第3章 山吹色の落ち葉(夢野マナカ編)中編
夢野マナカ
「真瀬さん…………私…………ユウタから聞きました。」
真瀬莉緒
「……………………。」
夢野マナカ
「私の夢…………。それは作曲家です。」
真瀬莉緒
「やっぱりそうですか…………。」
夢野マナカ
「…………はい。私は、憧れの声優さんに歌ってもらうことを夢に願っていました。それが…………いつの間にか、配信をするバーチャルアイドル。…………辛かった。」
真瀬莉緒
「辛かった?」
夢野マナカ
「綺羅星メルマ…………正直、苦痛です。でも、投げ捨てることができなかった。メルマにはスポンサーがいます。聞いたことのない…………会社の。」
真瀬莉緒
「その企業はどんなことを…………?」
夢野マナカ
「研究…………ただ、それだけしか言われませんでした。その、企業のことが色々とあるのでどうしても…………やめれない。」
真瀬莉緒
「そうだったんですね…………。メルマにはそんなことが…………。」
夢野マナカ
「それでも…………私は、あきらめたくないです。…………私…………作曲家になりたいです。」
真瀬莉緒
「夢野さん…………。」
夢野マナカ
「学園祭のときまで…………本当は真瀬さんのこと…………嫌いでした。」
真瀬莉緒
「はい…………え?」
僕は少し、呆然とする。
夢野マナカ
「私がなりたかった、作曲家。…………それをいとも簡単に成し遂げる才能。羨ましかったです。…………今、思うとジェラシーを感じていたんでしょうね。」
真瀬莉緒
「はぁ…………。」
夢野マナカ
「おまけに真瀬さんは、メルマのことが好き。とても不愉快だった。ユウタから、メルマのことを見てると聞いて。」
真瀬莉緒
「……………………。」
夢野マナカ
「でも、学園祭のとき、私はこの人ならメルマだと打ち明けても良い。そう思いました。…………あのとき、実は学園祭でメルマの映像が流れていたんですよ。」
真瀬莉緒
「メルマの…………?」
夢野マナカ
「それを真瀬さんは見ずに、待っていてくれた。とても嬉しかったです…………。」
真瀬莉緒
「あのときは…………夢野さんのこと、心配でした。」
夢野マナカ
「それで…………メルマと打ち明けたとき、何も否定しなかった。…………心の底から、パートナーになれて良かった。そう思いました。」
真瀬莉緒
「そうだったんですね。…………夢野さん。」
夢野マナカ
「はい。…………とりあえず、私…………。今回の曲のアレンジを作って来たんですよ。」
真瀬莉緒
「本当ですか!ぜひ聞かせてください。」
夢野マナカ
「はい…………。」
僕は夢野さんのラベンダー色のヘッドホンを借りて、アレンジ音源を聞く。
僕はそれを聞いて、自分の携帯のデータに取り入れて、流してみることにした…………。
夢野さんのアレンジは最高だった。もう何も文句のつけどころがない。
真瀬莉緒
「これなら…………もう完成しましたね。」
夢野マナカ
「真瀬さん…………!じゃあ、これで声優さんに聞いてもらうんですね…………。」
真瀬莉緒
「はい。それまでの間は課題に向けて、練習をして頑張りましょう!」
夢野マナカ
「はい…………!ありがとうございます。」
すると、根村さんがこちらにやって来る。
根村ユウタ
「どうやら…………解決したよう…………だな。」
夢野マナカ
「ええ。ユウタのおかげで…………。」
根村ユウタ
「何も…………していない…………。とにかく…………莉緒…………よろしく頼む…………マナカを。」
真瀬莉緒
「はい。頑張っていきますよ!」
根村さんは頷くと、すぐにその場を離れる。
夢野マナカ
「真瀬さん…………覚悟しました。私…………来週の木曜日。生配信を見ていただけますか?」
真瀬莉緒
「メルマの生配信ですか…………?」
夢野マナカ
「はい…………お願いできますか…………?」
真瀬莉緒
「はい。…………もちろんです。」
夢野マナカ
「ありがとうございます。では…………この辺で、失礼します。」
真瀬莉緒
「はい。木曜日を楽しみにしています。」
僕たちはそれぞれの寮の部屋に戻った。
そして…………運命の日になった。
六郭星学園寮 莉緒・ユウタの部屋
真瀬莉緒
「メルマの生配信か…………。」
メルマは今現在、登録者数が100万人を超えた。
今回はメルマの100万人祝いの生配信だ。何が起こるかは…………わからない…………けど、なんとなくあることをすると感じる。
真瀬莉緒
「夢野さん…………。」
夢野さんを思うと生配信が始まる。
綺羅星メルマ
「星々のみんな~!!みんなのアース。綺羅星メルマです!!」
メルマ…………。相変わらず癒される。ただ、その裏でメルマの中にいる人の覚悟が見えた。
チャットには素敵なお祝いのコメントが流れる。
ゲームをしたり、歌を歌ったり、色々と配信は行われ…………。
いよいよ、そのときが来た。
綺羅星メルマ
「みなさん。聞いてください。」
ここからは綺羅星メルマではなく…………夢野マナカの配信が始まる。
配信の画面が、メルマではなく、夢野さんが映る。
夢野マナカ
「私の名前は夢野マナカ。綺羅星メルマの中身です。メルマとは、企業の研究の費用の糧にされるだけのキャラクターです。…………綺羅星メルマを演じていて、苦痛でした。けれど、今こうして100万人を超えて、やめるに辞めれなくなりました。」
真瀬莉緒
「夢野さん…………。」
コメントがざわつく…………。炎上どころの騒ぎではない。
夢野マナカ
「けれど、ある人物と出会い…………私は夢を…………思い出しました。私は作曲家になりたい。綺羅星メルマではなく。夢野マナカとして…………。なので、私は今日限りで、綺羅星メルマをやめます。こんな形で放り投げて申し訳ありません。ファンのみなさんには合わせる顔がありません!」
真瀬莉緒
「頑張れ…………!」
夢野マナカ
「今までお世話になりました…………!さようなら!!」
そして、配信は終わった。チャットは炎上している。
そして、ベッドルームのドアが開く。
夢野マナカ
「真瀬さん。行きましょう。」
真瀬莉緒
「夢野さん…………!どうしてここに…………?」
夢野マナカ
「今日はスタッフも誰もいない。自分の寮の部屋にいました。真瀬さんのお姉さんは呆然としています。…………ここではあれですので、中庭で話しましょう。」
真瀬莉緒
「はい。…………わかりました。」
僕たちは中庭に向かう。




