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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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132/216

よくある

 




「では皆さんご自由に話し合いを進めてくださいね」





 知らない間に使者からの挑戦をクリアした私、御使いのヤマ・ブランケット。

 まさか異世界補正の言語能力がこんな風にベタに活用されるとは……。

 しかもチカチカさんの解説副音声付き。これでクリアできない人間はいないだろう。



 話し合い参加者達は一気に打ち解けたように話を始めている。

 でもガルさん、御使い様の素晴らしさに関しての報告はその辺で。本人近くで浮いてますから。



 チカチカさん情報によると、アルレギア連合国家というのは騎馬民族のような人達が集まって成り立っている、まさしく自然と共に暮らしている国のようだ。

 究極の意識高い系というかなんというか。意識高い系とは違うが。

 まあ自然や土地の神様イコール、チカチカさんなんだけどね。





「ユースさん、安心して下さい。連れて来てくれたあなた達の顔をつぶすような真似はしませんから」


「どうなる事かと思いましたよ」



 どうやらユラーハンの王族2人は自分達の身分を伏せているようだ。


 排他的な彼らがユラーハンと交易を始めたのもここ数年の事で、あの最初に話しかけてきたおじさまが、自分達の文化も大切にしながら他国の技術を少しずつ取り入れる方針を打ち出したようだ。

 こういう人が歴史に名前を残す人なんだろうな。

 最初はなんだこの人と思ったけど。



 住んでいる土地が厳しい環境の上、すぐに移動できる身軽さも相まって他国からの侵略などはこれまであまりなかったようだ。

 自分達だけの世界ならそりゃあ排他的にもなるか。


 でも、使者に選ばれた人達はまだ考え方が柔軟なようだが、自分達が1番優れていると考えている国にはあまり近付きたくない。トラブルしか起きない気がする。





「ヤマ様、お菓子とお茶をご用意致しました」



 いや、話し合いしてください。1番偉いんだから。お菓子はもらうけど。



「ありがとうございます。サンリエルさんは話し合いに参加してくださいね。サンリエルさんがいないとみんな困ってしまいますから」



 本音としては、凝視されているとお菓子が食べにくい。垂れ布めくらないといけないし。



「カセルさんとアルバートさんに持ってきてもらいますので」


「はい。なんと、領主様の手作りのお菓子ですよ~」



 うん、知ってた。



「御使い様、私も頂いてよろしいでしょうか」



 ……あれ? 誰の発言だ?



「御使い様の為に作ったのだ。使者の方々には違う物を用意してある」



 サンリエルさんが見つめているのは、アルレギア連合国家の首長の1番背の高い……そういや名前聞いてないな。どこかぼんやりした人だ。



「御使い様、今後大使館なるものの関係で私もこちらに頻繁に伺う事になります。あ、私の名前はララウルクと申します。私達首長は代々部族の名前を引き継ぐ習わしでして。突然先代が――私の父ですが――亡くなり急遽首長というものになってしまったんです。私には優秀な親族がたくさんいますのでいつかお役目をなすりつけようと考えていましたが、首長だったからこそ御使い様にお会いする事が出来ました。これも神のお導きですかね」



 ……え? なんかすっごい話しかけられてるんですけど……。



「そちらの守役様のような動物は私は今まで見た事がありません。いえ、動物ではないですね。失礼致しました。守役様は他にもまだいらっしゃるという事ですが――」

「おい……!」



 傷だらけの戦士みたいなおじいちゃんが止めに入った。



「失礼な事をするな!」


「してませんよ」


「君はそんなに話す事が出来たんだね。初めて見たよ」


「お前も感心してる場合じゃないぞ! それに大使館ってなんだ!? お前は首長なんだから気軽に出歩けないだろ!?」


「じゃあやめます」

「私はユラーハンに近い領地を持っていますし、周りに優秀な者が多いので気軽に出歩けますけどね」


「お前ら……!」



 なるほど。この中で1番豪胆に見えるおじいちゃんが1番常識人なのはわかった。

 目が合ったら決闘、そんな歴戦の戦士に見えるのに。



「守役様は選ばれた者しか目にする事が出来ないのだ」



 サンリエルさん違う、そこじゃない。



「領主様……もしかして神の踊りの伝授の際、他の守役様にもお会いになったんじゃ……!?」



 リレマシフさんも、今はそういう事じゃないんだ。



「領主様だけずるいですよ!」

「いつもそうですよね」


「皆、落ち着こう。――領主様はお会いした事があるのですか?」



 ガルさん、イシュリエさん、ティランさんまで……。ガルさんは通常運転だけど。

 サムさんとバルトザッカーさんも聞きたそうにうずうずしているし。




 もうなんの話をしていたのか分からないので、カセルさんにお菓子とお茶を持ってきてもらう事にする。

 喉かわいた。



「カセルさん、お茶が飲みたいです」


「かしこま「すぐお持ち致します」


「……ありがとうございます」



 忍者サンリエルは神出鬼没だわ。



「皆さんも少し休憩しませんか?」



 気を遣える御使い感ちゃんと出てるかしら? とういうか話し合いは全く進んでいないけど。

 まあ、野外だし人目もたくさんあるから本格的な話し合いは別の場所でやるんだろうな。



「御使い様と同じお茶がいいです」


「お前は黙ってろ! ――御使い様申し訳ありません。この者は普段は口数が少ないのですが、まさかこんなにずけずけとものを言うとは……。優秀な男ではありますが、いつも人ではなく自然や動物と一緒に過ごしているので周りとうまく会話が出来ないんです。どうかお気を悪くなさらないで頂きたい。我々の指導不足で申し訳ありません」


