第3章 さわやかな青模様(雪谷マコト編)前編
秋。私は…………1人で課題を練習していた。作らざる得なくなった。
その理由はと言うと、数週間前…………。
六郭星学園 Bクラス教室
真瀬志奈
「ふう…………。」
いつものように私は席についていた。そのときにはまだ違和感を感じてはいなかった。
クラスメイトたちが次々と着席する。綿垣さんも土原さんも。けれど、雪谷さんはいなかった。
綿垣キョウゴ
「雪谷のやつ…………珍しいな。」
土原ガク
「そうだねー!!風邪かな?」
普段なら、誰よりも先に着席をしているはずなんだけれど…………。
そう思っていると、凪野先生が入ってきた。
凪野雪緒
「ああ…………おはよう。」
凪野先生…………いつもなら元気におはようと言おうとするはずなんだけれど…………。
凪野雪緒
「みんな…………聞いてくれ…………雪谷が休学届を出した。」
クラスメイトたちがざわつく…………。私も動揺していた。雪谷さんが…………休学?
凪野雪緒
「帰ってくるとは思うが…………少し不安だ。」
真瀬志奈
「先生…………。」
六郭星学園 音楽室
それから今になり、私は1人で練習をすることにした。雪谷さんが戻ってくることを信じて。
練習をしていると、莉緒が入ってきた。
真瀬志奈
「莉緒!雪谷さんは…………?」
莉緒は首を横に振った。
真瀬莉緒
「ダメ…………まだ帰ってきてない。」
真瀬志奈
「そう…………。」
雪谷さんは休学届を出して以来、部屋にも戻ってきてない。
学園の校則的には休学中の生徒は外泊が許可されているため、特にお咎めはないのが唯一の救いだろう。
真瀬莉緒
「練習かい?」
真瀬志奈
「ええ。練習しないと。声優さんにも曲を提供しないといけないし。でも…………。」
真瀬莉緒
「でも?」
真瀬志奈
「雪谷さんが閃いたフレーズが気になって…………。どうすれば良いのかしら…………?」
真瀬莉緒
「うーん…………そしたらマコトを探すかい?」
真瀬志奈
「そうね…………探してみましょうか。」
私たちは町の中を探すことになったため、先生に外出の許可を取ることにした。
六郭星学園 職員室
凪野雪緒
「そうか…………雪谷のことをか…………。」
真瀬志奈
「雪谷さんが休学届を出すはずがないんです。どこに行ったのか…………。」
凪野雪緒
「そこが俺も疑問に思っているんだ。あいつが休学届を出した形跡が無いんだ。」
真瀬莉緒
「休学届を出した形跡が無い?それはどう言うことですか?」
凪野雪緒
「ああ、雪谷自身が休学届を出してなくてな…………先生方も色々と意見が分かれているんだ。」
真瀬志奈
「意見が…………?」
凪野雪緒
「このまま休学届を受理すべきとの声と、怪しいから受理しない方が良いとの意見と分かれてな…………。」
真瀬志奈
「そうなんですね…………。」
すると私のスマホが鳴り出した。
真瀬志奈
「はい…………真瀬です。」
??
「真瀬志奈 様ですね。」
真瀬志奈
「はい…………そうですが…………。」
雪谷マコト
「(誰か…………!!助けてください!!)」
真瀬志奈
「えっ!?雪谷さん!?」
私はすぐさまスピーカーに切り替えた。
??
「おやおや、気づかれてしまったようですね。…………単刀直入に言いましょう。」
??
「雪谷マコトを誘拐しました。」
真瀬志奈
「なんですって!?」
真瀬莉緒
「姉さん!!マコトが…………!?」
真瀬志奈
「あ、あなたの目的はなんなの!?何が欲しいの!?」
??
「ものわかりが早い方ですね…………。物はいりません。」
真瀬志奈
「何…………!?一体…………?」
??
「雪谷マコトの退学届を。」
真瀬志奈
「退学届…………!?」
??
「あとは真瀬様にお任せしたいと思います。そこにいる先生方と相談しながら考えることですね…………。」
真瀬莉緒
「くっ…………。」
??
「ではこれで失礼します…………。」
そこで電話が切れた…………。
凪野雪緒
「真瀬!雪谷が…………!?」
真瀬志奈
「はい…………イタズラにしては度が過ぎると…………。」
すると、そこに矢次先生がやって来る。
矢次由佳里
「今の通話、聞かせてもらったわ。雪緒!」
凪野雪緒
「ああ!職員会議を開く!全員、集まれ!」
先生方が集まる。私たちは職員室の外に出ることにした。
真瀬志奈
「うん…………大丈夫だよね。」
真瀬莉緒
「わからない…………。」
しばらくすると、凪野先生が私たちのところに来た。
真瀬莉緒
「先生!マコトはどうなるんですか!」
凪野雪緒
「退学届は…………提出しない。今、警察にも連絡した。」
真瀬志奈
「そうですか…………。」
凪野雪緒
「今日は休んだ方が良い。先生たちも協力するからな。」
真瀬志奈
「はい…………。」
私たちはそれぞれの部屋に戻った。
六郭星学園寮 志奈・サヤの部屋
秋葉サヤ
「おかえり。…………元気ないね。どうしたの?」
真瀬志奈
「………………詳しくは言えないけど…………。多分、先生から話があるかもしれない。そのときまで待っていて。」
秋葉サヤ
「…………わかった。」
真瀬志奈
「雪谷さん…………。」
秋葉サヤ
「……………………。」
その日は結局、布団に潜り込んだ。




