第2章 グレージュイヤホンを片耳に(木沢アカリ編)後編
六郭星学園 Jクラス教室
真瀬莉緒
「おお…………人がいっぱいだ。」
Jクラス教室はたい焼きの模擬店をやっており、結構な人が並んでいた。
三蜂レンカ
「あら。あなたたち戻って来たの?」
真瀬莉緒
「三蜂さん。お久しぶりです。」
三蜂レンカ
「久しぶり。元気にしているみたいね。言っておくけど、あなたは特別よ。なんとなくだけど…………。」
僕は三蜂さんと世間話をする。
すると、木沢さんが少し嫌がっている。
木沢アカリ
「莉緒くん…………。」
真瀬莉緒
「どうかしましたか?」
木沢アカリ
「何かちょっと…………。」
真瀬莉緒
「ああ。…………すみません。」
三蜂さんは気づいたのか、木沢さんに声をかける。
三蜂レンカ
「大丈夫よ。拒むことはないわ。どうなるかは知らないけれど。課題も頑張ってね。」
木沢アカリ
「レンカ…………。ありがとう!」
木沢さんは少し嬉しそうだ。
たい焼きの行列には、もう1人、見覚えのある人がいた。
真瀬莉緒
「あれは…………美園さんかな?」
美園エリカ
「ふふふ…………噂をすれば、真瀬さんね。たい焼きをいただくわ。」
真瀬莉緒
「はい。どうぞ。」
美園エリカ
「ふふふ…………。」
真瀬莉緒
「…………失礼します。」
僕は木沢さんのところへ戻る。
木沢アカリ
「あっ、おかえり!美園さんと話していたの?」
真瀬莉緒
「ええ…………なんとなく。」
木沢アカリ
「あの子、ちょっと特殊だもんね。気になっちゃうわよね!」
木沢さんは明るい声で話す。
真瀬莉緒
「木沢さんはいろんな人に優しいですね。そう言うところ、尊敬します。」
木沢アカリ
「莉緒くん、ありがとう!…………でも、優しくないといけないの。」
真瀬莉緒
「…………それは一体、どういうことですか?」
木沢アカリ
「……………………。」
すると、教室に月川さんが来た。
月川タクト
「やあ、さっきぶり!」
木沢アカリ
「タクト!劇、お疲れ様!」
真瀬莉緒
「お疲れ様です。」
月川タクト
「これ…………いる?舞台劇で使っていた、仮面なんだけど。」
月川さんは僕らに若竹色の仮面を渡す。
真瀬莉緒
「仮面って…………。大丈夫なんですか?このあと、使わないんですか?」
月川タクト
「うん…………今後、使わないみたいだけど…………。」
木沢アカリ
「あんまりいらないかな。タクトが記念に持っていた方が良いと思うよ。」
月川タクト
「そうかな…………それなら、記念に取っておくよ。ありがとう。」
真瀬莉緒
「はい。その方が良いと思います。月川さん、たい焼き食べてってください。」
月川タクト
「そうするよ。クリームはあるかい?」
木沢アカリ
「もちろん!大人気なんだから!」
木沢さんは自信たっぷりに言う。月川さんはそれを聞いて、たい焼きを買う。
月川タクト
「うん。美味しい。模擬店だとは思えないよ。」
木沢アカリ
「えへへ。ありがとう!」
月川タクト
「…………もうすぐ学園祭もフィナーレだ。屋上で花火をやるみたいだし、みんなも屋上に行かない?」
木沢アカリ
「名案ね!莉緒くん、屋上に行きましょう!」
真瀬莉緒
「はい。行きましょう!」
僕たちは屋上へと足早に向かう。
六郭星学園 屋上
屋上へ着くと、たくさんの生徒たちがいた。花火を待っているんだろう。
真瀬莉緒
「みなさん、花火を待っているんですかね?」
木沢アカリ
「そうかもしれないね!どうしようか…………?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。これまでのアレンジに、さらにアレンジを加えてみましょうか。」
木沢アカリ
「楽器がないけれど、できるの?」
真瀬莉緒
「この端末があれば大丈夫です。」
木沢アカリ
「なるほど…………じゃあ、聞かせて!」
真瀬莉緒
「はい。今、アレンジを加えますね。」
僕はアレンジコードを端末に入力し、早速聞いて見ることにした。
真瀬莉緒
「完成しました。イヤホンです。」
木沢アカリ
「ありがとう。…………はい。」
真瀬莉緒
「えっ、これって…………?」
木沢さんに渡した、茶色いイヤホンの片方を木沢さんが僕に渡す。
木沢アカリ
「一緒に聴きましょう!」
真瀬莉緒
「良いんですか?…………ではお言葉に甘えて。」
僕と木沢さんはイヤホンを片耳に着けて聴いて見る…………。
工夫したアレンジを聴き直す。とても良い。けれど、何か足りない。
木沢アカリ
「うん!なかなか良いじゃない!」
真瀬莉緒
「えっ、ああ…………ありがとうございます。」
木沢さんは喜んでくれたが、僕にはあまり満足いくような結果じゃない。何かが足りない。
真瀬莉緒
「あの…………木沢さん…………。」
僕が話しかけると、花火が打ちあがった。
生徒たちが、花火を見て喜んでいる。
真瀬莉緒
「……………………。」
打ち上げ花火を見ても、あまり満足できなかった。僕は…………。
すると木沢さんが、僕の手を握る。
木沢アカリ
「大丈夫。きっと莉緒くんと私なら、素敵な曲ができるわ。」
真瀬莉緒
「木沢さん…………。」
僕は頑張ろうとそう思った。
真瀬莉緒
「ありがとうございます。」
こうして楽しかった、学園祭は幕を閉じた。
六郭星学園寮 莉緒・タスクの部屋
僕は内野さんに悩みを話した。
内野タスク
「へえ…………なるほど…………アレンジをさらに加えたんですね。」
真瀬莉緒
「はい。色々と加えました。木沢さんには褒められたんですけど、僕は納得がいかなくて。」
内野タスク
「…………でも、真瀬さんなら大丈夫だと思いますよ。」
真瀬莉緒
「本当ですか?…………なら良いんですけれど。」
内野タスク
「僕よりもしっかりとした意見を持っていますから。そう思っています。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。そう言われると…………照れますね。」
内野タスク
「照れなくても大丈夫ですよ。本当のことを言ったまでですから。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
内野タスク
「では、そろそろ寝ます。また、明日。よろしくお願いいたします。」
真瀬莉緒
「はい。おやすみなさい。」
僕たちはそれぞれの寝床に就いた。




