ぶれない心
「えーと……領主がこんな所に家建てちゃったら目立つ気がするんですけど……」
まだ近くに住む計画をあきらめてなかったのか……。
「ご安心下さい。私は誰にも気付かれぬよう動けますし、この場所にヤマ様のお住いがあるのを知っているのは建設に携わったあの者達と拝謁許可を得ているあの2人しかいませんので、騒ぎ立てられることもないでしょう」
「あれ? 族長さん達は? 生き残り設定知ってますよね?」
「ヤマチカという女性の正体については知っていますが、住まいの場所までは伝えていません」
「そうなんですか」
さすが一族。口が堅い。
「じゃあアルバートさんのご家族も知らないんですか?」
「アルバート? どういう事でしょうか?」
あ、あれ?
なんか顔こわくね……?
「アルバートさんの家に招かれた際に、こちらの古代文字で書かれた本をうっかり読んでしまい怪しまれたので、生き残りの説明をしたんです。ローザさんとアビゲイルさんとアレクシスさんは知らないままですけど」
「家に招かれた……?」
いやだから食い付くところ違う。
「アレクシスさんとは街の市場で出会って、それから良くしてもらってるんです。アルバートさんは家に私がいてびっくりしてました」
さりげなくアルバートさんは関与してませんよアピール。
「そうでしたか」
なんとかなった……のか?
それにしてもカセルさんとアルバートさんは古代文字事件をサンリエルさんに報告してなかったんだろうか。
まあ私の事を勝手にあれこれ話すような人達じゃないもんな。
「おそらくカセルさん達から報告が無かったのは、私が許可を出してなかったからだと思いますけど」
「もちろんです。族長達も拠点に携わった一族も、お互いに商人ヤマチカの正体を知っている事を知りませんので」
「なるほど」
ほんと一族の忠誠心はすごいな。
「ですので私がここに住まいを移しても問題ありません」
うわ、話が戻ってきちゃったよ。
「でも、領主はお城とか執務室にいないと何かあった時困るんじゃないですか?」
そこからはあれこれと説得して、結局、週3ペースで家とお店の掃除をしてもらう事でなんとか落ち着いた。
私は富豪か。
「お待たせ致しました」
「私も一緒に食べていいですか~?」
「おい……!」
ご飯を待つ間、島のみんなとミュージカルごっこをしていたらサンリエルさんがカセ&アルを伴って戻ってきた。
「もちろん」
「あれ? お疲れですか?」
「歌って踊ってたもので」
「歌って踊ってたんですか~」
はははと今日もカセルさんは爽やか。
そして本家アルバートさんは今日も真面目そう。
落ち着いて見ればアルバートさんの髪の毛は落ち着いたブラウンでクルトさんは落ち着いたブロンド、見た目は全然違うのに似ていると思ったのはあふれ出る人柄なんだろうか。
「あ、あの……?」
いつの間にかじろじろとアルバートさんを見ていたらしい。
買ってきた食べ物をテーブルに並べていたのだが、手を止めておろおろしている。
「ああ、ごめんなさい。今日アルバートさんにどこか似ている青年に会ったものでつい」
「アルバートにですか?」
お皿を持ってカセルさんも話に加わってきた。
「はい。以前使者として来ていたあの青年です」
「え……?」
「もしかしてミナリームの?」
「そうです」
カセルさんの驚き顔ってレアだわ。
しかもそのままミナリーム降臨について話していると、サンリエルさんと同じように顔をしかめて怒りを表していたので、更にレアな顔を見る事が出来た。
アルバートさんはいつもの心配そうな顔だったのでほっとした。
「――そこで神の武器をこうやって」
「さすがです」
「強そうです!」
「すごいです……!」
「皆さん驚いてました」
食事をしながら、ミナリーム降臨で起こった事をあれこれと話す。
「でもああいう場面でなんの反応もないと緊張しますね。恥ずかしくなってくるっていうか……」
「偉大なるヤマ様のお姿に圧倒されたのでしょう」
「あ~この目で見たかったです!」
「すごいです……!」
楽しい会話と食事。幸せだ。
あまりにも褒めてくれるし、神の武器が見たいと要望があったので、チカチカさんが瞬間移動で用意してくれた振袖衣装を着て神の武器をぶんぶん振り回してみた。
カセルさんは笑いながら褒めてくれるし、アルバートさんはひたすら興奮しているし、サンリエルさんはガリガリと絵を描き始めた。
懐に色々としのばせ過ぎ領主。
空いた手で串焼きをほおばりながら、色々ポーズをとるのは楽しかった。
途中サンリエルさんから歌をリクエストされた時はどうしようかと思ったけど。
神の武器が勝手に変形してアルバートさんに巻き付いた時もどうしようかと思ったけど。




