第45話 リトワースの亡霊
どこでも代わり映えのしない街道を俺達一行は『幻影盗賊団』を誘き出すために街に向かっていた。
俺とミニアは認識阻害を掛けていた。
盗賊団には俺達が見えてないはずだ。
ただ兵士の隊長に説明するのがややこしかった。
盗賊の一味であると疑われたのだ。
盗賊は我が一族の秘伝を盗んだ宿敵と話をでっちあげた。
それでも未だに疑っている様子。
一族の秘伝には認識阻害破りもあると言ったら、やっと同行を許してくれた。
荷馬車に偽装した兵士を積んだ馬車はゆっくりと進む。
両側が深い森に挟まれた箇所に差し掛かった。
俺の赤外線の目に一人の人間が映る。
一人だけで来たところをみると斥候かな。
こいつ一人捕まえても本隊は逃げるに違いない。
駄目元で泳がせておこう。
盗賊団の斥候は馬車を覗くと森に引き上げた。
てっきり逃げるかと思ったら前方に多数の人間が赤外線の目に映る。
「おい、お前ら。気を引き締めていくぞ。兵士を全滅させたら金貨十枚だってよ」
「本当ですか。お頭」
「おうよ。くれぐれも声をひそめろよ」
俺には風に乗って盗賊の声が聞こえて来た。
金貨十枚出すスポンサーが居るのだな。
俺は認識阻害を打ち破る例の魔法。
void main(void)
{
system("dir /AH > テニツチスシ"); /*認識阻害の魔法名鑑定*/
}
特殊な魔法名鑑定を掛けた。
盗賊の魔法名が全て分かる。
void main(int argc,char *argv[])
{
char s[256]="attrib -H "; /*データを連結する領域*/
strcat(s,argv[1]); /*外部入力した魔法名を連結*/
strcat(s,"ルコラシン"); /*.bodyの部分を連結*/
system(s); /*認識阻害を解除する*/
}
このイメージの魔法を連発して盗賊の全ての認識阻害を解いてやった。
「ヒラニシ・モチニミゆヒラニ、うがー」
盗賊の一人が詠唱しようとして射抜かれた。
認識阻害を掛け直そうとしたんだな。
だが、矢の方が早い。
「逃げるぞ。がっ」
逃げようとした盗賊も射抜かれた。
認識阻害が通用しなければこんな物だ。
ファイヤーボールも詠唱に時間が取られるために矢に邪魔され盗賊側は撃てない。
反対に領主軍は前衛がしっかりしているので、魔法を撃ち放題だ。
俺の出番は要らないな。
次々に盗賊は討ち取られ何人かは捕虜になった。
「言え。お前らの後ろで手を引いているのは誰だ。言わなくても分かるトナークだろう。拷問部屋には送るからそれまでにゆっくり考えるんだな」
「待ってくれ。俺達はブライシーの……」
そこまで盗賊が喋った時に盗賊の頭に次々に矢が生えた。
撃ったのは森の中にいる三人組だな。
赤外線の目はばっちり捉えた。
俺は電撃の誘導弾を撃つ。
目標が十個まで設定できる魔法だ。
電撃の幾つかは樹に当たった。
しかし、遂に電撃は三人組に当たって痺れさせた。
三人の認識阻害を解く。
やっぱりあの三人組だ。
隊長が荷物を漁る。
荷物からはネズミの紋章が入った短剣が出てきた。
こいつらブライシー騎士団のメンバーだったのか。
リトワースはどう関係してくるのか。
二重スパイってやつなのか。
それとも出向か。
隊長が起こして尋問しようとする。
「ブライシーのネズミ野郎が来ているってのは本当だったのだな。喋れと言っても喋らないだろうな。連れて行け」
「「「我ら……」」」
そう言ってから三人は泡を吹いた。
俺は三人がなんと言ったのか聞き取れていた。
我らリトワースの名の下にだ。
これはタルコットを呼んでリトワースの事を聞いた方がいいかな。
俺とミニアは一足先に飛んで街に戻り、ミニアがタルコットを呼んできた。
「折り入って話とは何ですか」
「リトワース。聞きたい」
「あなたがそれを聞きますか。まあいいでしょう。二十年前に亡んだ国の名前です。噂ではその国の姫が一人逃げたと話題になりました」
「ブライシー騎士団。関係は?」
「はて、ブライシー騎士団との関係。一説では姫が逃げる時に火竜騎士団が護衛についたと。残党は各地に散らばっているでしょうから。ブライシー騎士団に一人か二人が身を寄せていても不思議はないと思います。ただ二十年は長い。火竜騎士団のメンバーも代替わりしている事と思います」
「ありがと」
各地を放浪してブライシー騎士団に何人かが辿り着いたのだろう。
亡霊は眠ったままでいてほしい。
汚れ仕事をして仇を大量に生み出すのは足掻きというものだろう。
ブライシー騎士団にいるなら俺が引導を渡してやるか。
火竜騎士団の残党に本物の火竜が止めを刺す奇妙な縁だな。
それからブライシー騎士団の情報はきれいさっぱり途絶えた。
今回の件は通商破壊の一種だと考えられる。
失敗したので仕切りなおしというところなんだろう。
これはしばらく国境から離れられないな。
タルコットにしばらく国境にいるとミニアが言ったら、商品を仕入れさせてもらえればお付き合いしますと返答した。
幸いFランクの魔石はどこでも余っている。
商品を開発して過ごそうか。
家も領主に断わって街道脇に豆腐ハウスを建てた。




