第1章 アガットの視界に染まって(綿垣キョウゴ編)後編
錦戸アケミ
「もしかして…………あいつとペアなの?」
真瀬志奈
「…………あいつ?」
錦戸アケミ
「綿垣キョウゴ。あいつよ。」
真瀬志奈
「あー…………はい。綿垣さんとペアです。」
錦戸アケミ
「そう…………まぁ仕方ないわね…………あなたを否定しても意味がないもの。」
真瀬志奈
「なんか…………すみません。精一杯努力しますので…………。」
錦戸アケミ
「そう怯えなくても大丈夫よ。ちゃんと割り切るから。」
真瀬志奈
「は…………はい。あの…………よろしくお願いします。」
錦戸アケミ
「よろしく。…………じゃあ、私は出かけるから。ゆっくりして行ってね。」
そう言うと錦戸さんは部屋から出て行った。
真瀬志奈
「私…………1年間大丈夫なのかな…………?」
私は少し不安を抱きながらも、明日の準備をする。
明日も音楽室で声優さんから依頼された楽曲の作成に取り掛かる。
今日はひとまず休むことにした。明日から頑張ろう。
六郭星学園 音楽室
音楽室で私は再度練習を行っていた。
私は夢中になり作曲に没頭する。
人の出入りにも気づかなかったのか、聞き覚えの声がある声で、我を取り戻した。
綿垣キョウゴ
「大丈夫か?…………何かに没頭していたが…………。」
真瀬志奈
「綿垣さん!…………すみません。気づいてませんでした。」
綿垣キョウゴ
「いや、良いんだ。…………何か演奏していたのか?」
真瀬志奈
「あ、聞いていたんですか?まあ、一応…………。」
綿垣キョウゴ
「…………ちょっと楽器を借りるぞ。真瀬の演奏した曲…………こんな感じじゃないのか?」
綿垣さんは楽器を借りると、演奏をする。
さっきまで演奏していた、仮の楽曲を見事に演奏をする。かなりの演奏技術だ。
真瀬志奈
「す…………すごいです!1回聞いただけでここまで演奏できるとは…………!」
綿垣さんは照れ臭そうに答える。
綿垣キョウゴ
「ああ…………少し聞けばわかる。」
真瀬志奈
「本当ですか?やっぱりもっと凝ったほうが良いのかもしれませんか…………?」
綿垣キョウゴ
「そんなことはない。わかりやすい演奏もできる。それも強みだと思うけどな。」
真瀬志奈
「綿垣さん…………ありがとうございます。」
綿垣キョウゴ
「いや、良いんだ。」
綿垣さんと何気ない会話をしていると、矢次先生が音楽室に入ってきた。
矢次由佳里
「あら、2人とも仲良くしているのね!」
真瀬志奈
「あ、はい…………。」
矢次由佳里
「じゃあ、せっかくもっと仲良くなるためにこれをあげましょう!」
そういうと矢次先生はチケットを渡してきた。
矢次由佳里
「はい。これは遊園地のチケット。仲良くいってらっしゃい!」
矢次先生は音楽室から出てった。
真瀬志奈
「綿垣さん…………どうしますか?」
私は綿垣さんの顔色をうかがう。
綿垣キョウゴ
「教師からの誘いだ。断るわけにもいかない。」
真瀬志奈
「それじゃあ…………行きますか。」
綿垣キョウゴ
「ああ…………。」
私たちは六郭星ランドに行くことになった。
六郭星ランド
六郭星学園のすぐ近くにある遊園地で、六郭星学園の学生も良く出入りをしている。
私はここには来たことは無かったので、こんな形で六郭星ランドに来れるとは思いもしなかった。
……………………ん?何か記憶が曖昧な気がする…………。
綿垣キョウゴ
「…………どうした?」
真瀬志奈
「あ、いえ…………なんでもありません。まずはどこに行きましょうか?」
綿垣キョウゴ
「そうだな…………かき氷でも食べるか。」
真瀬志奈
「かき氷…………ですか?」
綿垣キョウゴ
「ダメか…………?」
真瀬志奈
「い、いえ。行きましょう。お腹もすいていますし、まずは食べ物を食べましょう。」
私たちは早速、フードコートに行くことにした。
フードコートに着くと、私はたこ焼きを、綿垣さんはかき氷を頼み、テーブルにはたこ焼きとかき氷が置いてある。
真瀬志奈
「いただきます。」
綿垣キョウゴ
「ああ…………。」
私はたこ焼きを頬張るも、かなり熱々なため、口が熱くなる。
真瀬志奈
「あっ…………あっ…………。」
綿垣キョウゴ
「だ、大丈夫か?」
真瀬志奈
「す、すみません…………。」
私は何とかたこ焼きを飲み込んだ。
綿垣キョウゴ
「…………熱かっただろう。かき氷でも食べろ。まだ手を付けていないから。」
真瀬志奈
「あ、ありがとうございます…………。」
かき氷を1口いただく。とてもひんやりしていておいしかった。かき氷なんていつぶりだろう…………?しかもブルーハワイのシロップなんて…………。
真瀬志奈
「ブルーハワイ味…………おいしいですね。」
綿垣キョウゴ
「本当か?そうだと嬉しい…………。青色は好きだからな。特に水色は。」
真瀬志奈
「水色…………?」
綿垣キョウゴ
「俺は水色が好きなんだ。淡くて清潔な色…………俺とは違って濁っていない…………な。」
真瀬志奈
「そんなことはないです!」
綿垣キョウゴ
「え…………?」
私は思わず立ち上がって言ってしまった。周囲の人に見られている。
私は恥ずかしくなり、ゆっくりと座った。
真瀬志奈
「でもこれだけは言わせてください、綿垣さんは濁ってなんかいません。」
綿垣キョウゴ
「真瀬……………………。」
真瀬志奈
「今日は帰りましょう。私は少し不機嫌ですので…………。」
綿垣キョウゴ
「…………すまない。」
真瀬志奈
「…………帰りましょう。」
私たちは帰るために、出口ゲートに向かう。
出口ゲート
出口に行くと…………莉緒がいた。錦戸さんと一緒だった。
真瀬莉緒
「ね…………姉さん!?」
真瀬志奈
「莉緒…………錦戸さんも…………?」
真瀬莉緒
「姉さん。この状況って…………!」
真瀬志奈
「あっ…………。」
錦戸さんと綿垣さん。この組み合わせはまずい…………!
