枕が変わっても関係ない
夜食をみんなで食べ終わり、素敵な衣装も出来上がったところでみんなは「早く寝なさいね」と帰っていった。
また後日改めて細々としたインテリアを部屋に追加してくれるらしい。
サンリエルさんはずっとぐずぐず留まろうとしていたので最終的に怒られていたが。
あんな大人数に同時に怒られる事ってあるんだな……。
そしてアルバートさんはおじいちゃん達に慰められていた。
「髪は大切だ」っておじいちゃん達が言うと妙な説得力がある。みんな髪はしっかりあるけど。
「新居だ! 新居!」
そして私は誰もいない空間ではしゃぎまわる。
1階は仕切りのない広めワンルームのようだし、2階にはテラスが付いている大きな部屋と小さめの部屋の計2部屋ある。
サイズ感が住みやすくちょうどいい。
高ぶる気持ちのままみんなと拳グッグ挨拶を交わしながらそのままベッドにダイブする。
で、いつの間にかぐうぐう寝てた。お手本のような健康優良児。
次の日、朝起きて珍しく自分で朝ご飯の準備をする。
新居キッチンだからね。最初くらいは自炊感を出して行こうと思う。
「チカチカさん、ミナリームの早馬っていうのは今どの辺ですか?」
野菜スープをぐるぐるかき混ぜながら質問する。
昨日の夜の時点ではまだ城のお偉いさんには情報が届いていなかった。
のろしはあげたみたいだけど何が起こったのか詳しくは知らないはずだ。
「このままのペースだと昼には一報が入る」
「夜通し駆けたのかな? 昼ね、わかりました」
さて、いよいよジャパニーズの腕の見せ所だな。
緊急の招集をかけたりして会議的なものしてね。頼むよ。
とりあえずお腹を満たしてお風呂に入ってイメージトレーニングでもしておこうと思う。
待っておれミナリーム。
「――えっとなんだっけ……そなた達の悪行……悪行て!」
見られていたら恥ずかしいセルフツッコミ。
「落ち着く」
「お、落ち着いてます」
「フォーン」
「違う、それ妊婦の呼吸法」
「コフッ」
「うん、深呼吸する……」
待っておれなんて言っておきながら、ミナリームの早馬が王都に近付いている今現在、私はとても緊張している。
イメージトレーニングで女優になりきるなんて余裕ぶっていたら、刻々とその時が近付くにつれて変な汗をかき始めて今に至る。
メンタル弱子。
「ねえねえ、降臨とか言っちゃってもみんな武器とか持ってるかもしれないしさ……マッチャの結界を透明バージョンにしてもらうのはいいんだけどさ……いきなり矢とか飛んで来たら絶対ビクッて飛び上がる自信あるしさ……そんなの御使いらしくないしさ――」
「語尾がうっとうしい」
そんな事言ってもさ……。
「どうしようチカチカさん……! 良い案だと思ってたのにどうしようどうしよう……」
計画段階が1番楽しいって今ほど実感した事ないと思う。
神の武器を創ったって事でもういいんじゃないかな? 大森林から人を追い払ったし……。
「やめればいい」
「そんな事言っても戦争とか嫌だしやめて欲しいし……」
「じゃあ実行」
「わ、わかってるんですけどもしかして他に良い案が……」
直前になってあれこれめんどくさい女になっている私に対して、チカチカさんはツン発言を混ぜ込みながらも頭を撫でながら話を聞いてくれる。
優しい。好き。
「クダヤとかユラーハンみたいにお偉いさんの知り合いがミナリームにいれば良かったのに……話が早いですよね……特に知りたくもなかったクラッシャーな首長は知ってるのに……」
しかしここで妙案が浮かんだ。というか忘れてただけ。
「あっ! いた……! ミナリームの使者がいた!!」
同時に黒歴史も思い浮かぶが今はまさしく天の助け。
「そうだそうだ! 一度クダヤに来てた! あのおじさんは一応お偉いさんでしたよね!?」
性格はアレだがこの際構うまい。
「アルバートさんみたいなおろおろ青年もいたいた。名前はなんだっけ……まあいいか! チカチカさん、私ちょうどアルバート2号に会いたいと思ってたところでした。そうそう思ってた。チカチカさんひとまず2号に会いに行きましょう!」
明らかに嘘。
チカチカさんも頭を撫でるのをやめていつもの無表情でこちらをじっと見つめてくる。
「べ、べつに今思い付いた訳じゃないですから――」
謎の言い訳をしているとチカチカさんから衝撃的なひと言が投下された。
「その人間は投獄されてる」