「いえいえ、お気になさらないでくださいね」



 おじいちゃん、ほんとに気にしてないからね。

 しっかし部族の人達も思い切った決断をしたもんだ。こんなに長っぽくない人を選ぶんなんて。



「寛大なお心に感謝いたします……」


「なんで謝ってるんですか?」


「だからお前は黙ってろ……!」



 おじいちゃん大変……。

 長い髪の毛がいつまでもふさふさしていますようにと祈っていると、良い匂いがしてきた。



「…………?」



 この覚えのある匂いは……。



 鼻をこっそりすんすんしていると、サンリエルさんがこちらから視線をそらさずに綺麗な姿勢のままトレイを運んできた。

 ウエイターも出来るのか。すごいな。いや、今日のオールバックは執事だな。あれ? これ意外といけるんじゃない?

 執事サンリエル。銀色のカートとセットでお願いしたい。



「こちらはヤマチカという他国の女性商人から手に入れたものです。神への献上品にふさわしいものを取り扱っている為、今後クダヤで店を持たせる事にしました」


「……そうなんですね」



 おお、宣伝きたー。しかもなんか演技が上手くなってる。

 前にアルバートさんちで朝会った時はひやひやしたのに。


 そしてなんでアルバートさんがおろおろしてるんだ。どうした。



「こちらのお菓子は甘さを控えめに素材の味を楽しめるよう工夫致しました」



 パティシエか。



「……ありがとうございます。頂きますね」



 何にせよタルトっぽいお菓子は美味しそう。でもこの後塩気のあるものが食べたくなるんだろうな……。


 トレイをサンリエルさんから受け取ろうとすると、トレイがふわふわ浮いて絨毯に着地した。

 すまんね。手渡しはまだ無理みたいです。



「チカチカさんありがとうございます」

「それは御使い様のお力ですか?」



 突然のララ……うん、ララさん。

 背中思いっきりどつかれてますけど。



「神のお力です。私の力はすべて神から与えられておりますので」



 満点の御使い回答。



「すごいですね。後はどのような事が出来るのですか? 守役様とはどのように意思疎通を図っているのですか?」



 お、おう。

 この人なんかテンポが……。

 というか御使いは喉が渇いてるんだわ。もう少し後でいいかしら。



「ララウルク殿、少し控えては頂けないか」

「今日から崇拝し始めた新参者が図々しいわよ……!」



 そうだ、ララウルクさんだ。それにしてもまたヒートアップしてきたな……。



「皆さんは知りたくないんですか? あ、もう知ってますか? なら教えてください」



 ……この人口数が少ないって言われてたけど。

 興味のあるなしで態度が全く違う研究者タイプの人間なのかもしれない。

 けど御使い的には詳しい事聞かないで欲しいな。フィーリングでファンタジー生活送ってるから。



「そうやすやすとヤマ様の秘密を漏らすわけがないだろう」



 サンリエルさん、言い方気をつけてね。秘密ってなんだ。

 そしてハードル上げるの止めて。たいしたもの持ってないから。


 しかもユラーハンの王子様、何でもない顔をしてるけど絶対聞き逃さないようにしてるよね。

 妹さんはオールバックの人にときめいてますけど。




「そうですか。――ならあなた達ももちろん知っているんですよね?」



 うわ、今度はカセ&アルに飛び火した。



「……ヤマ様と守役様は、詮索される事がお好きではないという事は言えますね」



 にこやかカセル氏、目が笑ってないぞ。

 アルバートさんは落ち着け。



「――さあ皆様のお茶も揃ったようですしこの辺にしましょう。御使い様、皆様、申し訳ありませんでした」



 和やかとは言えない空気の中、肩を叩きながら首長のおじさまがララウルクさんを後ろに引っ張って行った。

 出来る男だ。



「……申し訳ありません」



 おじいちゃん……!

 謝罪キャラが定着しちゃいそうだし、聞いてた国民性と違うよ……!



「探求心のある方なんですね。私にはお伝えできない事も多いので、その点はご理解下さいね」



 御使いの言葉にみんな神妙な顔をしている。

 なんか変な空気になっちゃったな……。



 空気クラッシャーの称号をララウルクさんに捧げようと思う。







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