第3章 スノーホワイトの雪が降り(土原ガク編)前編
秋。土原さんは相変わらずハイテンションだ。無理をしているのはわかっている。けれど、土原さんの言った言葉が頭の中によぎる。
水崎さんは相変わらずのテンションに少し不安を抱いているが、口には出さない。ただ、莉緒も少し土原さんのテンションに疑問を抱いたのか、私と水崎さんに相談しに来た。
六郭星学園 Bクラス教室
真瀬莉緒
「…………という訳なんだ。この間、部屋のドアが開いていて覗いてみたら、何か落ち込んでいたんだ。やっぱり無理をしているのかなって…………。アサヒはどう思う?」
水崎アサヒ
「そうだな…………。ガクのやつ…………。」
真瀬莉緒
「姉さんはどう思う?」
真瀬志奈
「そうね…………そんなことがあったらやっぱり心配ね…………。」
真瀬莉緒
「うーん…………。どうすれば…………。」
真瀬志奈
「……………………。」
考えていると、聞いたことのないサイレンの音が鳴る。
真瀬志奈
「な…………何!?」
私たちは教室から出ると、他の教室から生徒も飛び出してくる。
動揺している私たちのところに凪野先生が駆けつける。
凪野雪緒
「学園内に獣らしきものが現れた!全校生徒はみんな、屋上に避難してくれ!!」
真瀬志奈
「は…………はい!」
私たちは屋上へと避難することにした。
六郭星学園 屋上
屋上へ避難すると、次々に生徒たちが避難をしてくる。次第にクラスごとに集まる。
校庭を覗いてみると、凪野先生たちが獣と格闘をしていた。
秋葉サヤ
「こんなこと初めてね…………。でもこれって…………。」
水崎アサヒ
「サヤ?何かあったのか?」
秋葉サヤ
「ううん。なんでもない。」
水崎アサヒ
「そうか…………無理はするなよ。」
秋葉サヤ
「ええ。」
真瀬志奈
「……………………。」
黙り込んでいると、莉緒がこっちに来た。何か言いたげな様子だった。
真瀬莉緒
「ねえ、姉さん。雪谷さんの様子が少し変なんだ。」
真瀬志奈
「雪谷さんが?…………どうしたのかしら?」
雪谷さんの方を見ると、焦っている様子が見えた。獣のことで何かあったのかな?
綿垣キョウゴ
「雪谷。調子が悪いのか?」
雪谷マコト
「いえ…………。何でもありません。気にしないでください。」
綿垣キョウゴ
「そうか…………無理はするなよ。」
綿垣さんが雪谷さんに声をかけていた。どうやら何事もなかったようだ。
すると今度は、錦戸さんがうずくまっていた。
錦戸アケミ
「うう…………。」
水崎アサヒ
「アケミ!?大丈夫なのか!?」
錦戸さんは5月の頭ぐらいから怪我をしており、本人は大丈夫とは言っているが、傷口が広がる一方でなかなか良くならない。
錦戸アケミ
「大丈夫…………。これくらいなら…………。」
そう言うと、錦戸さんは横になった。
水崎アサヒ
「…………無理するな。」
水崎さんは錦戸さんの近くに座り込む。
真瀬志奈
「ふぅ…………。」
色々とみんな大変なようだ。
周りを見ると、いろんな人がいた。
例えば、あそこにいるのが冬原マイカ(ふゆはら まいか)さん。なんといえば良いのか…………妖艶でセクシーな印象が強い。どうやら今は薮本マサキ(やぶもと まさき)くんにちょっかいをかけているようだ。
冬原マイカ
「ねぇ…………ゲームばっかりしてないで、私をみたらどうかしらぁ?」
薮本マサキ
「……………………別にいいです。僕は興味がありません。」
冬原マイカ
「あらまぁ!いけない子ねぇ。かわいい。」
薮本マサキ
「……………………しつこいですね。」
薮本さんはゲームに夢中のようだ。今度は小鳥遊カルマ(たかなし かるま)さんにちょっかいをかけるようだ。
冬原マイカ
「ねえ、そこのあなた。私を見てみるぅ?」
小鳥遊カルマ
「今はそれどころじゃない。ほっといてくれないか?」
冬原マイカ
「あらぁ…………そうなのねぇ。」
薮本マサキ
「あなたも声をかけられたんですね…………。」
小鳥遊カルマ
「ああ…………。君も大変だな。」
薮本マサキ
「えへへ…………慣れていますから。」
意外なところで仲良くなったみたいだ。
土原ガク
「……………………。」
真瀬志奈
「土原さん?大丈夫ですか?」
土原ガク
「えっ…………ああ、大丈夫だよー!うん…………と、言いたいところだけど…………。何か辛いな…………。」
真瀬志奈
「えっ、大丈夫ですか?無理はしないでくださいね。」
土原ガク
「うん、ありがとー!無理はしないからね!」
そう言うと、先生方から避難解除を受け、寮の方へ戻ることになった。
六郭星学園寮 志奈・アサヒの部屋
避難解除を受けた私たちは、部屋に戻ると制服のままソファーに座り込んだ。
真瀬志奈
「はぁ…………なんだか疲れましたね…………。」
水崎アサヒ
「そうだな…………。なあ志奈。」
真瀬志奈
「……………………?どうかしましたか?」
水崎アサヒ
「ちょっとゲームで勝負しないか?」
真瀬志奈
「ゲームですか?」
…………正直なところ、薮本さんのゲームをするところを見ていたら、少しだけやりたいと思っていたので断る理由がなかった。
真瀬志奈
「そうですね。やりましょうか。」
私たちはテレビに、ゲーム機を繋いでゲームを始める。
ゲームの勝負の結果、私が勝った。水崎さんは満足したのか、ゲームの電源を切って、再びソファーに座る。
水崎アサヒ
「志奈。今日はありがとう。無理させてすまないな。」
真瀬志奈
「いえ、私もゲームがしたかったので満足です!」
水崎アサヒ
「そうか…………なら良いんだ。」
真瀬志奈
「水崎さん…………?」
水崎アサヒ
「……………………。」
水崎さんはどうやら眠りについたようだ。
真瀬志奈
「…………お疲れ様です。」
私は上着の制服を水崎さんにかけて、就寝準備に取り掛かった。




