………ここだけですよ。」
浦川アイク
「ああ。…………ありがとう。」
そのストイックさに、私はしっかりと受け止めた。
そのあとも真剣な表情で浦川さんは苦手なところを演奏する。
浦川アイク
「まだだ…………まだ…………。こうだ…………!」
そして、浦川さんの演奏が上手く成功した。
真瀬志奈
「やりましたね!」
浦川アイク
「ああ。真瀬のおかげだ。まだ苦手な部分はあるが、毎日毎日努力すれば何とかなるだろう。真瀬。協力してくれ、。」
真瀬志奈
「もちろんです。誠心誠意、協力させていただきます。」
すっかり夜も遅くなり、空腹を満たすため、食堂へ向かうことにした。
六郭星学園 食堂
食堂に行くと、浦川さんに声をかける男子生徒がいた。
浦川アイク
「小鳥遊…………。」
真瀬志奈
「たかなし…………?」
小鳥遊カルマ
「ああ。きみには自己紹介だな。小鳥遊カルマ(たかなし かるま)。Cクラスだ。」
真瀬志奈
「真瀬志奈です。よろしくお願いいたします。」
浦川アイク
「それで、小鳥遊。声をかけてくるとは何があった?」
??
「小鳥遊。話は終わっていない。」
真瀬志奈
「あなたは…………!」
話しかけてきたのは、中神シンジ(なかがみ しんじ)さんだった。生徒会の書記だったはず。そんな人が血相を変えてやって来る。
中神シンジ
「貴様のやっていることは、恥を覚えるものだ!」
小鳥遊カルマ
「古いな…………頭のアップデートが必要なんじゃないか?」
中神シンジ
「き、貴様!!」
浦川アイク
「やめろ。」
中神さんが手を上げようとするところを、浦川さんが手を掴み、止めた。
浦川アイク
「小鳥遊の言うことを信じろ。貴様には人を信じる心はないのか?」
中神シンジ
「なんだと…………?」
??
「もうやめて。喧嘩はダメよ。」
そこにまた入って来たのは、笹野ユリ(ささの ゆり)さんだった。放送委員の委員長をやっている。
笹野ユリ
「いくらなんでも、手を上げるのは良くないわ。少し、頭を冷やしたらどうかしら?」
中神シンジ
「…………くっ。」
中神さんは浦川さんの手を振りほどき、寮に向かった。
浦川アイク
「すまないな…………。」
笹野ユリ
「良いのよ。気にしないで。」
小鳥遊カルマ
「ありがとうな。2人とも。」
浦川アイク
「ああ。それよりも、もう憧れてはいないんだな?」
浦川さんが小鳥遊さんに何かを質問する。
小鳥遊カルマ
「ああ。昔のことだ…………。お前もそうだろう?」
浦川アイク
「そうだな…………。」
真瀬志奈
「……………………?」
浦川さんが何を言っているのかわからなかった。
少なくとも、笹野さんと小鳥遊さんが知り合いと言うことはわかった。
笹野ユリ
「じゃあ、2人はまだご飯食べていないんでしょう?ゆっくりして。」
浦川アイク
「ああ。そうさせてもらうよ。真瀬…………行くぞ。」
真瀬志奈
「はい。」
私たちは食券を買い、テーブルで待った。
真瀬志奈
「そういえば…………浦川さんは好きなものは何ですか?」
浦川アイク
「俺の好きなものか?そうだな…………抽象的で難しいが、果物だ。」
真瀬志奈
「果物ですか。では、果物で特に好きなのは…………。」
浦川アイク
「ぶどうだな…………。」
真瀬志奈
「ぶどうですか!良いですね。でも、どうしてぶどうですか?」
浦川アイク
「言っただろう?紫色が好きなんだ。ぶどうは紫だろう。」
真瀬志奈
「そうでしたね。今度、ぶどうを食べに行きましょうか。」
浦川アイク
「名案だな。それじゃあ…………。」
??
「ぶどうを食べに行くのか。それは聞き捨てならんな。」
浦川アイク
「日比谷先生…………。」
話しかけてきたのは日比谷直輝先生だった。ぶどうが気になるのだろうか。
真瀬志奈
「あの…………何か御用ですか?」
日比谷直輝
「ぶどうを食べに行くのなら、このチケットを渡そう。申し訳ないが、私も同行させてもらうけれどな。」
差し出してきたのはぶどう狩りのチケットだった。
真瀬志奈
「ありがとうございます!日比谷先生もぜひ!」
日比谷直輝
「すまないな。じゃあ、明日の放課後に校門の前で待っている。」
浦川アイク
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
浦川さんはお礼を言い、日比谷先生が食堂から出るのを見送った。
真瀬志奈
「嬉しいですね。明日、ぶどうが食べれますよ。」
浦川アイク
「ああ。楽しみだ。食事もし終わったし、寮に戻ろう。」
真瀬志奈
「はい。」