錦戸アケミ
「莉緒。悪いけど、お姉さんと一緒に帰って。」
真瀬莉緒
「……………………。」
錦戸アケミ
「お願い。悪いようにはしないから。」
真瀬莉緒
「…………わかりました。姉さん…………。戻ろう。」
真瀬志奈
「…………綿垣さん…………。」
綿垣キョウゴ
「構わない。学園に戻ってくれ。」
真瀬志奈
「…………わかりました。莉緒。行きましょう。」
真瀬莉緒
「……………………。」
私と莉緒は六郭星学園に戻ることにした。綿垣さんと錦戸さんを残して。
六郭星学園 中庭
綿垣さんを残した私はあのあと、莉緒と別れて中庭にいた。
綿垣さんには申し訳ないことをしたかもしれない。
そんなことを考えていると、人影が見えた。
真瀬志奈
「だ…………誰?」
そう言った瞬間。私はその人影に殴られる。
真瀬志奈
「きゃあああああああ!!」
私は悲鳴をあげると景色が赤くなり、意識を失っていく……………………
六郭星学園 保健室
目が覚めるとそこは保健室だった。
真瀬志奈
「保健室…………?」
錦戸アケミ
「目が覚めたのね。」
真瀬志奈
「錦戸さん?どうしてここに?」
錦戸アケミ
「あれから、キョウゴと離れたあと、私は急いで学園に戻ったわ。部屋に戻ると、志奈がいないから不安になって、外を探したら倒れていたの。」
私が…………?そういえば人影が見えて…………。
ああ、そうか。殴られたんだ。なんだか懐かしい…………。
錦戸アケミ
「志奈?どうしたの?」
真瀬志奈
「え…………?…………いや、なんでもないです。それより、錦戸さんも怪我をしているじゃないですか!」
錦戸アケミ
「良いの。志奈に比べたら…………ね。」
真瀬志奈
「もしかしてですけど…………綿垣さんの悪い噂って…………?」
錦戸アケミ
「ええ、彼に逆らった女性はみんな、暴行されるの。」
真瀬志奈
「綿垣さんがですか…………?」
錦戸アケミ
「わからない…………。」
綿垣さん…………。
その日はとりあえず自分の部屋に戻ることにした。
六郭星学園寮 志奈・アケミの部屋
部屋に戻ると、錦戸さんは遊園地に来た経緯について聞いてきたため話をした。
錦戸アケミ
「ふーん…………音楽室でね…………。」
真瀬志奈
「ええ、綿垣さんは演奏が上手でしたよ。」
錦戸アケミ
「そう…………ねえ、それ私にも聞かせてくれる?聞いてみたいの。」
真瀬志奈
「え…………まあ、構いませんが…………。」
この怪我の状態で演奏できるのかな…………?
私はとりあえず演奏をしてみることにした。
演奏が終わった。この怪我の状態でもなんとか演奏できた。
錦戸アケミ
「なるほど…………さすがね。」
真瀬志奈
「ありがとうございます。…………その、頑張りました。」
錦戸アケミ
「この曲をねえ…………。まあ私には関係ないか。キョウゴと一緒に演奏するの?」
真瀬志奈
「そうですね…………まだわからないです。」
錦戸アケミ
「そう…………まあ、頑張ってね。」
真瀬志奈
「はい。ありがとうございます。」
そう話して、私たちは寝床についた…………。
意識がなかったからか眠れない…………。
真瀬志奈
「綿垣さんか…………。」
そう呟いて、無理矢理眠りについた。




